第8話:波乱のクリスマスイブ〜後編〜
「だ、ダメよ!」
凍りつく場。
俺は現状がちょっと理解できなくて硬直してしまった。
だってそうだろう? あのヤコ大好きっ子のネコが、だ。
ヤコの欲しいものをやらないなんて!
しかも、たかがケーキ一個。
俺には到底信じられないっての。
ネコが大事そうに、しっかりと抱きしめているケーキ。
そのケーキを見ながら今にも泣き出しそうなヤコ。
「だ、だって……これは…私クリスマスにはカイトと会えないし……」
ヤコはその言葉を聞いて不思議そうに首を傾げる。
しかし、俺は溜め息とともに状況を理解した。
クリスマスは親睦を深める大事なイベントだ。
当然ながら俺達ブラックローズや聖獣仮面達もご多分に漏れず仲間達とクリスマス会を楽しむ。
しかしこれまた当然敵対するこの二つの団体が仲良くクリスマスを過ごすわけがない。
そこでネコはクリスマスにゾンガイガーのケーキを食べることで俺と一緒に過ごしてる気分を味わっていたわけだ。
故に――
「だ、ダメ……これだけは譲れないわ!」
「ネコちゃんは要らないんでしょ? 何で意地悪するの……?」
「や、やっぱり必要になったの! 急にゾンガイガーのケーキを食べたくなったのよ!」
と、こうなるわけだ。
まぁ、嬉しいような下らないような理由ではあるが、このままでは悪の騎士ブラックナイトが――涙ながらに――大暴れという大惨事になりかねない。
そんな事になれば被害は――特に俺の被害は――甚大だろう。俺はなんとか止めたいのだが――
「な、泣いてもこれだけはダメなの!」
「う……うぅ……」
――と、既にどちらも涙を瞳一杯に浮かべて一触即発の状況だ。
下手に触れればダブルで爆発しかねない。
まぁ、普通に考えてあのケーキはネコが買ったんだから、あれはネコのものだ。
ならば我が儘な小さなお姫様を宥めるしかあるまい。
俺は全力で史上最強の敵にジャブを繰り出す!
「な、なぁヤコ、他のケーキ買ってやるから今回は我慢しよ? な?」
「やだもん!」
相手は常に全力、ジャブに対して強力なストレートを打ち出してきた。
しかし、俺も町の平和――主に俺の平和――を背負っているのだ。ここで怯むわけにはいない!
「じゃあ今年のクリスマスはケーキなしだぞ!」
と、強めのフックを打ち出す俺。しかし――
「おにぃちゃ、ック、ん……ヤコが、えぐぅ……嫌いなんだぁ!」
と、カウンターパンチをクリーンヒットで食らってしまう。
ヤコの大きな瞳からポロリポロリと零れる必殺のストレート。
今のうちに言っておく。
俺はもうボロボロだったのだ。
ノックアウト寸前。もはや正常な判断なんてできない状態だったんだ!
だから――
「わ、わかった……なら、ケーキを我慢すればデートしてやる……」
――とか言ってしまったんだぁ!
しまったと思ったね。
これはネコに聞かせるのはまずかった。
しかし、時既に遅く、ピタリと泣き止んだヤコとぽかーんと固まるネコ。
時が凍る。
無限に続くかと思えた沈黙を破ったのはヤコだった。
「わかった! なら我慢するね。じゃあ帰ろ!」
なんとかネコに言い訳しようとする俺をご機嫌で引きずっていくヤコ。
ネコに伸ばした俺の手は、無情にも空を泳いだのだった。
その夜のパーティで、俺が始終俯いて頭を抑えていたことは言うまでもない。
お久しぶりでございますw
ひるこですw
最近口内炎が舌にできて食事が大変痛いです(それでも食べますけどね!)
さて、前回前編を書いて勝手に落胆していた私ですが、励ましや応援などをいただき、続きを楽しみにしてくれている人がいるうちは無理矢理でも続けてれたらな、なんて思って書きました。
その結果がこれです。
やはり酷いですねぇ……それでも今の全力は出しました!
ぜひぜひアドバイス、感想いただけると嬉しいですwww
あと先日質問があったのですが、お一人で何度も感想を書いて下さっても構いません――と、いうか歓迎です!
新話投稿の度に感想をいただけたりすると、とてもやる気が出てきます!
ですので厳しい意見やアドバイスなどなど色々あると思いますが、心おきなく言ってくだされば、と思いますwww
話の流れ的に次はヤコとのデートかな?
まぁ、その辺はどうなるかは分かりませんが、次があったらまた読んでくださいませwww
ではでは、またの出会いを信じてシーユーアゲイン!