魔王VS勇者再び
城から戻ってきた俺は取り敢えず夜まで時間を潰した。
所持金は白金貨10枚と金貨数百枚あるので奴隷を買い占めるのは余裕だと思う。
金を準備してぼーっとしてたら時が過ぎた。
「もう夜かよ。昼食ってねぇわって夜飯も食ってねぇわ。」
もう夜。
しかも、カードには11時って書いてあって既に10時30分。
「腹減ってねぇから行くか。」
魔王が腹減らねぇのか、俺が元から省エネなのか分からんな。
行く途中に仮面を付けなければいけないことに気が付き、付けていなかった漆黒の仮面を装着する。
「ようこそ、カードを。」
「確認しました」
カードを渡すとそれを確認する、入り口の門番的な人。
確認を終えるとカードを返し、人を呼んだ。
スーツに仮面を付けた案内人が出てきた。
「こちらへ」
案内された場所は個室で、全員がそうなっているらしい。
『皆様揃いましたのでこれより始めさせていただきます。』
『今日の商品は全てで十品です。』
「品、ね」
人を品として扱うことは普通なのかもしれないが、俺にとっては普通ではない。
「てか、全部じゃねぇのか。盗めばいっか。」
この後全員盗むことを決めて取り敢えず売られる奴等だけ回収しよう。
『では一品目! 金貨1枚から始めましょう!』
こうして9人全て買い上げた。
しかし、最後はなかなか皆引かない。
「さて、46の方白金貨1枚です! これで決まるのか!?」
一応言うと俺は51番だ。
手元の4つのボタンを押せば値段を釣り上げることができる。
「追加で金貨10枚っと」
「51番の方が更に金貨10枚! 今回はこの方が買い占めるのか!?」
売る奴も煽るのが上手いな。
どんどん値段が上がっていく。
今回の奴隷が希少で尚且つ可愛いから仕方ないか。
鑑定した結果能力もかなりのものだ。
レイラ・ランドルフ 龍姫 龍騎士LV105 18歳
龍魔法 龍術 いろいろな事情持ち (これ以上表示する必要なし)
俺の鑑定ってさ、ホント勝手に判断するんだよな。
レベル100超えてこんなもんしか表示しないからなぁ。
念のために言うと、俺のレベルは気が付いたら表示不可になってました。
レベル上がってもピコンッとか言わないから全然気が付かなかった。
「46番の方、白金貨3枚! これで決まってしまうのか!」
「ふぅ、決着付けるか。」
そして、俺は一気に片をつけにかかった。
「は、白金貨5枚! 51番の方が白金貨5枚をだしました!!」
そして、誰もこれ以上上げることなく決着した。
「これで決まりだ!! 今回は51番の方の総取りです! 51番の方はこの後、支払いと受け取りに来てください!」
こうして金を払って奴隷達を受け取った。
受け取った後、少し部屋を借りた。
「お前らには、これから俺の城で働いてもらうからよろしく頼む。」
全員が頭に?が浮かんでいるが行けば分かることだ。
「俺に逆らわず従う気はあるか?」
当然のように全員が首を横に振った。
まぁ、当然だよな。
「まぁ、今はそれでいいか。じゃあ、付いて来い。」
十人を連れて外へ出ると何処かで見たことある奴がいた。
「君に頼みがある。」
「何だ?」
思い出した。
こいつ、俺からテンプレ奪ったクソ勇者だ。
「レイラを譲ってほしい。」
「無理だ。」
「魔王を倒すのに必要な戦力なんだ!」
「知らん。」
レイラの方を見るとレイラは俺の服を掴み首を横に振っている。
相当嫌らしい。
「頼む。」
「嫌だって。レイラ自身が嫌がってるだろ。」
そう言って歩き出すと、勇者(笑)がレイラの腕を掴んだ。
勇者君はレベルが86になっているが、レイラの方が強い。
「レイラ、自分のしたいようにしろ。」
「は、はい!」
そう言うとレイラは喜びながら勇者の腕を掴んだ。
「貴方のせいで私はこうなったんですからね! 死ねぇ!!」
綺麗な一本背負いを勇者に決めた。
勇者君は気を失った。
「何かあったのか?」
「はい。私は龍姫の修行で冒険者として活動していたのですが、勇者一行が仲間になれと強要して断りました。すると、勇者の仲間の中に居る黒い人が私を陥れて奴隷にしました。そして、奴隷として買えばいいとでも考えたのでしょう。」
勇者パーティ最悪じゃん。
それを知らない勇者君はもっと罪深いけどな。
「勇者様死んでないですね。勇者様が気を失ってるだけですか。」
「ん?」
振り返ると、そこにはあの時の姫がいた。
コレが例の黒い仲間だろうか。
「ちっ、天罰が下っただけですか。」
「なんだ、仲間じゃないのか。」
その言葉に肯定として頷く姫。
ついでに仮面を外して正体を明かした。
「貴方でしたか。この間は本当にありがとうございました。この勇者には手を焼かされてましてね。このままではこの人の夫にさせられるのでさらってくれませんか?」
「いや、姫が何を言ってんだよ。」
勇者くん何してんだよ。
本当に屑だったのか。
「この勇者なんですけど、ゴミみたいな仲間作るし、私が自分のこと好きだとか思い込んで婚約したいと父上に申し出たりするんですよ。殺してやろうかと思いましたけどそんな勇気無いですし、勇者殺しの罪とか重すぎますし、諦めて逃げるところなんです。」
「まぁ、付いて来るのはいいけど後悔するなよ。それと、俺には絶対従え。」
そう告げて歩き出すと姫もついてくる。
勇者は路上に放置である。
「よし、全員掴まれ。」
さっきと同じく森の中で全員で纏まる。
「【転移魔法】幻想城ファントム」
俺達は城の、奴隷部屋へと移動した。
「あとは頼む。あの国の奴隷全員連れてくるから。【転移魔法】レイドランド」
俺は直ぐにその場を後にした。
「さて、全員いただきますかね。眷属召喚、リヴァ。」
「参上です!」
現れたのは10歳くらいの幼女だが、ちゃんとした幼龍のリヴァイアサンだ。
「俺から見て奴隷を人として扱わない奴らは犯罪者だから、俺は犯罪者にはならないってことで、犯罪者共から奴隷を回収します。」
「いえっさー!」
一応、全知に聞いたが、この世界は力が全て。
権力のある貴族は何をしても正義になる。
よって、圧倒的な武力のある俺もまた正義らしいので、罪人にはなりません。
「リヴァはこの街を水でいっぱいにして全員が気を失ったところで解除しろ。数人水飲んで死んでも構わん。で、お前なら出来るから頼むが、奴隷だけはダメな。」
「おけおけ!」
同時に一気に水で一杯になる城。
水の結界が消えて普通に立っている者達を探すと結構居た。
「ほれ、生きてる奴等集まれー!」
大きい声で叫ぶとゾロゾロと皆を出てきた。
「リヴァ、出てきてない奴隷も全て探して連れてこい。」
「らじゃ!」
リヴァは水に映るものなら何でも見れるので直ぐに走って奴隷を探しに行った。
その間に全員の首輪に触れ奴隷契約を強制的に上書きする。
強大な魔力の前ではショボい契約など意味が無いのだ。
その場にいる者とリヴァの連れてきた者達の中で精神的に壊れかかってる者達全員に忘却の魔法をかけてやった。
クソ貴族に処女を奪われた娘等には再生の魔法で処女に戻し、単行仕事で利き手が使えなくなった剣士の腕も再生する。
忘却は記憶の改竄などではなく完全に忘れさせるため思い出すことは絶対にない。
同じ事を経験しない限りは絶対に。
「リヴァは戻っていいぞ。」
「あいあいさー!」
リヴァはすぐに消える。
忘却で記憶を失った者達は現状の理解に苦しんでいる。
これも、これ以上に辛い記憶を消すためだから仕方ない。
「記憶が可笑しい奴等も居ると思うが、お前らはこれから俺に従え。暫くしたらしっかり仕えてほしいから頼むぞ。じゃ、掴まれ。【転移魔法】幻想城ファントム」
そして、俺は奴隷の集まる国、レイドランドの奴隷を全て回収した。
「全奴隷契約破棄! はぁ、もう疲れたから寝る。後は任せるぞ。」
「そんな酷いですよ!」
「そうだそうだ!」
「うむ!」
ゴブリンの抗議を無視して寝床へと向かい、倒れ込むようにそのまま眠りについた。
♦ 元龍姫 レイラ・ランドルフ から 勇者への一言
クソッタレ勇者は、あのまま野垂れ死ね。 以上!
♦ 元姫 アリス・レイドランド 現 アリス から 王への手紙
私は王家の名を捨て、自由に生きていきます。
せいぜい頑張ってください。
もしかしたら敵になる可能性もありますが、その時はよろしくお願いします。
私は本気で殺りますから。
追伸
勇者はクズですから気を付けてくださいね。
♦ 炭鉱奴隷 元剣豪 アックス・ロイアー 視点
剣豪として名を馳せた俺は、愛した女性を守るために奴隷に落ちた。
我が娘と妻は今でも故郷で生きている。
後数年で奴隷から開放され、故郷へ戻れる。
そう思っていたら、突然奴隷以外が水に飲み込まれて気を失った。
俺達は周囲を当然のように警戒したが、次に起きたのは呼ぶ声だった。
一応呼ばれたので行くと、奴隷の契約相手が強制的に変えられた。
しかも、石に潰されて二度と剣は振れないだろうと思われていた腕骨が、綺麗にくっついていた。
見た感じ悪い奴では無さそうなのでこのまま従っておく。
できれば、故郷の妻に会えるように頼みたい。
しかし、転移して連れてかれた部屋は広すぎる豪華な部屋だった。
こんなところで家族と暮らせたらどれだけ幸せなのだろうか。
あの男に頼んで家族に会いに行きたいが、男は「眠い」という理由で自室へ行ってしまった。
「妻のレイと娘のリカが心配だな」
「アンタの家族か。あの人は優しそうだったし頼んで見るんだな。」
「そうする。」
同じ炭鉱奴隷の男にそう言われベットで横になる。
ふわっふわなベットで、貴族でもこんなベットで寝ないと思う。
既に奴隷の首輪は外されており、気持ちも楽だ。
「明日頼んで、早く会いに行きたいなぁ」
そんな事を考えていると思っていたより疲れていたのか直ぐに眠りに落ちた。
次の日
男キラトという名前らしい。
しかも、あの伝説の魔王様だ。
文献で読んだ魔王とは桁違いの角と身体を持つ魔王なのだが、これに勝てる勇者など歴史上存在しないと思うのは俺どけだろうか、いやない!
これに勝てたら世界壊せると思うからな。
キラト、キラト様は、地図を見て何やら悩んでいた。
「あの、俺は妻と娘がここに居るんですが」
「そうかそうか。夜に迎えに行くから行ってこい。」
「え」
キラト様が俺の肩に触れたのと同時に、俺は故郷にいた。
キラト様は直ぐに俺だけ放置して消えた。
「魔王優しすぎだろ!」
「あ、あなた!?」
「お、お父さん、なの?」
娘はまだ幼かったため俺の顔を忘れていたが、妻は走って来て俺に抱きついた。
キラト様、めんどうだからキラトでいいか。
キラトには感謝しきれないな。
「ただいま。大事な話がある。」
「ええ、ええ! 本当にあなたなのねっ!」
「お父さんっ、お父さん!」
二人は泣きながら喜んでくれている。
妻をお姫様抱っこし、娘を肩車して自宅へ戻る。
二人に俺が魔王に助けられた事や、これから魔王に従う事になること、魔王がいいやつな事を伝えているとよるになった
「いい加減気づけー。迎えに来たてやったのに飯くってんのかよ。一応向こうでも用意したんだがな。」
俺達が夜飯を食っていると、突然部屋にキラトが現れた。
それも、普通にだいぶ前から居たらしい。
「これがキラト、魔王っていうか、大魔王?」
「なんて、大きい角・・・・」
「お兄ちゃんのこれ触っていい!?」
「あぁ、いいぞ。」
娘がキラトの、魔王の角にぶら下がった。
俺と妻は気が気じゃなかった。
だって、歴代最強の魔王さまだからな。
「この村の住人全員を俺の街に住まわせていいか?」
「はぁ!?」
「えぇ!?」
「街に住めるの!?」
もう、この魔王様がする事に理解が追いつかない。
「城なのに人居ねぇからさ。あっ、設備は一級品揃ってるし、畑とかも転移させるから安心してくれ。教育費も口が持つし。」
「マジか!? ちょっと相談してくる。」
「あのー、何故教育費を?」
「私、お勉強したい!」
この世界で勉強することは義務じゃないんだが、知恵を得ることは利だ。
俺は直ぐに村長たちに話をしに行った。
「何でって頭がいい奴が増えれば、それは国にとって利だからな。国に利となる者を国が育てないでどうすんの。」
「す、素晴らしい考えだと思います!」
「私お勉強できるの!?」
村長達は俺が帰ってきたことに驚いているが、それ以上に大きい声が俺の自宅から聞こえてくる。
「村長、どうする? 今なら最高の待遇だと思うぞ」
「皆はどう思う。」
「アックスがここに居るのが答えなんじゃないか?」
「確かに。」
「奴隷からも開放されてるしな。」
「話の途中で悪いが、もし、俺の街に来て害ある事を考えればそれなりの対処をする事になるから、そこも考えに入れてくれ。」
俺達が賛成になりかけた所で重要な事を伝えに来るキラト。
「なぁ、そういう事教えてくれてる時点で良い奴だと思わないか?」
「うむ、アックスの言う通りだな。」
「自分の国で反乱起こそうとする奴に制裁しない王は居ないしな。」
「なら、答えは決まりか?」
こうして俺達の村は丸々消えた。
後に消えた村として物語になるのだった。
「さぁ、行こうか。」
キラトの言葉と共に俺達の村は丸々1個街へと移動した。
奴隷は決められた場所で寝るように言ってあるそうだが、俺みたいな家族持ちは家族と暮らして良い言ってくれるキラトに、いつか恩を返したい。
俺みたいな30歳の剣豪に出来るかは分からないがな。
♦魔王の城について
外から順に。
1、城壁。
2、畑や魔導川。
3、4つに区分されている街、食料街、魔導街、ギルド街、救済街。
4、住民街。
5、魔王城
勉強をする図書館や学校は城の内部。
1〜4 迷宮街 ロスト
害有りと判断されると永遠に迷い続ける。
5 幻想城 ファントム
害有りと判断されると空想の世界に閉じ込められる。