第1話:日常〜ランチ編〜
キーンコーンカーンコーン
古びた校舎だが、中高一貫で、サイズだけはバカデカイ、千隊学園(せんたいがくえん)。
昼休みの始まりのチャイムが校内に響く。
高校棟二年二組。教室内の空気が一気に弛んで、授業が終えられた。
ここから、学食・購買組は決戦の時を迎える。
駆けだす生徒達。もちろん、弁当なんて作ってくれる彼女もいない俺は、その先頭を走っている。
続々と各教室から歴戦の勇者達が参戦してくるが、ゾンガイガーとしての超人的な身体能力を駆使する俺に叶う者がある筈もなく、見事俺はいつものようにトップを維持したまま購買へと到着した。
「おばちゃん!カツサンドとやきそばパンとセンタイデラックス!!」
一番乗りを果した俺が頼んだのは購買人気パン上位3つだ。
中でもセンタイデラックスは一日三つ限りの超レアな代物で、なんとパンの間に挟まっているのは高級松坂牛のサイコロステーキ。
そりゃもう大人気で、この学園に通い始めてからまだ数回しか食べた事のないほど競争率が高い。
え、いつもトップで来ているのに買えないのかって?
そう、買えないのだ。その理由は――
「あら、ごめんねぇ。今日はデラックスパンは生徒会が予約してるのよねぇ。」
皆さんにも、もうお分かり頂けただろう。
そう、本来予約は受け付けないこの購買も、生徒会限定で予約を許可しているのだ。
俺は仕方なくコロッケパンに注文を変えて、ガックリと項垂れながら、もみくちゃの生徒たちを掻き分けて購買部を後にした。
自販機でコーヒー牛乳を買おうと立ち止まった時、すれ違った女一人男二人の三人組。
彼らこそがこの千隊学園の最高権力者集団、千隊学園高等部生徒会にして、正義のヒーロー聖獣仮面三人集なのだ。
会長兼レオガイガーのネコ。副会長兼ドラガイガーの安東 龍也(あんどう たつや)。書記兼ウルガイガーの秋田 健二(あきた けんじ)。
そう、彼らはその正体を明らかにして、特別扱いをうけているのだよ。
そりゃ皆の平和を守るあいつらは、もうチヤホヤされ放題。
そんなこんなで、購買でも特権階級なあいつらは、殺気立つ一般生徒を尻目に、待っていた別のおばちゃんからセンタイデラックスを買っていた。
悪役である俺は、当然ながら正体を明かす訳にもいかず――というか明かしても逆に虐げられるだけだろうが――さらにションボリと屋上へ向かうのだった。
「あ、カイト……良かったら一緒に…」
「ほら、会長。さっさと生徒会室に戻りますよ」
「何つったってんだ、早く戻ろうぜ〜」
「ぇ、でも私はカイトと……」
ん?なんか声が聞こえた気がしたんだけど……気のせいだよな。
ガチャ、ギー……バタン
と、いうことで屋上に到着。さて、11月も終わりなこの時期に、屋根のないこの屋上で、身を震わせながら飯を食うのには、もちろん理由がある。
ガチャ
「おにぃ〜ちゃ〜〜ん!!」
ギー……ボスッ、バタン
因みに今のボスッて音は、ヤコが俺の鳩尾に愛のタックルを決めた音だ……ぐはっ。
もはや泡を吹いて倒れそうな俺に、シッカと抱き付きハイテンションな悪の将軍。
そう、彼女がその理由である。
「ぐ……だ、だから、タックルは止めろと…いつも……」
「さ、今日も悪の作戦会議だよ〜!」
完全に俺を無視して弁当を広げるヤコ。まぁ、いつもの事だ。気にしてもしょうがない。
さて、俺達が誰も居ない屋上で飯を食う理由。
それがこの“悪の作戦会議”という名の、ヤコとのランチである。
悪の、というからには人目につく場所ではダメだ、ということで屋上なわけだが。
片や暖房、テレビ、マッサージ機に、はてはプリステ4――プリステ4は間違っていると思うのだが――まで完備の生徒会室で、優雅にランチの聖獣仮面。
それにくらべて、ふきっさらしの屋上で、ガタガタ震えながらランチのブラックローズ。
うぅ、泣きたくなるぜ。
しかし、それでも満面の笑みを浮かべて俺のあぐらの上――なんでも少しでも温かくなるためらしい――にすっぽりおさまって、小さな可愛いお弁当箱をつっつきながら、一生懸命悪だくみ――と、言ってもささやかなものばかりなのだが――をするヤコを見ると、ついつい頬が緩むから不思議だ。
「それでねぇ、ヤコは今度はおさる兵達でラジオ体操を――」
いつも一生懸命なヤコは楽しそうに次の作戦を立てている。
どれどれ、俺も頑張りましょうかね。
「いや、それよりもエムエイチケーのおばあちゃんと一緒をだな――」
こうして今日も平和な悪の作戦会議が続くのだった。
ど〜も、第1話を読んで頂き感謝感謝ですwww
まずは日常のワンシーン――特にヤコちゃんとの――を書きたくって書いちゃいました(コラコラ)
でも、なんだか当初の目的から外れてヤコちゃんの出番が少なめになってしまいました(ションボリ)
次回こそはと心に決めて
第2話も読んでいただけると信じて、アディオスw