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七賢人と契約せし神々

魔王がこの城、浮遊城【ヘブン】に来てから一ヶ月が過ぎた。

村人達はもう直にレベル600になるそうだ。

今、私達はこの城にある七つの教会で戦前の祈りを捧げている。


♦ 七賢人 元名 サチ・クジョウ 現名 アザトース



私は七賢人のリーダーとして、旧支配者の器として教会に来ている。



「我が神より遣わされし神、アザトースよ。我々の望みのために力をお貸しください。」

そう告げるのと同時に、教会は光の一切ない闇となった。


『汝、死す覚悟はあるか』

「はい」

その声は低く、何者よりも重い威圧を感じさせる。


『我は偉大なる神より遣わされし者。頼まれた仕事は確実に成功させてみせよう。汝、何を望む』

「女神を屠る力を」

私の言葉を聞いた暗闇に潜むアザトースは、静かに言葉を発した。


『弁えよ。汝、自身の制御不可能な者を望むとは愚かなり。汝は愚者である。もう一度問おう。汝、何を望む。』

「どうか、女神を屠る力を。たった数分で良いのです」

それを聞いたアザトースは笑う。

それは、愚者を嘲笑っただろうと思った。

しかし、アザトースは喜んでいたのだ。


『良い。良い答えだ。汝は、不死を捨て、人の身を捨てる覚悟はあるな?』

「もちろんです」

『ならば、この実を授けよう。時が来たら飲み込め。さすれば、我がすべての力を貸し与えよう。』

「ありがとうございます。狂気に満ちた宇宙の真の造物主よ。」

『あぁ、楽しみに待っておるぞ。』

アザトースの闇は一点に吸い込まれるように収束し、明るさを戻す。

あの闇に長く居れば、確実に精神が狂うだろう。

あれこそ、我が命を繋ぐ神に遣わされし神、アザトース。


「偉大なる神よ。授けられし命、今こそ果たして見せます。」

私はアザトースより授けられた実を収納し、教会を後にした。



『偉大なる神、か。我らに近づく前に死ぬとは、誠に悲しきことかな』

アザトースは、かつて友と認めた神を思い浮かべる。

その神はすでに殺され、異形なる神であるアザトースに遠く及ばないまま死んだ。

アザトースもその事は悲しく思っていたのだった。



♦ 七賢人 元名 ユウカ・ホウオウイン 現名 クトゥルフ



クトゥルフになってから、数万年の間、女神には遭遇できなかった。

悉く逃げられたのだ。


しかし、今回はこちらが攻める。

よって、準備をしなくてはいけない。

私の場合、その準備で死ぬ場合があるが。


「我が契約者クトゥルフよ、我が前に姿を現し給え。」

私は言葉を発した時には海の中に居た。

これは、クトゥルフの存在する太古場所、ルルイエだ。

私の魂は今、クトゥルフの世界へと引き摺り込まれたのである。



『久し振りだな。それにしても、姿を現せとは身の程を知れ。』

「クトゥルフよ、あの言葉がはじめの一節である以上変えることはできません。」

『我に文句を言うか。伊達に1万年生きておるだけある。それで、何用だ。』

「目標討伐対象の女神との戦闘時に力をお貸しいただきたく。」

クトゥルフは、巨大な蛸、クラーケンに良く似ている。

目の前に居るクトゥルフは、未だ話さず、何やら考えている。


「クトゥルフよ、どうか、力を貸しください」

『そうだな。最初で最後の願いだ、我、旧支配者クトゥルフの名において約束しよう。』

私は思った以上に簡単に解放されたので、驚きが隠せない。

前回は話をするだけのつもりが、精神が狂う寸前まで壊されかけたのだから。


「感謝します」

元の世界へと引き戻された私は自身の中に宿った力を感じ、その場を後にした。



♦ 七賢人 元名 アヤナ・スズシロ 現名 ヴルトゥーム



「ヴルトゥームさーん、力貸してくださーい」

教会に入って第一声にこう言った私ですが、ヴルトゥームさんは全く返事をしません。


「ヴルトゥームの爺さーん!」

『わしは爺さんではないわい! ちゃんと女の子じゃ!』

やっと反応した。

紹介します、こちらの幼女がヴルトゥームさんです。


「あの、力かしてください。」

『はいはい。持ってけ持ってけ。わしは眠いんじゃ』

いつも大抵寝てるくせに眠いとかふざけてる。

でも、力だけは偉大なんですよねー。


「感謝でーす。女神殺したら死ぬと思うんで、会うのはこれで最後だと思います。では、また、いつの日か会うことがあればよろしくー」

『あぁ、わしは輪廻の先で待っていよう。』

花の妖精の姿をしたヴルトゥームは花びらのように散って消える。

ホント、儚げに消えるのはズルいよ。


「では、また。来世で。」

私はすぐにその場を後にした。





♦ 七賢人 元名 レイ・ミナセ 現名 ナイアルラトホテップ




「ナイアル、話がある」

『お久しぶりですねぇ、レイ。貴方はあまり私の事を好いてはいないはずですが、何かありましたか?』

部屋に入ると、地面が真っ黒だった。

その混沌の闇がナイアルである。


「女神を殺す。力を。」

『偉大なる神の遺言ですからねぇ。守りますとも。アザトース程の力では無いので、貴方なら制御できますよ。』

「ありがとう。」

『いえいえ』

私はあまりナイアルが、好きではないのですぐにその場から立ち去った。



『誰が暴走するか、楽しみですねぇ。』

ナイアルは一人、その場で旧支配者達を思い出し、予想している。


『異形なる神であるアザトースや、私はあまり世界に興味がないですからねぇ。でも、旧支配者は面白いっ! あぁ、旧支配者達よ。暴れてくれ。私は観察することが好きですからねぇ、楽しませてもらいますよ』

ナイアルは暗闇の中で高笑いしているのだった。




♦ 七賢人 元名 キリカ・キリヤマ 現名 ノーデンス




「厳正なるノーデンスよ、契約の時が来る。目覚め給え」

『起きておる。して、いつその時は来るのだ?』

ノーデンスは、良い人なんで、気軽に話せます。

力についてもいつでも貸してくれますし。


「来月ぐらいかな? それで、ノーデンスの力がかなり必要になると思うからよろしくねー!」

『わかった。その時になったらまた呼べ。旧神の王として相応の力を汝に与えよう。』

ノーデンスは姿を現すことなく、言葉どけ告げて消えた。

話してる時は天井が輝いているのでそれで判断している。


「準備完了!」

皆よりもノーデンスは優しいので早く終わる。

いつものことである。




『あの契約者よこれで終わりか。次はどんなのが来るか、楽しみだ。』

ノーデンスは天からキリカを見ているのだった。




♦ 七賢人 元名 ホナミ・カイドウ 現名 古のもの 



「爺ちゃーん、祈りに来たぞー」

『なぁ、ホナミよ。最後くらいはしっかり祈らんか?』

ホナミが協会に入り、歩きながら祭壇へ進みながら呼びかけると祭壇に一人の白髪の爺ちゃんが現れる。


「えー、良いじゃん! 最後だから尚更祈るよりもお話でしょ!」

『いつものお話だと思うんじゃが。』

ホナミは笑い、爺ちゃんは呆れている。

これでも、この爺ちゃんは旧支配者である。


「それでね! これでお別れだから挨拶に来たのと、契約の時を知らせに来たんだよー」

『そうかそうか。力は貸そう。まぁ、ホナミが死んでも見ていてやるかのう。』

顎髭を触りながらホナミに笑いかける。

ホナミも別れは辛いようで、泣きそうになっている。


「じゃ、泣きそうだからもう帰る!」

『ほっほっほっ、ではな、ホナミよ。』

ホナミはノーデンスに背を向けて走り去る。

ノーデンスはそれを見て微笑んでいる。


『偉大なる神には感謝せねばな。此度の契約者は気に入った。来世で何かあれば助けてやるとしよう。ほっほっほっ、年のせいか娘が心配になってしまうのう』

ノーデンスは教会で笑い、崩れ去るように消えていった。





♦ 七賢人 元名 アヤメ・シンドウ 現名 クトゥグア



「火の精、クトゥグアよ。お話があります。」

『アヤメよ、話さずとも分かる。持っていけ』

アヤメは自身の身体が火へと変わるのを認識する。


「感謝します。」

『いいさ。お前には楽しませてもらったからな。特に、ナイアルと戦えたのは楽しかったなぁ。アイツの住処を燃やしてやったが、倒せなかったんだから。』

クトゥグアは楽しそうに過去を思い出している。


「でも、勝てなかったでは無いですか。」

『アイツの闇は卑怯だ。だが、本気を出せば俺も良い勝負ができるはずだ。』

クトゥグアは悔しそうにそう言っている。

実際、這い寄る混沌と呼ばれるナイアルに傷を負わされたのだ。

対して、こちらはナイアルに傷を付けることが出来なかった。

あの時、混沌の恐ろしさを知ったのだ。


「さて、私は行きますね」

『行ってこい。』

クトゥグアはボワッと消える。

消えたのを確認し、アヤメは部屋を出ていった。



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