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ようこそ、心清堂へ  作者: みい
第一章/第一幕「悲しき心を持ちし者」
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悲しき心を持ちし者







――某病院の病室――



真っ黒な視界から少し光が差し込んでいき、やがて視界が少しずつはっきりとした。

最初に見えたのは、何も汚れのない真っ白な天井だった。



「……………………………………」

また死なれへんかった……

男は、真っ白な天井を虚ろな目で見つけてそんなことを思った。

そんな事を思っていると


「目覚められたようですね」

不意に横から話しかけて目だけを目線をやってみると

そこには一人の男が愛想笑いを浮かべて椅子に座っていた。



「なぁ……」


「また手首切られたんですね……」


「そう思うんやったら助けなかったらええだけの話」

座っている男と一切目を合わせずきつく言い放ってみれば


「何馬鹿な事言ってるんですか!」

そんな男の言葉に怒るように叫んだ。


「なんでそんなに死にたいんですか!?」


「………………………………」


「…………そうなってしまったのは、死んでしまってからですよね、先輩が」


「それ以上何も言うな」


「先輩……」

勢いで立ち上がって言った男に苛立ちを込めて声を低くして怒鳴ると黙り込んだ。



「……あいつは、関係ない」

そう言いながらも未だ目を合わせようとはしなかった。


「……なんで助けたん、俺の事?」


「なんでって死んで欲しくないって思った。それ以外何もありませんよ」


「……伊川……」

ずっと目を合わせなかった立ち上がった男いや後輩の名前を呼んで目を合わせた。


「はい……」


「……俺前にもお前に言うたよな?人の家には勝手に入ってくんなて、あともう俺の事を助けるなって」


「……………………………………」


「それなのにまた助けやがっ……」


「だから何馬鹿な事言うてるんですか!?そんなのいくら尊敬してる先輩の言葉でも聞ける訳ないやないですか」


「それは、どうゆう立場で言うてんねん?」

少し馬鹿にしたようにそしておかしそうに鼻で笑いながら聞いてみると


「当然後輩としてです。伊野部さんにはあの憧れていた時に戻って欲しいんです」

俺の問い掛けに真剣な表情を浮かべて答えた。



「……………………………………」


「自分で自分のこと傷付いてどうなるんですか?そんな事しても……」


「そんな事をしてももうあいつが戻って来ないのは、分かってるわ」

伊川の言葉を遮るように言った。



「じゃあなんで?」


「……こんなんせなやっていけへんねん」


「先輩……でもあれは、決して先輩のせいやないんですよ?」


「……周りは、言うけど俺からしたらあれは、俺のせいやねん、俺があいつの気持ちに気づいていれば……」


「……………………………………」


「それにこうしたらよう分かんねん、あいつが最後に感じた痛みも感情も何もかもが……」


「……でもそんなの望んでないと思いますよ」


「そんなのお前に言われんでも分かってるわ!」

しつこく言ってくる伊川に我慢出来ずおもわず声を荒げる伊川は、少し俯き黙り込んだ。



「……すまん」

すぐ冷静さを取り戻すと申し訳なく、顔を背けて一言謝った。


「良いんです。俺もちょっと言い過ぎた所あったんで……」


「………………………………」


「あーそうだ、もう退院出来るってさっき先生が言うてました。だから落ち着いたら退院の準備して下さいって」

そう言ってじゃあ俺はこれで失礼しますと一言告げると自分の荷物を持って病室を出ていった。



「……………………………………」

一人になると横になったまま自分の顔に手を持っていき、頭を抱えると


「ほんま何してんねん……」

小さく呟いた後枕に拳を叩き付けた。


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