勇者殲滅作戦② 不可侵VS盾の勇者
「き、君、昔何処かで会った気が」
「あぁ、お前のせいで壊滅した村に居た住民だよ」
勇者は盾を片手に奴隷を引き連れていた。
こいつも奴隷に頼り始めたのか。
「昔より強くなったのか?」
「うん、あの頃は弱かったけど女神様に新しい力を貰ってね。」
「女神、ね。弱いって自覚があって守るって言ってたわけか。金も払わずやりたい放題やって。」
「本当にすまない。あの頃はまだ子供だったんがはっ」
「もう黙ってくれ」
イラついた俺は勇者に腹パンした。
今すぐ殺したい。
「な、なにをっ」
「黙れっ!」
勇者は盾で防ごうとしたが、盾を貫いて腹を殴ってやった。
「女神様に貰った盾がっ! 何てことを!」
「うるせぇ! お前のせいで俺の家族や知り合いは死んだんだぞっ! お前のその無責任さのせいでな!」
「くっ、お前たちやれ!」
「上書き」
飛びかかってきた奴隷達の契約を上書きしてやった。
「何を、した?」
「なんでもいいだろ。で、お前が女神に貰ったのは盾だけか?」
「そんな訳無いだろ。僕は異世界から来た選ばれし者だよ? この鎧もさらに能力まで貰ったさ」
「そうかそうか。女神とやらを殺したくなってきたな。」
キラト様に言われてから憎むことを止めて怒ることにしている俺は、今自分の中にある怒りの力が溢れてくるのが分かる。
「で、見せてみろよ。お前の能力を。」
「【守護魔法】!」
透明な盾を出し、それを曲げたりして攻撃してくるが遅い。
「それだけか?」
「くっ」
どうやら鎧とこれだけらしい。
これと言っても頑張れば自力で身につけることのできる魔法だがな。
そう言えば、もう一個合ったのは俺が奪ったんだったな。
「絶防」
「あ、れ?」
突然能力の使えなくなった勇者はかなり戸惑っている。
そして、焦りから生まれた心の余裕の無さのせいで絶望に陥る。
「僕はクズだ。あぁ、本当に今まで何を」
〈貴方、まさか勇者を本当に殺す気!? 勇者は世界を救うきゅうせ〉
「お前は黙れ。勇者、悔いても無駄だ。もう遅い。死ねっ!」
勇者の顔面を殴り、地面に叩きつける事で頭が潰れる。
完全に勇者は死んだ。
「到着って、もう終わってるじゃん。」
「あぁ、雑魚過ぎだ。」
「エイラとアンネの方は女神がズルい能力を授けてたせいで苦労してたよ。」
「無事なのか?」
「あぁ、力を奪われて万事休すだったが俺が殺しておいた。二人共城にいるよ。奴隷は城に連れてくからな。」
「そうか。俺もキラト様んとこ行っても邪魔だろうし戻るわ。」
ソリッドは奴隷達をに抱えて城の方へと走っていく。
城のある方向へ歩き始めると、おかしなことに気がついた。
「あれ、向こうの方でソリッドが戦ってるな。じゃあ、あれは誰だ?」
俺の元へ来たソリッドはちゃんと城の方向へと走っていく。
その背中を見つめるが、魔力も見た目も全てが同じ。
「分身? にしては強すぎるな。まぁ、なんでもいいか。」
いや、かなり気になるけどな。
気にしてもダメかなって。
「見に行くか。」
ソリッドが何をしたのかと、ソリッドが誰かと戦っているのが気になり、そちらへ向かう。
どういう事か聞かなければな。
「それにしても、あの勇者雑魚すぎたわ。」
『貴方方はいつか後悔しますよ。』
「誰だ?」
『女神と呼ばれている者ですよ。』
「誰も女神とか讃えて呼んでねーよ、自意識過剰だな。それと、キモいからクズは話しかけんな、馴れ馴れしい。お前こそ後悔するなよ。絶対に殺してやる。」
『楽しみにしていますよ、人間』
突然の女神からの言葉にかなり驚いた。
仲間を失い、助けを求めた時は声すらかけてこなかったのにお気に入りの勇者が死ねば声をかけてくるなどウザすぎる。
「ここで戦闘があったのか。どんなけ強い奴と戦ってやがるんだ?」
ソリッドが戦っていた痕跡を見つけたが、ソリッド達は更に移動している。
かなりの速度だ。
「これは追いつけねぇな。」
そう思いながらも、痕跡を辿って行くのだった。