魔王軍集結
今日もいつも通り農業をしている。
午後には魔王軍全軍を集めて初の顔合わせである。
「アックス、なんでお前のとこは毎回遅れてんだ?」
「ふざけんな! こんな広い土地一人で耕せるわけねぇだろ! 俺は一人でやってんだからな!」
「あー、そうだったな。」
「もっと範囲を減らしてくれよ」
アックスの愚痴を聞きながら農作業に取り組む。
広さはだいたい1㎢ぐらいである。
さて、そろそろ行かなければな。
「じゃ、帰るわ」
「おうっ、また頼むぞー」
アックスに、見送られてアックスの家に入る。
「メイ、帰るぞ」
「はーい!」
「お兄ちゃんまたねー!」
「旦那が迷惑をかけてすいませんね」
リカとアックスの嫁に声かけて家を出ると連絡が来た。
『モニタです。全員の集結が完了しました。お待ちしております』
「りょうかい。」
メイを抱きかかえて城へ転移する。
一応は礼儀として扉から入る。
「遅れた」
入ると、中央に俺の席、横に3つずつ席があり魔王が座り、魔王の最高戦力の数人が膝を付いている。
「さて、今日は顔合わせだ。顔を上げて各魔王の顔の確認と、各部隊の長と話し合えよ。」
すると、俺の部下の調理者が転移魔法で食事を準備した。
ナイスタイミングだ。
俺の部下を紹介するまでもなく、化物揃いだ。
「キラトのとこは化物揃いだにゃ」
「モフっていいか?」
「いいにゃよ?」
「モフモフ」
「うにゃ〜」
「異世界最高だぜ」
ワイワイ皆が話しているので俺もミーニャをモフって楽しむ。
猫かわええ。
「メイもするー、モフモフ」
「うにゃ〜、気持ちいにゃ〜」
ちっこい魔王がより一層ちっこく丸まって完全に猫になった。
格好良く言うとビーストモードなんだろうけど、どうみても猫化だよ。
「メイも眠いー」
「寝ていいぞ?」
「にゃ〜」
メイは俺の膝の上でミーニャを抱いて寝てしまう。
場が和むわ。
「みんな元気だなぁ」
「そうですね、我らが王。」
「お酒を飲むといつもあんな感じですからね。」
「アサルトとロイドは飲まないのか?」
「まぁ、あんな風になりたくないですし」
「そうなんですよね。」
アックス、マルス、リンネは部下達とワイワイやっている。
今度同名のアックスも連れてきてやるか。
「ここに来てから民も凄く幸せそうな顔をするようになりました。悪事なんてする人は絶対に居ませんしね。本当に感謝しています。」
「私もです。幻想魔法とは素晴らしい使い方が出来るのですね。いや、ダンジョンマスターだからこそ、ですかね?」
「まぁ、そうだな。ダンジョンマスターってのが一番大きいと思う。まぁ、次の目標は女神殺しだ。それが依頼だからな。」
それを聞いて二人も頷いている。
既に、話はしてあるのだ。
「それにしても、可愛い娘さんですね。」
「撫でてもよろしいですか?」
「あぁ、いいぞ。起こさないようにな。」
女神が、猫を抱いている光景は本当にヤバい。
これに癒やされない奴はいないと思う。
動物動物って思ってたらクロどこ行ったんだ?
「トラナ」
「何ですか?」
「クロは?」
「ん? 誰ですかクロって」
あれ、俺ってトラナに任せたはずだよな?
もしかして部屋で餓死してたりしないよね?
「いや、俺がだいぶ前にお前に任した小熊なんだけど」
「あぁ! 居ましたね! それなら森の方に行きたがっていたので連れていきましたよ。」
「え、連れていきましたよって連れ帰ってないの?」
「ええ、あの熊はかなり強いですし強くなって戻ってきますよ!」
「お前、何してくれてんの!? 俺の小熊だよね! 確かに忘れてましたけど!」
「分かりましたよ。モニタさんに探してもらいますね。」
トラナはそんな事言って去って行く。
クロ、お前の事完全に忘れてたわ。
すまねぇな。
「何かあったのかい?」
「熊がどうのって言ってましたね。」
「あぁ、俺が拾った可愛い小熊が行方不明なんだよね。」
「忘れてたんじゃないのかい?」
「そんな感じで話してたよね。」
「はい、忘れてました。部下に預けてそのまま忘れてましたよ。」
本当にすいませんでした。
あんな可愛かったクロが森で生きれるとは思えないし。
死んでたらどうしようか。かなり心配である。
「全員酔って寝てしまいましたね。」
「運ぶの面倒ですね」
「俺が送ってやるよ。」
倒れて寝ている奴等全員を適当な部屋へ送り、残ったのは俺とロイド、アサルトだけ。
まぁ、膝上のミーニャとメイも居るけどな。
「さて、今日はもうお開きかな?」
「まだ16時だけどね」
「オレも心配事あるし解散だな」
軽く飯を摘みながら話してる俺達三人。
いやー、これがほのぼのですね。
「これから大変ですね」
「何人死ぬか分かりませんけど」
「生き残ったらまたこうして笑えるといいな。」
俺達三人はなんかスゲー仲良くなった。
「兄妹の盃、交わしますか?」
「いいですねそれ。」
「三人だけどな。」
三人で盃に酒を汲む。
「よろしくな、兄妹」
「よろしく、兄妹」
「あぁ、よろしく頼む。」
俺達は盃を交わした。
「うおっ、力が増した?」
「ええ、増えましたね。」
「これは凄いですね。」
盃を交わした直後に一気に力が増した。
これは凄い。
「それじゃあ、帰りますか。」
「そうですね。また誘ってください。」
「おう、またな。」
二人を転移させその場に一人になった。
『キラト様、温泉を発見しました。』
「そうか。モニタに報告して場所を記録したら他の場所も探してみてくれ。」
『了解しました』
連絡が切れ、ミーニャとメイを部屋に連れて行き、寝かせる。
「さて、寝るか。」
「失礼します。」
俺が寝ようとしたら部屋にトラナが入ってきた。
「ん、何? 寝たいんだけど」
「え、クロ見つけましたよって報告を」
「そうだったぁ!!」
また、忘れていた俺は一気に目覚めた。
「連れてきたのか!?」
「いえ、場所を発見しただけです。」
「教えてくれ、今すぐ」
「森の中心です。」
俺はそれを聞いて立ち上がる。
クロを連れ戻さなければ。
「行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
俺は部屋から出て森へと向かった。