勇者殲滅作戦➀ 魔王×2VS勇者
ここから少し短めです。
♦ 平原
「久し振りクソ勇者さん。」
「早速ぶっ飛んでくれます?」
「がはっ」
勇者をぶっ飛ばして奴隷達の契約を上書きするエイラとアンネ。
勇者は吹き飛びながら岩にぶつかって止まった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「汚れちゃったけどね・・・・・」
「お姉ちゃんは?」
「私もその子と同じで汚されちゃったわよ」
それを聞いたエイラとアンネは勇者を苦しめて殺すことに決める。
「お姉ちゃん達は勇者の事も忘れれるし、綺麗な体に戻れるよ。安心してね」
「うん、エイラの言う通り! 私達であのクソ勇者殺すので待っていてください!」
「強く、なったわね。」
「口調まで変わって、苦労したのね。」
奴隷達はやっと開放された喜びで泣き、エイラとアンネの姉は自分達の妹の成長に泣いて喜んでいる。
「立ち上がらないならさっさと死ねっ!」
「奴隷にされた悲しみをその身で受けろ!」
「引っ掛かったな!」
「本当に馬鹿勇者。」
「その湧いた頭どうにかしてほしいですね!」
勇者が瞬時に仕掛けていた罠は普通に避けられ、顔面にエイラのパンチ、腹にアンネの蹴りが入る。
「お前達、僕が誰か分かっているのか! お前等二人は奴隷落ち決定だぞ!」
「お前こそ、私達が誰か分かってないみたいね?」
「本当にね。この状況で生きていられると思うなんて。」
二人は同時に勇者に向かって瘴気を放つ。
高濃度の瘴気を浴びた勇者は震えが止まらなくなっている。
「雑魚ね。死ねっ!」
「つまんないわねっ!」
二人の拳が迫り、確実に死ぬはずだった勇者は、二人の拳を受け止めた。
それは、絶対にありえない現象。
「ありがとうございます、女神様!」
「なっ」
「め、がみ?」
そう、目の前の勇者は女神に力を授けられたと言ったのだ。
この二人がどれだけ泣き叫んでも手を差し伸べてはくれなかった神が、力を貸したのだと。
二人はそれが許せなかった。
「ふざけるなぁ!!」
「なんでお前なんかが!」
「僕は選ばれし異世界人だよ? 女神様が手を差し伸べてくれるのは当たり前でしょ?」
その言葉に二人は絶望した。
この世界はそこまで堕ちた世界なのか、と。
「さぁ、ここからは僕の番だよ!」
勇者はわざわざ件を使わずにエイラとアンネを殴る。
二人は何も言わず一方的に殴られ続ける。
二人共が、抵抗する必要すらなかったのだ。
「キラト様の言うように、怒りは莫大な力を授けてくれるのね。」
「そうみたいですね。もう、さっさとコイツ殺しましょうか。」
「なっ、効いてない!? なんで弱くならない! 【弱体化】は発動しているはずなのに!」
この勇者が得た能力は、範囲にいる敵を自分より弱くするというもの。
元の強さが強さなので、弱くなったと言ってもレベル差1。
努力の差など倍は違う。
「さぁ、女神とかいうクズに力を借りた勇者さん。さっさと死んでください!」
「ほんとに、女神とか居るんですねぇ。もう考えたくないので死んでくださいよっ!」
「がはっ、ごっ」
二人は一方的にボコボコにする。
勇者は既に100回は致命打を受けたが、再生で元に戻されるので苦痛を受け続ける。
奴隷達はその様に「もっとやれー!」とか言っている。
あの、女神に愛される勇者がボコボコにされる様を見て楽しんでいるのだ。
「俺の手助けはいらなかったか?」
「来てくれたんですか? もう終わらせます」
「ソリッドくん良い人っすね。まぁ、終わりますけど」
「だの、む・・・・・ゆるじでぐだざい」
足を掴んで助けを乞う勇者だが、エイラもアンネもそのボロボロの勇者を蹴り倒す。
「私の姉もこうして頼みましたが無理矢理連れて行ったでしょうに。しかも、純血まで奪って。」
「それで助かるとお持ってるならホントにおめでたい頭してるよ」
「くくっ、油断してくれてありがとよぉ」
二人の足に触れていた勇者は手のひらから二人の力を吸収し、立ち上がった。
魔力も体力も奪った勇者は、傷が治り万全以上の状態になっている。
「ははっ、こんな力を持ってたのか! ゴミの分際で!」
「くっ」
「殺、すっ!」
しかし、全く動けないエイラとアンネは今にも気を失いかけている。
完全に油断していたのだ。
「はぁ、いい加減さ俺もイライラしてきたわ。死ねよ。」
「主人公気取って助けに来たのか? 残念、もうこいつ等死にまーす!」
勇者は持っていた聖剣で二人を突き刺そうとするが、それはできなかった。
なぜなら、剣を持っていた右腕が消えたのだ。
「お疲れ〜」
ゴキッ
ソリッドは一瞬で勇者の頭をへし折った。
その速度はエイラとアンネにも見えなかった。
「てかさ、エイラはともかくアンネは強奪すれば勝てたんじゃないの?」
「私はともかくって酷いじゃない。」
「魔力とかもまるごと奪われましたから無理ですよ。強奪にも魔力とか体力必要ですし。それに、あれが女神に授けられたもう一つの能力でしょうし。私の強欲の強奪よりも強力でしたよ。」
二人は地べたに倒れ伏しそう言うと、そのまま眠りについた。
「さて、君達も付いてきて。」
「はい。」
「わかりました。」
奴隷達を引き連れ魔王城へと戻る。
ひとまずこの娘達を安全な所に連れて行かないと、集中して戦えない。
「それにしても、本体は誰と戦ってんだ?」
キラトを追いかけたはずの本体が何者かと戦闘しているのだ。
本体が負けることはありえないが、わざわざ戦っていることが不思議なことだ。
最強を求める者が最強以外と戦うことはないのだから。
「急ぐか。」
「え、きゃっ」
「何するのよ!」
10人以上の奴隷を抱えたソリッドは、魔王城へと急ぐのだった。
「私の妹はどうなってるんですか?」
「私も気になります!」
城へと向かう途中、二人の姉にそんなことを聞かれ、正直に伝えるソリッド。
「俺もこいつ等も魔王だよ。あの勇者みたいに女神とかいう神は助けてはくれなかったからな。」
それを聞いた姉二人も言葉の意味を理解した。
私達のような一般人ではなんの力も与えられず、魔王ぐらいしか力を与えてくれないんだと。
「でも、その魔王様優しすぎじゃないですか? 怪しいです」
「確かに。」
「んー、それは大丈夫だよ。女神はイレギュラーだったけど、他の人に介入され無かったのはその魔王様のおかげだし。今頃魔王様は戦ってるんだろうな。」
ソリッドは魔王が居るであろう方角を一瞥し速度を上げた。
「速い・・・・」
「なんで風を感じないのか分からない。」
「まぁ、俺が森羅万象を操ってるからな。」
そんなことを話しているうちに、魔王城へと到着する。
すると、見たことの無い人達が集まっていた。
「君、キラトの部下だね? 私達は魔王だ。彼は今どこにいる?」
「助けに行くんですか?」
「あぁ、僕ら全員でね」
「案内します。」
奴隷達を下ろすと、トラナさんが来てくれて全員連れて行った。
「では、付いてきてください」
「わかった。」
ソリッドは6人の魔王を連れてキラトの元へと向かう。
「彼は一人で戦っているのか?」
「そのようですが。」
「敵は大軍だな」
「魔力感知すれば誰でも分かるだろうがよぉ」
「それにしても、無茶するっすね」
「さっき勇者一人死んじゃったし何が起きてるのぉ?」
「まぁ、行ってみれば分かりますよ。それと、今魔王様は能力使用不可にされているらしいので助けてあげてください。」
ソリッドは魔王に頼みながら速度を上げていく。
「君も十分魔王としての能力はあるみたいだけどね」
「確かに。」
「他にも魔王が戦ってやがるな。」
「あの魔王が作った魔王だろうよぉ」
「作ることってできるんっすね」
「出来てるんだからそうなんですよ、きっとぉ」
「俺は最強を目指してる魔王です。まだまだ弱いですけどね。見えてきました。」
7人の魔王はキラトを助けるべく敵陣へと乗り込むのだった。