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咎人に地獄の業火を

「知らない天井だ」

〈おはようございます、マスター。現在は朝5時です。〉

俺は異世界に来ていたんだったな。

しかも、今日は友人になった者の家に泊めてとらったんだった。


「んにゃ」

「んにゃ?」

布団の中から声が聞こえてきたので見てみると、ニーナが居た。

まぁ、寝ているだけだし問題ないか。


「見た感じ、全裸だし、こうやって寝といて既成事実!とか言って脅す気だったか?」

〈それが妥当な考えですね。そう言えばマスター、お腹減って無いんですか? 夜ご飯食べてませんでしたよね?〉

「んー、大丈夫そうだが、一応食べとくか。」

〈ギルドは24時間営業みたいですよ。〉

と言う事で静かに着替えてギルドへと向かった。


「おはよーっす。」

「おはようございます! 早いですね! 朝食ですか?」

「おう、オススメで朝食頼む。」

「分かりました! 少々お待ちください!」

今日のカウンター係はこの娘らしい。

だからニーナは爆睡していたのか。






「お待たせしました! 今日は東国の料理、和食です!」

「おぉ! いいね!」

出てきたのはご飯と味噌汁、焼き魚、サラダ、卵焼き、漬物、海苔だった。

朝食にはBESTチョイスである。


「美味え」

「ありがとうございます!」

この娘が作ったらしい和食は、完璧だった。

日本に戻った気分である。


「朝から仕事受けるんですか?」

「いやいや、俺は今日から指導する仕事ね。」

「あの仕事ですか! 今話題の!」

「今話題の!ってそこまでじゃないけどな。」

食事をしながらカウンターの娘と話をした。

名前はティア・アブソリュートと言うらしい。

今年で18歳になるらしい。

冒険者をしているが、できる仕事が無い時はカウンターのバイトをしてるらしい。



「カウンターってのはレベル100超えしかいないのか?」

「そうだね。S難度のクエストはなかなか出ないからそうなるのは仕方ないんだよ〜」

ティアはニーナより低いがレベル146ある拳闘士だ。

しかも、髪で隠れてて見えなかったが、ケモミミの獣人だ。


「ティアも習いに来るか?」

「行く気無かったけど、キラトを見て行く気になった。」

尻尾は隠れてて見えないが、耳がピクピク動いている。

可愛い。

これがケモミミの力とは、偉大である。


「ま、ある程度人が集まったら始めるとするか。」

「何でそんなに真剣に後輩を育てようと思うんですか?」

当然の様に思った事を聞いてくるティアに少し笑いそうになったが答えてやった。


「ふっ、そりゃ仲間探しだって。」

「なるほど。私はどうですか?」

俺は少し考え、ティアを観察した後、首を横に振った。


「駄目だな。ティアにはダメなところが多すぎる。」

「キッツい事言うな~。もうちょっと優しく言ってよ〜」

これでも優しめに言ったがな。

本気で言うなら、ゴブリン以下にも程があるって言うし。

俺のゴブリンより才能はあるが、それを伸ばせるかが重要なのだ。


「ちょっとやりたい事あるからギルドの訓練場借りていいか?」

「制限とか特にないからいいよ~。私に手伝えることある?」

「ないな。殺さない様に力を制限するだけだし。」

「確かにそれは無理そうだね。」

食器を纏めてティアに渡し、俺は裏にある訓練場へ向かった。

予想通り拡張魔法で広くしてあり、壁の強度も上げてある。


「よし、始めるか。改変」

俺の力を改変し、ニーナ達のレベルまで下げた。

あれくらいの力の方が制御するには簡単なのだ。



「せいっ」

「きゃあっ!」

俺が正拳突きをすると予想以上にヤバい暴風が起こり、訓練場に入ってきた少女が吹き飛んだ。

このままでは、壁などの物体に衝突して大事故になってしまう。


「【転移】」

転移魔法を即座に発動させ、視界に入る場所へと移動する。

移動した直後に吹っ飛んで来た少女をキャッチした。


「危ねえ」

「あ、ありがとうございます。」

キャッチした娘は昨日俺が怪我を治してあげたい娘だった。

顔が赤いので熱でもあるのだろうか。


「大丈夫か? 熱あるんじゃないか?」

「え?」

俺が額に手を当てて熱を測るが風邪という訳ではなさそうだ。


「おーい、大丈夫かー?」

「はひっ! 大丈夫ですありますです!」

「そ、そうか。」

「はい!」

訓練場へ戻ると、少女も付いてきた。

もう少し加減しないとマズいことになりそうだな。




「君、もしかして俺に師事してもらいに来た感じ?」

「はい!」 

一人でぼーっと立ってるから聞いてみるとそうらしい。

もっと早く言ってくれ。

 

「何を習いたいんだ?」 

「神官なので治癒魔法です!」

と言われても、神官なんだから棒術とかそっち鍛えるべきじゃねぇの?

神官じゃないから良く分からんが。


「棒術って出来るか?」

「そこそこ、です。」

「じやあ、棒術だけでかかってこい。」

「え、あ、はい!」

数度打ち合って分かったが、この程度では駄目だ。

神官ってのがおそらく治癒魔法士と考えると、接近された時や矢が飛んできた時に捌けない棒術では能力として必要ない。


「ちょっと待っててくれ」

「え? わかりました。」

俺自身棒術とかの武術系が出来ないからスキル取らなければ。


全武術の能力【武術】を取得し、レへMAXにした。

流石に全部のスキルを頑張って取るのは面倒である。


武術LV200 (全ての武術の統合)


能力獲得POINT 40/200 (1つの能力獲得 20POINT)

能力LV.POINT 576/1000



「よし、じゃあ、棒術で対応するからもう一戦な。」

「はい!」

やはり、完璧に棒術の技は使えても身体が追いつかない。

まぁ、数度打ち合って慣れたが。


「大振りするなって」

「はい! すいません!」

「弱点部分狙えー」

「はい!」

「治癒も同時にやってみろ!」

「はい!」

朝6時から7時までの訓練で中々良い感じになった。

これで初級の敵くらいなら余裕だろう。

取り敢えず疲れたので休憩。


「あの、昨日はありがとうございました。死ぬはずの私を助けていただいて。」

「んー、気にしなくて良いよ。でも、あの治癒魔法については内緒で頼む。教えることもできない。」

残念そうな顔をしていたが、仕方がない。

再生を全員が使える時代がくると、戦力外のアホが増えるからな。


「ひとまず、全員来るまで休憩な。」

「分かりました!」

分かりましたと言いつつ、棒術の特訓をしている。

棒術の訓練は身体を鍛える事にも繋がり、魔力量も増えるので一石二鳥である。


「暇だー」

「暇だーって10時から仕事じゃないですか。しっかりしてくださいよー?」

後3時間もあるんだが!

身体を改変して力加減も覚えたし、もうやる事ないぞ。


「私は仕事あるから行くねー」

「はいはい。」

〈マスター、仲間探しは止めたんですか?〉

止めたというか、まだ昨日の今日だし、俺が魔王と知っても従う冒険者っているか?


〈いろいろと考えているようですが、ひとまずこの街の奴隷達を貴族から回収してはどうですか?〉

「そうだな。」

と言う事で、奴隷として釣れられている奴等を探しますか。


〈マスター、探索を使用してください。私が奴隷をさがしましょう。〉

「さんきゅ。探索」

探索範囲はこの街全土だが、俺よりも全知の方が識別は早い。

面倒だし頼むのが一番だろう。


〈奴隷を見つけました〉

「流石だな。何体くらい?」

〈これは、100を超えますね。しかも、この街の奴隷は全てそこに集まっています。全員未だ処女で、今まさに貴族のデブが酒池肉林するところのようです。〉

「朝からクズ貴族が良い思いするとか許せん。ぶっ殺しに行くか。座標指定は頼む。【転移魔法】」

〈了解です。〉

俺は一瞬で貴族の部屋に到着した。

そこには、ちょうど全裸にされ並ばされる25〜15歳の娘たちがいた。

そして、その前に裸の汚いオッサンが居る。


「おい、クソ貴族。奴隷達は俺が貰うぞ。テメェには勿体無えからな。」

「貴様! 何者だ! 私が伯爵と知っての事か!?」

ササッと全員の首輪に触れて契約を上書きする。


「服を着ろ。それと、お前は殺すから少し待ってろ。」

この部屋からは死の匂いがする。

何人かここで悲しみと憎悪だけを抱いて死んでいったのだ。

その声が俺には聞こえる。


「お前達は少し下がってろ。」 

「き、貴様っ! 誰か! 誰か居らぬか!」

当然、貴族の家なので人が集まってきた。

まぁ、この家の奴らも纏めて消滅させてやるか。

今、そういう気分になった。


「魔王ってのは面倒だな。」

「な、何と言った?」

コイツの言葉は無視だ。

魔王になったせいだと思うが、苦しみや憎悪を残して死んだ者の叫び声が良く聞こえており、それらが魔王である俺の体に溶け込んできて、俺の中で声が響く。


「お前達の憎しみは、俺が晴らしてやろう。」

〈マスター、声を遮断した方が良いのでは? 精神に負担がかかりますよ。〉

「問題ない。こっちの方がこのデブ貴族を殺しやすい。」

〈イェス、マイロード。〉

俺は同時に改変解除を行い、魔王の姿になった。

俺の姿を見た者達は腰を抜かしているが、知ったことではない。


「【反射魔法】付与」

〈全員に反射魔法の付与を確認しました。〉

さて、これで本気を出せる。


「さて、滅びの時間だ。地獄の業火で燃え尽きろ。」

俺の言葉と同時に俺の魔力は火へと変換され始め、身体から火が出ている様に見えるだろう。


「や、止めてくれ! もう二度と、二度とこんな事は!」

「あぁ、悲しい事だ。お前には俺の中で泣き叫び、耐えた者達の気持ちは分からんだろうよ。」

イラッとしたせいで更に火が出た。天井が燃え出した様に見えるが気にしない。


「助けてくれ! 私だけでいい! 頼む!」

「その言葉が罪だと知れ。【獄炎魔法】滅びの業火」

俺を中心に地面が燃えていく。

しかし、実際に家が燃えている訳ではない。


「悪事を重ねた咎人を燃やしつくせ!」

「何だこれは! ははっ、熱く無いではないか!」

火は家全てに燃え広がり、悪事を手伝った者まで全員を包み込むと消えた。

しかし、咎人だけは燃え続けている。


「あぁ、言っておくが、その火は特別性だ。お前達の意識を死ぬまで保ち続ける性能を持ち、徐々に身体を溶かし、苦しませる地獄の業火だ。まぁ、ゆっくり死ぬといい。」

「こんなに温いのに溶けるわけ無いだろう! 神官を呼んで解呪すればいいだけだ!」

「そうかそうか、できるといいな。お前達、人繋ぎになれ。」

貴族は神官の元に向かったが、どうでもいい。

解呪などできるわけ無いしな。


「さぁ、お前達に本当の生を与えてやろう。【転移魔法】幻想城ファントム」

俺達は人が集まってきた時にはその場から消え去った。





「意外と早いお帰りでしたね。」

「何よ、そんなに早く帰って来られたら私が強くなってる暇が無いじゃない。」

「いや、この娘達を頼む。お前らと同じ境遇だ。改変、【転移魔法】アルカ」

俺はすぐにその場を後にした。




「あっ、どこ行ってたのよ! まぁ、いいわ。それより、聞いた? クソな貴族が燃えてるんだって。しかも解呪不可能で、どんどん身体が燃えて溶けていってるみたい。」

「へぇ、そんな怖い魔法があるのか。」 

当然俺は、知らぬふりをする。


「何でも、魔王がやったらしいわよ? 奴隷は全員消えてたみたいだし。」「誰か、誰か解呪を!」

「あれか?」

「そうみたいね。」

神官で無理と理解した貴族は体の表面が爛れた状態で走っていた。

しかも、温度はどんどん上がっている。

ちょっと、この街のために手助けしてやるか。


「あの魔法、暫くするともっと温度が上がるんじゃないか?」 

「そうみたいね。」

「なら、街から出さないとヤバくないか?」

「っ! 直ぐにマスターと話してくる!」

俺がそう言うと直ぐにギルドマスターを呼びに行った。







「確かに、あの魔法は危険だな。それに、咎人だけが燃え、咎人を見つけるとそちらに燃え広がる、か。この熱は危険だが、炎自体はかなり有効活用できる、か。あの炎、欲しいな。」

「マスター! そんなことを言ってないで彼らを運べるのはこの温度が限界です! 直ぐに外へ!」

「分かっている!」

「魔法使いは手伝い給え!」

始め15人に火をつけたが、今は50人程が燃えている。

まぁ、咎人だからな。

一瞬だけ炎が俺を見た様に感じたが、直ぐに温度を上げていく。

貴族の呻き声や、死にたくないとか乞う声が聞こえるが醜いねぇ。 



それから数時間後、全員が死んだ。

死体はない。

全員が灰になるまでじわじわ燃えていった。




「あぁ!! 炎が消えるぅ!!」

「マスター、諦めてください。」

「だって! 咎人だけ燃えるんだよ!? 凄いじゃないか! それに、僕としては人を殺す魔物には一切燃え移らないあの炎で実験とかさぁ!!」

「はいはい、キモいです。」

ギルドマスターは今まさに消えそうな炎の前で涙を流している。

対してティアは辛辣な言葉をあびせている。

仲いいな。


「魔王に会えば手に入るかもしれませんね。」

「魔王に会いたぁぁぁい!!」

そんな言葉を聞いているうちに時間は過ぎ、10時になるのだった。




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