約束のはじまり
小学生の頃、私はとにかく足が速かった。
校内マラソンも負けなし。
それもそのはず、父親は学生時代に名の通った選手だったのだ。
そのDNAってやつだよ。
でも…私は走るのが嫌いだった。
中学生になり、父親の期待を裏切ってサッカー部に入った。
とても悲しそうな顔をしていたのを今でも覚えている。
警察官の厳しい父、専業主婦の優しい母。
とても幸せだった。
しかし、ある日突然その幸せは崩れる。
父がガンになったのだ。
弱くなった父から目をそむけたかったのか、今でも理由はわからないが、私は家に帰らなくなった。
どんどん弱っていく父、悲しそうな顔をする母。
支えなきゃいけない時なのに、なぜか悪いこともたくさんして、多くの人に迷惑をかけた。
そんな父が学校に頭を下げている姿を見て、何とも言えない気持ちになった。
1年弱の闘病生活の末、父は亡くなった。
入院中、見舞いには1度も行っていない。
行ってないんじゃない、行けなかった。
最低の親不孝な息子だ。
でも、この日決めたことがある。
父がやってほしいと言っていた陸上競技をやる。
それが何もできなかった私の使命であり、恩返しだと思った。
しかし、陸上競技はそんな甘いものではなかった。。。