魔王は仲間を手に入れる
「始めるぞ〜」
「「はいっ!」」
集まったのは計100人。
この街にいるほとんどの初級冒険者が集まった。
「よーし、職ごとに別れろ。そしたら順に訓練始めるからな。」
こうして初日の訓練を始め、俺の目に止まった者を5人選んだ。
全員が、何やら心に闇を抱えてるっぽいので引き込みやすそうだ。
訓練の後、その五人には残ってもらいトークタイムをしよう。
午前10時から午後3時間まで訓練を見てやって、だいたいの奴等が感覚を掴んだので、「忘れないうちに森行って練習して来い」と言い今日の訓練は終わった。
もちろん、予定通り例の5人は残してあり、全員が15歳である。
「お前らさ、才能あるのに何で強くなれないと思う?」
「才能が無いんでしょ。」
「そう思い、ます」
「俺もー。」
「才能を使いこなせてないとかじゃね?」
「精神的な問題なのでは?」
女三人に男二人は、それぞれ発言するが最後の一人以外間違えまくっている。
話した順に、エイラ、アンネ、ソリッド、アダンテ、シーラである。
エイラは人、アンネはエルフ、ソリッドとアダンテも人、シーラは獣魔族である。
「まぁ、最後の精神的な問題が正解だ。お前ら、何を目的に強くなってるんだ? その憎しみでは成長に限度があるぞ。」
「っ!?」
「なん、で」
「全てお見通しってか?」
「そんなの知らねぇよ。」
「この憎しみは捨てれません。」
みんないろいろ理由があるみたいだが、それではダメなんだよなぁ。
憎しみはたいした力にはなり得ないからな。
「まぁ、お前らの憎しみはどうでもいいけど、その憎しみを貯めるな。取り敢えず吐き出せよ。ほら、エイラからいってみようか。」
「わ、分かりました。」
全員黙って話を聞く。
憎しみとかは吐き出したら楽になるからさっさと吐き出してほしい。
無駄な感情だからな。
「私のお姉ちゃんはエルフで、魔力量が多かったから勇者に無理矢理連れてかれて、取り返したいのです。そのためになら私は悪魔にだって魂を渡しますから。」
「へぇ、それは良い事聞いたなぁ。次、アンネな。」
勇者って最低な奴多くねぇか?
これ、魔王の方が勇者じゃね?
「私は、えと、私も、あの、勇者にお姉ちゃんを・・・・」
「あのさ、勇者ってあれだよね? 民のために頑張るぜ!的な奴だよね? 俺の思ってるのって、勇者じゃなくて神か何かでしたっけ? なんでそんなクソ勇者が沢山いるんだ? 俺の中の勇者と全然違うんだが!?」
「私のとこに来た勇者は奴隷を引き連れた奴だったよ?」
「私、も。」
「しかも同一犯かよ! ま、まぁ、それはどうにかしてやるよ。相手が勇者なら方法はいくらでもある。じゃ、ソリッドくん。」
これでまた勇者出てきたらもうその勇者は処刑確定な。
もう、勇者の定義がわからなくなってきた。
「俺は、ここから西に3000km程の位置にある街で奴隷にされた弟や妹を助けたい。長男としてその義務があるからな。多分レイドランドに連れてかれた。」
「はい、問題解決済。それなら全員助けたから後で会わしてやる。次、シーラな。」
え、あ?嘘だろ?とか言ってるが無視無視。
早いうちに会わせてやろう。
「私は片耳無いですが獣魔族です。魔族という理由だけで魔王側でも無いのに家族を斬り殺されました。家族を計18回斬ったあの勇者は36回斬って殺したいです。そして、私と同じ様に耳も斬り落とします。一応言うと、その勇者は二人の奴隷を連れていた勇者ではありません。」
「へぇ、いいね。打倒勇者とは良い素材だ。最後はアダンテくん、よろしく。」
良い素材?とか言いつつ頭に?が浮かんでいるが、まぁ、話が終わってからだ。
「俺はよ、村が魔物に襲われたことがあったんだ。でさ、魔物を倒すのが役目の勇者が敵から逃げたせいで村は壊滅。前日にその勇者は、どんな魔物が出てきても余裕とか言って酒を飲んでて、そのせいで上手く戦えず逃げやがったんだ。俺は、最後のあの言葉を忘れねぇ。お前らが僕の盾になれって言った言葉をなぁ!!」
「そう怒るな。まぁ、怒りはいいぞ? 素晴らしい力になるからな。それじゃあ、敢えてその憎しみを消せ。そして、怒りに変えろ。憎んでも力にはならないが、怒りは力に変えることができるからな。」
全員が、どういう事か理解できていないが、俺のことを教えてやれば直ぐに従うだろうし、効率が良いか。
復讐の手伝いをする魔王ってなんだかなぁ。
「ソリッドの家族がレイドランドに居るなら、間違いなく全員助けた。それと、お前ら、本当に勇者を超える力を手に入れられるならなんでも出来るか?」
「もちろんよ。」
「はい、絶対に、なんでも、します。」
「本当か!? てか、なんで知ってんだ?」
「お願いします。」
「俺も頼む。全てを守れる力をくれ。」
その言葉を信じた俺は、魔王ということを明かすことに決めた。
こいつ等を、俺の精鋭部隊にしてやる。
それほどの才能がある。
「覚悟があるなら、人繋ぎになれ。」
「ええ。」
「はい。」
「本当に会えるんだな!」
「分かった。」
「おう!」
全員が人繋ぎになったのを確認して俺達は魔王城へ転移した。
「ここは、魔王城。お前達が憎しみを忘れ、怒りのままに強くなる場所だ。」「魔王、城?」
「本当に、魔王、城なの?」
「なぁ、本当にここに居るのか?」
「凄い人の数を感知できる。」
「転移魔法かよ。」
全員が城の内部に突然転移した事で驚いている。
「あれ、また戻ってきたんですか?」
「トラナか。トラナ、ソリッドくんを元奴隷の彼女等に会わせてくれ。家族の一人だ。」
「では、こちらへ。」
ソリッドのことはトラナに、任せて俺達は応接間へついた。
「座れ。話をしようか。」
既に全員話す余裕はないらしい。
すれ違った者達と自分達の強さの違いから恐怖したのだろう。
「俺は魔王だ。」
全員、えって顔してるけど、聞いてなかったのか?
「俺は魔王です?」
「しょ、証拠、は?」
エイラの質問に応えるように改変を解除した。
4人は一瞬意識が飛んだらしく、前に倒れた、机で頭を打って意識を戻した。
「この俺が、お前らを最強にしてやるよ。」
「歴代最強の魔王・・・・」
エイラはそんなことを言って俺を眺めている。
他のみんなも同じだ。
「さぁ、俺に従うか? 従わないか? 従うなら最強の力を、従わないなら元の生活に戻してやる。」
今、ダンジョンの能力【幻想城】は解除してある。
連れてきて突然囚われるのはマズいからな。
「私は、貴方に全てを捧げるわ。だから、私の力を引き出して。」
「私も、お願い、しま、す。」
「よろしく。」
「俺も頼むぜ。俺は、アンタの魔王の剣になってやる。」
「(バンッ!)俺も頼みま!!! 本当に! 感謝します!!」
突然入ってきたソリッドも承諾し、全員の承諾を得たので城と街の説明をした。
そして、ダンジョンを再び稼働させる。
「さて、ここからは裏切ればお前達はこの城に囚われるだろう。」
その言葉に全員が頷く。
それは、恐怖からではなく、この場の安全性からの承諾を意味している。
「じゃあ、聞くが、どれくらい強くなりたい?」
「勇者を圧倒できる力がほしい。」
「お前なら余裕だな。」
エイラは予想通りの答えである。
他も予想通りだと思うがな。
「勇者から、お姉ちゃんを、奪い返せる力、が、ほしい、です」
「任せろ。」
アンネは優しいな。
まぁ、それが良いところでもあるか。
「魅了できる力がほしいです!」
「無理だな。」
ソリッドくんは、まぁ、そうですよね。
先ほど家族と再開したソリッドくんだが、「村に帰ろう!」と言ったソリッドくんに対して家族全員が「一人で帰れ。お兄ちゃんキモい」と言ったのだ。
しかし、ソリッドくんそれは無理だよ。
「ソリッド、良く考えろ。お前、魅了の能力なんてねぇだろ? 俺は、お前らを望む強さまで育ててやるだけで力を与えれる神じゃねぇから。」
「じゃあ、最強にしてくれ。」
「じゃあって・・・・・まぁいいや。」
ソリッドくんは、俺の予想だと「家族が無事だったから力は要りません」とか言うと思ったのに全然違った。
超絶ファミコンだった。
ファミコン、いわゆる、ファミリーコンプレックスですね。
まぁ、ソリッドくんはおいといて次です、次。
「俺は、全てを守れる勇者より勇者な力がほしい。」
「あぁ、さっきも言ってたしな。それに、お前にはその力がある。」
アダンテは、確実に勇者を超えるだろう。
それだけの能力を、持っているのだ。
さて、最後はシーラだ。
「何者よりも速く、強い力がほしいです」
「了解した。お前達の望みを叶えてやる。」
さて、ここからは他の奴に任せるとしよう。
「【魔物創造】戦龍女。エイラを頼む」
「了解しました、創造主よ。」
応接間で魔物を創造し、5人専属の指導者を創っていく。
重装備した龍人の女はエイラを連れて部屋を出ていく。
俺の創った奴等は俺と記憶を共有するため城についてもかなり詳しい。
「【魔物創造】強奪者。お前はアンネをよろしくな。」
「任せろ。マスターの心すら盗める女に仕上げてやるよ。」
スティーラーは男だが、節度をしっかり守るキャラで創造したのでアンネも難無く対応できるだろう。
「【魔物創造】最強。ソリッドを頼む。」
「ええ、最強に恥じぬ者にしてみせます。」
ジ・エンドはそのまま最強である。
コイツに勝てるのは創造主たる俺だけだろうな。
「【魔物創造】絶対不可侵。アダンテを頼む。」
「任せてくれ。」
アブソリュートゼロはアダンテと少し話したあと、部屋を出ていく。
最後はシーラの指導者である。
「【魔物創造】瞬神雷王。よし、シーラを頼む。」
「分かりました。行きましょうか。」
ライトニングも一緒に出ていき、応接間で一人になる。
これで四天王の完成だ。
四天王を統括するのはソリッドくんかな?
まぁ、5人ともこの城にある時の部屋に入っているはずだ。
向こうで一日が1年なので、想定通りなら5日、20歳になって戻ってくるはずだ。
会うのが楽しみである。
「さて、勇者を探しとくか。」
「キラト様は優しいですね? 彼女達のために目的の勇者を探すなんて。」「ホントよね。というか、本当に魔王なのか怪しいわよ。」
〈凄い言われようですね、マスター。〉
一人になった部屋にトラナとレイラが、入ってきた。
「暇なのか?」
「今は暇ですね。」
「暇よ。私にも指導者出してくれればいいのに。」
指導しても既にレベル100超えてるレイラではせいぜいレベル600が限界。
それを育てる気は無い。
それに対して、俺の選んできた奴らは最低でもレベル900は確定だ。
「まぁ、諦めろ。分かってんだろ?」
「ふんっ、わかってますよーだ。」
拗ねるレイラだが、いつものことだ。
「俺は勇者を探す前に魔力が回復するまで寝る。」
「後のことはお任せ下さい。ご褒美、忘れないでくださいね。」
「私も仕事しよーっと。」
二人は散っていき、俺は自室で横になる。
今回魔物達には一人1,000,000,000,000MPを使用したので流石に疲れた。
残り2,777,777,777,777で、身体の中の塊がごっそり消えて気分が悪い。
慣れれるようにこれからは魔力を限界まで使うようにしなければな。
「【魔物創造】監視者。世界中の勇者と勇者に匹敵する者を探し、監視しろ。そして、奴隷を無理矢理犯そうとしてたりしたら止めろ。ただし、絶対に殺すな。殺すのは俺達の役目じゃないからな。」
「イェス、マイクリエイター」
俺の残り魔力全てを使用してモニタを、創り出した。
これで、今以上に悲しむ者がでなければいいがな。
勇者が悪なら殲滅する他ない。
「おや、すみ・・・・」
〈はい、おやすみなさい、マスター。〉
勇者殲滅開始まで残り僅か。
今のうちに自分達の行いに後悔することだ。
俺は直ぐに意識を手放した。
エイラ LV15 魔王剣士 人族 神聖剣術 神邪剣術
アンネ LV14 盗賊 エルフ族 強奪 影魔法 短剣術
ソリッド LV15 全職 人族 魔法 武術
アダンテ LV20 盾役 人族 防御魔法 盾術 仙術
シーラ LV15 魔拳闘士 獣魔族 武術 雷魔法 瞬神化
全員、スキルレベル1
第一章 仲間探しの旅 完
次回 第二章 勇者召喚