第5話:作戦日〜冬でも怪談編〜
今日はブラックローズの活動日だ。
活動日は基本的に決まっているわけではない。
その日の総帥・ブラックゲン大帝の気分と運で、その日の活動の有無が決めらるのだ。
一応、ブラックゲン大帝は、聖獣仮面達に活動日を予測させないためで、複雑な規則性に則って決められていると言っているが。
俺は、鉛筆を転がして活動の有無を決めているブラックゲン大帝を見たことがあるから、まず間違いはないだろう。
まぁ、ヤコが“複雑な規則性に則って”という文句に憧れを覚えているらしく――
「今日は活動日だ。皆、頑張るように!」
「了解であります!ふくざつなきそくせいにのっとって、今日は活動日なのですね!」
「そうだぞ、ブラックナイト。決してコインの表裏で決めたわけではない!」
――なんてやり取りを、ちょくちょくしている。
と、まぁ、そんなこんなで、今俺たちは、車で――ドライバーは、なんとおさる兵(免許持ち)だ――怪談を流しながら、街を走っている。
これぞ名付けて、『冬に怖い話で寒〜くしちゃうぞ大作戦』だ!
……いや、これはヤコが発案したのであって、断じて俺のセンスではない事を言っておく。
さて、その当のヤコ……もといブラックナイトは、今、耳を両手で塞いで車の後ろで小さくなって震えている。
今にも泣きそうなブラックナイトに、周りのおさる兵達がおろおろしちゃってるし。
怖がりなんだから、こんな作戦立てなきゃいいのに。
俺はそんなヤコの代わりに、怖い話を音読中。
「そこで、A子さんは、男子トイレのタロ子さんと目を――」
因みに、あまり遅く走ると世間様のご迷惑になるので、最低限の速度は維持している。
そのため、当然ながら話を一話全部聞いてる人は、そうそう居ないということになる。
ハッキリと無駄だろう。
しかし、それでもお仕事なんだから、と、キチンと仕事をこなす俺。
まぁ、これならレオガイガーも来ないだろうし、良いっちゃ良いんだけど……。
なんて、油断していた俺が悪かった。
ガッシャーン
「――っ!?」
衝撃と共に、破壊音が聞こえる。
それと同時にスピーカーが反応しなくなったから、おそらくスピーカーが壊されたのだろう。
犯人はわかっている。
今、止まっている車の目の前に立って、こっちを睨んでいるレオガイガー。
まぁ、普通に考えて、明らかにこいつだよな。
「こ、怖い話をこんな街中でするなんて……ゆ、許さないんだから!」
あ、そういやネコも苦手だっけ、こういうの。
三人でお泊り会の時も、怪談は二人に即却下されたんだった。
「よ、夜におトイレに行けなくするつもりなんでしょ!? そうはさせないわ!」
いや、違いますよ。
っていうか、なんで聞こえてたんだろ?
一箇所には留まってなかったと思うんだけど……。
「ブラックローズの車を見たから追ってみれば……こ、こんなことするなんて!」
なるほど、わざわざつけていたせいで、全部聞いちゃったんだ。
ドジな奴だ。
まぁ、求めていた効果とは違うけど、少なくとも一人は聞いてくれたんだから、あの音読は無駄ではなかった……のかな?
俺は車から普通に降りた。
それについてくるように、ブラックナイトやおさる兵達も颯爽と降りてくる。
そしていつもの“お決まり”を始める。
本来はブラックナイトがやるべきなんだろうけど、なんかまだ震えてるし、今日は代わりに俺がやることにする。
「おのれレオガイガー! 邪魔はさせんぞ! 行け、おさる兵達!」
ウキーウキーという声と共におさる兵達――車の乗車可能人数の都合で5名(匹?)のみ――がレオガイガーに襲い掛かる!
1・2・3――ま、頑張った方だよな。
普段はもっと大勢でもやられてるのに、5名だけだもんなぁ。
俺はおさる兵達の屍――実際に死んだわけではないが――を見ながら、一人頷いていた。
しかし、当然ながらブラックナイトは大ショックの様子。
「おさる兵さん達が……おさる兵さん達がぁ! ひっく……っく…う、うぇ〜〜〜ん!」
あ〜あ、泣いちゃったよ。
俺は仕方ないので悪役代表を続行する。
「お、おのれぇ。こうなったら、最後の手段だ!」
そう言って、俺は車に駆け込んで、ただ一人残っていたドライバーのおさる兵の口にバナナを突っ込む。
いきなりブオンブオンとエンジンをふかし始めたおさる兵。
説明しよう。
おさる兵はバナナを食べるとやる気がグ〜〜〜ンと上がるのだ。
「行け! 魔運転(マウンテン)おさる兵!!」
ま、ただの張り切ってるおさる兵なんだけどね。
レオガイガーに、勢い良く突っ込む魔運転おさる兵。
そして、計っていたかのような、ナイスなタイミングで響く二つの声。
「待たせたな! 聖獣仮面ウルガイガー、参上!」
「同じく、ドラガイガー、推参!」
登場した二人の聖獣仮面。
これで聖獣仮面が勢揃いか。
俺は腕時計をチラリと見る。
そろそろ時間も良い頃だ。
俺の背中もブラックナイトの涙やら鼻水やらでグッショリだし……。
さっきから、ずっと抱きついたまま泣いてたからなぁ。
「ええい、構わん! やってしまえ、魔運転おさる兵!!」
「そうはさせないわ! 二人とも、ガイガーシュートよ!」
「「おうっ!」」
どこから取り出したのか、三人はそれぞれ武器を出し、それらが合体して、一つの大きな銃になった。
そんな三人に突っ込む魔運転おさる兵。
あ、因みに、さっきまでのシーンで攻撃しちゃダメってのいうは暗黙の了解だ。
魔運転おさる兵も、ちゃんと車を止めて待っていたようだ。
そんな、心優しいフェアな魔運転おさる兵に、無情にも向けられる砲門。
「「「ガイガーシューーート!!!」」」
ドッカーーーン
木端微塵に吹き飛んだ車。
キラリと星になった――実際にどうなったのかは企業秘密だ――魔運転おさる兵。
「おのれぇ……覚えているがいい、聖獣仮面達よ!!!」
最後に思いっきり大きな声で終わりを宣言して、と。
魔運転おさる兵の最期に、さらに泣いてしまったブラックナイトを抱えて、俺は全力で走って逃げた。
聖獣仮面は追って来ない。
何故なら――
「「「平和を乱す奴らは私達が許さない!」」」
――なんて、決めポーズをして、いつの間にか集まった野次馬達へのファンサービスに大忙しだからだ。
毎度の事ながら、ホントご苦労様。
その夜――。
ピンポーン
あぁ、来た来た。俺は苦笑を浮かべながら玄関へと向かう。
ドアを開けてやれば、そこには予想通りの顔があった。
「え、えっと。今日は泊ってもいい……?」
恥ずかしそうに、ちょっと頬を染めながら尋ねてくるネコ。
俺は、なるべく優しく笑って、一つ頷いてからネコを迎え入れた。
それと同時にドタドタと、リビングの方から走ってくる先客の足音が聞こえてくる。
「あ、ネコちゃん! ネコちゃんもお泊りなの?」
「え、えぇ。た、たまには良いかと思って。ヤコもなの?」
「うん……今日ね、怖い話を聞いたから怖くって」
二人とも、昔から怖い話を聞いた夜は、何故かうちに泊りに来てたんだよなぁ。
その夜は、久々に三人で布団を並べて敷いて寝たのだが。
「これじゃ、川の字っていうより、どっちかと言うと『小』の字の方が近い気がする……」
俺の両腕を、それぞれ抱き込むように丸まって眠る二人を見て、俺はこっそり溜息をついたのだった。
どーも、ひるこです^^
ツンデレ小説を書いていて、こちらのupがおそくなりました^^;
唐突ですが、アクセス数が凄いですw
PVアクセスでは一日1000を超え、ユニークアクセスでも700を超えました!
目指せ、明日のアクセスランキングベスト5!(注:評価ランキングとは別物です)
さて、感動も伝えさせて頂きましたので、本題です。
今回は戦隊らしく闘っていただきました!(拍手)
でも、なんだろ……不満?
だって……ヤコとか、ネコとか、ヤコとかの可愛らしさが、今回はあまり出せなかったし……。
あぁ、理想があるのにそれを表現するだけの実力がない悲しさ;;;;
と、いうことで、クリスマスプレゼントには文才が欲しい、ひるこでしたw
それではまた次のお話を読んでくださると信じて
しーゆーあげいん!