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第6話:お熱の時は側にいて

ピピッ……ピピッ……ピピッ……


「う〜ん、やっぱり熱があるな」


小さなモニターに表示された数字は“37.5”。

ベッドでうんうんと可愛らしくうなるのは、ブラックローズで一番の頑張り屋さん。

昨日のティッシュ配り――ブラックローズの隊員募集の――は結構遅くまでやってたもんなぁ。


「今日はゆっくり寝てるんだぞ? 学校が休みで良かったなぁ」


今日は祝日で学校は休みだ――ネコは生徒会の仕事があるとかで、ヤコを気にかけながらも学校へ向かった。

俺は、熱のせいで顔をうっすらと赤くしているヤコを優しく撫でてやった。

ヤコは苦しそうではあったが、目を細めて頷いた。

さてと、とりあえず薬と水枕を取ってきますか。

立ち上がる俺。

しかし、そんな俺の裾を握るしっかと小さな手。


「おにぃちゃ……どこ行くの? どこにも、行っちゃ、やぁ……」


ウルウルと瞳を潤ませて俺を不安げに見つめるヤコ。

俺は苦笑を浮かべて腰を下ろし、もう一度ヤコを撫でてやりながら、「すぐ戻るから」と言って、今度こそ立ち上がった。

今度はヤコも――不安げに揺れる瞳は変わらないが――袖を握ってはいなかった。

部屋を出れば、なるべく早く戻ってやろうと急ぎ足で薬箱と水枕を探しに向かった。

小さな頃から出入りしているヤコの家だ。

薬箱は少し探すとすぐに見つけることができた。

しかし、水枕だけがどうしても見つけることができなかった。

誰かに聞こうにも、ヤコの両親――黒野 元・玲子(げん・れいこ)夫妻――は、悪の組織連合の総会に出席していて、昨夜から留守だ。

かといってヤコに聞くわけにもいくまい。

となると、聞く相手は……あの人だけか。

俺は『月子』と書かれたプレートが下がる部屋の前で、一人立ち竦んでいた。

時刻はまもなく午前11時。

この部屋の主は、おそらくまだ起床してはいまい、そういう人だ。

そして俺は彼女を起こさなくてはならないのだ。

その行為が自殺行為であることは十分理解している、が!

俺はヤコのために、この危険極まりない行為を――


ガチャ


「あらカイト君、いらっしゃい。私に用かしら? 部屋の前でずっと立ってたみたいだけど」


俺がウダウダやっている間に、問題の扉から出てきたキツイ感じの美人。

セクシーな黒い下着を隠そうともせず、俺にニッコリと微笑む彼女が、ヤコの実の姉にしてブラックローズの大将軍・ブラックムーン、黒野 月子(くろの つきこ)さんその人だ。

良かった、起きていてくれたらしい。

因みに、昔、おさる兵がツキコさんを起こしに行ったことがあったのだが……。

謎の悲鳴――おさる兵の――が響き、その後彼の行方を知る者はいないという。

幸い、今日は起きていてくれたので命は助かったようだ。


「きょ、今日はもう起きてたんですね」

「えぇ、今日はお昼から大学に呼ばれているの」


その豊かな胸を前に出し、黒くて艶々とした長い髪を掻き揚げるツキコさん。

俺は目のやり場に困りながらも、その動作にドキッとしてしまう。

ツキコさんは、21歳の大学生で、ヤコの姉とは思えないほどセクシーな人だ。

そんな人の下着姿を見て、赤面してしまうのはしかたないだろう。

顔は火照ったままだが、いつまでもこうしているわけにもいかない。

俺はヤコのために水枕を探さなくてはいけないのだ。


「あ、あのですね。や、ヤコが熱を出していて、水枕を探しているんですが……」

「ヤコが? あらあら、それは大変じゃない。今日は両親もいないのに」

「そうなんですよ。元さんにヤコの事頼まれてたんで来てみたら、熱で苦しそうに唸ってて」

「とりあえず、薬と水枕ね。あら、薬は見つけれたの? じゃあ後は水枕ね。えっと、確か居間の押入れの中だったと思うんだけど……」


ヤコが熱を出したと聞いて表情を変えるツキコさん。

水枕を出すために居間へと向かうツキコさんについていく俺。

水枕は押入れの奥に埋まるように仕舞ってあった。

それに水と氷を入れて、タオルで包んでヤコの部屋へと向かう。

ツキコさんは、俺が水枕の準備をしている間に着替えてくれたらしく、ほっとしたような残念なような。


「ヤコ、熱出たんだって? 大丈夫なの?」

「あ、お姉ちゃ……うん、大丈夫、だよ」


熱っぽい声で答えつつ、起き上がって見せようとするヤコの額を、ペシッと叩く俺。


「コラッ。大丈夫じゃないだろうが、37度5分もあるってのに」

「あぅっ。ご、ごめんなさい……」

「そうよ、無理はしないで、今日は一日安静にしてなさい!」

「うぅ……はぁい」


ショボンとしながらも頷くヤコを撫でてから、俺に目をやるツキコさん。


「じゃあカイト君、私はさっきも言ったけど大学に行かなくちゃいけないの。悪いんだけど、ヤコのことお願いね?」


ツキコさんは申し訳なさそうに俺にヤコの事を頼んで、大学へと向かった。

さて、これでヤコと二人きりになったわけだが。

看病って何をしてやれば良いんだろうか?

あ、タオルを水で濡らしておでこに乗せてやろう!


「ヤコ、今濡れタオル取ってきてやるな」

「やぁ……待って…」


再現される光景。

ヤコの小さな手がしっかと俺の裾を掴んでいる。


「タオル……いらないから…ヤコの側、いて……?」


だから……そんな目で見つめられたら、断るなんてできないだろうが。

結局座り直して、ヤコの頭を撫でてる俺。

ヤコは俺がどこかに行くのではと、まだ不安なのか目を閉じることもせず、今度は俺の袖をキュッと握っている。

そんなヤコを見て、俺はくすくすと笑いながら、優しく囁く。


「大丈夫、どこにも行かないから。安心して寝てろ」

「……ホント?」

「ホントホント。どうしても不安なら俺がヤコの手を握っててやるから、な?」


俺はそう言って、袖を掴んでいたヤコの可愛らしい手をやんわりと握ってやった。

ヤコの手はとても熱かった。

ギュッと握り返される手。

ヤコはやっと安心したのか、目をゆっくりと伏せて、コクリと一つ頷いた。

それからヤコが寝るまで俺は、空いている方の手で優しく頭を撫で続けていた。

ヤコが寝息を溢し始めるまで、さほど時間は掛からなかった。


「さてと。おかゆでも作ってくるか」


三度繰り返される光景。

ヤコは、寝ているのにも関わらず、俺の手を離そうとしなかった。

俺は一食くらい抜くのは構わないけど、何も食べないのは病人には良くないだろう。

仕方ないので、ヤコの指を一本一本外していく。

しかし、最後の一本のところで、改めてギュッと握られてしまう。

俺は苦笑を浮かべて、もう一度指を外し始め、今度は全部外す事ができた。

ヤコを起こさないように、そっと部屋を出て台所に向かう。


コトコトコト


小さな土鍋を火にかける。

一応俺にだってお粥くらい作れるんだぞ、と言いたいところだが、どうやらツキコさんが出る前に用意していってくれたのだろう。

台所には、後は温めるだけで食べれる状態のお粥が、この土鍋に入れられて置かれていた。

俺はそれを火にかけているだけだったりする。

あ、念のため言っておくが、本当は俺だってお粥くらいは作れるぞ?

まぁ、そこまで上手いとは言えないけどな。

さて、そろそろ出来上がりかな?

土鍋の蓋を開けて中の様子を見ようとした瞬間――


ドンッ


――という衝撃が走る。

幸いまだ触れていなかったので、お粥に被害はないし、ギリギリで火傷もしなかった。

さてさて、そんな危険な真似をした犯人はというと……俺の腰にギュッと抱き付いていた。


「ヤコ、こんな事したら危な――」

「おにぃちゃ……っく、どこにも行かないって、ゆったぁ……」

「――い、だろ……いや、確かに俺が悪かったな。どこにも行かないって言ったもんな」

「……っく…行かないっ、ゆったのに……起きたら…おにぃちゃっ、ずずっ……いなくて」

「わかったわかった、お粥を作ったらすぐ戻るから。だから泣かないで部屋に戻ってろって、な?」

「ひっく……やだもん…ヤコ離さないもん」


いつになく我が儘なヤコ姫。

逃がさないと言わんばかりにぎゅ〜っと抱きつくヤコ。

俺は何度も説得したんだが……。

結局溜息をつきながらも、動きにくいのを我慢してお粥を完成させ、なんとかヤコの部屋へと戻ったのだった。

その後俺は、部屋に戻っても機嫌の直らないヤコ姫のご要望で、ふーふー&あーんのコンボをさせられる羽目になった。

そんな看護の甲斐あってか、ヤコは夜には大分回復していた。


「おにいちゃん、今日はありがと!」

「まったく、我が儘姫にはホントに手こずったぞ?」

「えへへ、ごめんね? その代わり、おにいちゃんがお風邪の時はヤコが看病してあげるね!」


これだけ元気なら、今夜一晩眠れば明日には元気一杯のヤコが見れるだろう。

俺はどこかほっとして、ヤコの言葉に頷くのだった。


「ただいま〜! ヤコ〜、体調はど〜お〜?」

「戻ったぞ〜! ヤコ〜! 熱を出したと聞いたが大丈夫なのか!?」

「ただいま、ってあら、あなた〜……お靴を脱ぐの忘れてますよ〜?」

「ヤコ! 遅くなってゴメンね! お見舞いに来たわよ?」


と、今のは上から順に、ツキコさん、元さん、玲子さん、ネコの声。

どうやら皆一気に帰って――若干一名は別だが――来たらしい。

そんな声を聞いた俺とヤコは顔を合わせて、なんとなく笑っていたのだった。

ど〜も、昨日、念願のアクセスランキング3位になってて今にも躍り出しそうなひるこです^^


おかげさまで、3位になってました!

まあ、一日だけでしたが……(笑)

読んで下さった方々。

本当にありがとうございました!


さて、今回の話ですが……初のセクシーキャラを登場させたにも関わらず、ヤコ!ヤコ!!ヤコ!!!でした(笑)

ヤコはホント可愛いですwww

……と、書いてきたひるこですが。

そろそろ、ネタが切れそうです(T_T)

このままでは連載がぁ;;;


と、いうことで、ネタ・リクエストを募集しますwww

ヤコ・ネコ・カイトにこんな事させたい、こんなイベントが欲しい等ございましたら、是非是非そのアイディアをくださいませwww

可能な限り実現していきたいと思いますのでwwwww


なお、ネタ・リクエスト等は、作者ページのメッセージか評価・感想のところにお願いしますw


読者様に頼るという反則技(?)を使おうとしているひるこですが、今後も見捨てずに、応援よろしくお願いいたしますw


それでは、次の話も読んで頂けると信じて

しーゆーあげいんw

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