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恐怖の女体化劇場

ストーカーの末路

作者: 真城 悠

 とあるストーカー男は不思議な反撃に遭い、過酷な運命に見舞われる。

 その過酷な運命とは…?

 どうせ信じてもらえないだろうが、告白しよう。俺の身の上に起こった恐ろしい“呪い”についてだ。


 はっきり言うが俺はストーカーだった。


 バイト先の女の子が余りにも可愛くてシフトが同じになる度に声を掛けていたら、その子から店長に苦情が入ってクビになった。


 むかついた俺はその日から彼女を付け回した。


 すると生意気にも男と付き合ってやがる。


 嫌がらせ電話みたいな証拠の残ることはせず、ひたすら付け回すだけ。音のしないカメラを入手して盗撮にも励んだ。


 ところが、ある日彼女はそれに気が付いたらしく、反撃してきた。


 当然俺は逆切れして彼女に暴力を振るおうとした。


 あっちだって黙って殴られている訳じゃない。素早く身をかわして逃げた。


 だが、実家も割れているので張り込むことを忘れなかった。


 どうやら彼女は警察に相談もしているみたいだったが、警察は実害も出ていないストーカー事件は全く取り合ってくれないらしい。俺らの天国だな。


 しかし、ある時彼女は妙な「仲間」を連れてきた。


 相手のもやしみたいな男ではない。小学校低学年くらいの幼女だ。


 こちとらロリコンじゃないのでそんなガキには興味が無い。


 だが、三人で対峙した時、そのガキがココロとカラダがどうこう言いやがる。


 訳が分からないので、何を言ってるのか分からなかったが、次の瞬間、俺の身に恐ろしいことが起こった!


 俺は飛んで帰るとそのまま閉じこもる羽目になっちまった。



 性犯罪者ってのは断トツに再犯率が高い。そしてその割には逮捕されても十年もくらいこむ重罪にはならない。結果野放しになるし、逆恨みから報復されることも多い。


 ましてや俺みたいに明確な違法行為が全くないストーカーとなるとお手上げ…のはずだった。


 ここからは信じられないだろうが、実際にそうなんだから仕方がない。



 俺は、あのガキに何か言われた直後…何ということかスカートを履いていた。


 何を言っているのか分からないと思うが、実際の事だ。


 動こうとすると脚が妙に涼しい。ふわふわしたものがまとわり付く。


 何だこれは?と思って見下ろしてみると…スカートだった。俺はスカートを履いていたんだ!


 全く訳が分からない。


 だが、間違いない。


 靴下も履いているし、靴もがっしり履いているのにその上がいきなりパンツ一丁みたいなことになってるから感触が不安定なことこの上ない。第一寒い。


 そうだ…あの時も彼女がつかつか歩み寄ってきて、思いっきりめくりやがったんだ!


 俺はブリーフ派だから、真っ白なパンツが見える格好になった。


 …情けない話だが、俺は一目散に逃げ出した。


 その時は幸い夜も遅かったし、歩いて行ける距離だったから無事に自分のアパートに帰りつけた。


 だが、あんなに長々とスカートで歩いたことなんてないからもう何がなにやら…。



 しかし、これは地獄の入り口にすぎなかった。


 帰り着いた俺はさっさとスカートを剥ぎ取った。


 スカートって背中側でホックとファスナーを止めるんだな。知らなかった。


 ともかく、適当にその辺にあるジーンズに脚を突っ込んだんだ。


 ホッとする間もありゃしねえ。


 気が付くとまた両脚が直接“するっ”とか触れやがる。


 思わず『ギャーッ!』って言っちまったぜ。


 そうなんだ。ジーンズがたちまちデニム地のスカートに変形していやがるんだ。


 もう予想が付いたと思うが、家にあったどんなズボンを履いても履いても、すぐにスカートに変形しちまうのさ。


 さっきのジーンズがデニム地のスカートになったみたいな統一感はまるでなくて、チェック柄のプリーツスカートになったり、おばさんくせえウェストゴムのスカートになったかと思うと、膝丈で格好いいリクルートスーツに付属してるタイトスカートになったりもする。


 このままじゃ家中のズボンが全部スカート…女物になっちまう。


 仕方がないので強硬手段に出た。


 と言っても簡単だ。パンツ一丁でTシャツだけになったのさ。


 ズボン履いてなきゃズボンがスカートに変形することもあるまい。


 …だが、それは甘い予想だった。


 Tシャツは凄い勢いでぐんぐん下に向かって伸び続け、なんつーかふわっと広がったお嬢様みたいなワンピースになりやがったんだ!!!


 もう駄目だった。


 俺は何がどうなっても“絶対に”スカートを履き続けさせられる運命になっちまったんだ。


 ワンピースには流石に参った。


 絶望のあまり鏡の前に行ったら…まあ、普通に男の俺がいるんだけど、さっきまではズボンだけだった変身がTシャツ全体を巻き込んだせいか、上半身部分まできっちり変わってるんだよ。俺は女の服に詳しくないんだけど、いかにもお嬢様な胸のゆったりしたふくらみの生地とか、肩が丸く膨らんでたりとか。


 当然だけど、ワンピースってどうやって脱いでいいか全然分からなくてよ。


 背中のファスナーを下げてそこから身体を抜くなんてこの時初めて知ったよ。



 俺はふと思った。


 つまりこれはアレだな。来ている服が無理やりスカートになっちまうことで、恥ずかしくて外出できなくして封じ込めようって作戦なんだろう。


 現実離れも過ぎるが、実際そうなっている以上そうとしか思えない。


 だが、そんなんで日常生活が送れるのか?


 俺は頑張ってワンピースを脱ぐと風呂に飛び込んだ。


 偶然保温してあったのさ。



 案の定、全裸で風呂に入っていると何も起こらない。


 そりゃそうだ。変形する元が無いんだから。それに服を脱ぐのが前提の風呂だ。ここでは着せ替え人形の真似事も無しだぜ。


 よせばいいのにいろんなことを考えるもんだから、全身をまんべんなく拭いて風邪をひかない様に気を付けた上で全裸のまま部屋の中を散策した。 


 そこいら中に色とりどり、様々な形状のスカートが脱ぎ散らかされている。まるでおばちゃんがやってるフリーマーケットをひっくりかえしたみたいだ。


 何とかしなくちゃいけない。


 理屈はさっぱり分からんが、俺が身に付けた衣類はどんなものでもスカートになっちまう。ズボンを履かずに放置してもシャツがワンピースに変形するという徹底ぶりだ。


 …なら、全裸ならどうだ?


 しかし、確かにこれなら外出は出来ない。上手く考えたものだ。


 見ると、俺が全裸でいるせいか山積みになっているスカート軍団がもそもそ動き始めている。


 見る間にスカートに変形していく現実を見せられた後じゃあその程度じゃ驚かない。


 それこそこっちに飛びついてきてスカート履かせようって魂胆だろう。


 俺はふと思いついて全裸のままトイレに飛び込んだ。


 ドアの外でじたばた音がするという非常事態だったが、とにかく一糸まとわぬ姿で抵抗を試みる。絶対にスカートなんか履いてやらん!


 逆に言えばスカート状態になっていればそれ以上の問題は起こらないのだ。


 だが、この考えも甘かった。


 そもそもパンツ一丁の状態でもTシャツが変形してワンピースになった時点で悟るべきだったのだ。何をやっても無駄だと。


 下半身に違和感を感じてふと見下ろしてみると、もう脚が真っ白になっていた。


 叫ぶ間もなくその白は這い登ってきて、俺の乳首周辺を覆う。


 まあ、結論から言うと俺はバレリーナの姿になっていた。


 そう、真横にスカートが広がるあれだ。


 あくまでもスカートは外さないという恐ろしさだ。


 しかも、それまではスカートったってブリーフだった。つまり、他は全部男物でズボンだけがスカートに変形した状態だったのに、よりによって全裸だったもんだから、下着から何から全部女物を着せられてしまった。


 あちこちにスカートのふちをがさがさ鳴らしながら情けない気持ちでトイレを出たよ。


 一応義理で鏡を見たけど、オバケのQ太郎みたいなケバケバしいメイクまでさせられてる。


 もうすっかり観念した俺はそこいらの服を適当に見繕い、一番の問題であるスカートもなるべく露出度の低い、長いのを履いてそのまま不貞寝ふてねした。



 翌朝目が覚めてみると、ヘンな匂いがする。


 メイクを落とさないまま寝るもんだから、枕代わりにしてた座布団がえらいことになっていた。勿論、俺の顔もだ。


 当時はメイク落としの知識なんかないから必死に顔を洗った。


 諦めきれない俺は、全裸のまま掛け布団を身体に巻き付け、適当なひもでしばった。


 つまり「スカート形状」ということにしたのだ。


 …まあ、言うまでもなくこれも大失敗。


 たちまちの内に変形を始めた掛け布団はちっとも細くない俺のウェストを絞り上げる様にまとわり付き、下の方は広がったまんま。


 両手を手の甲まで覆うように変形され、頭やら顔にはまた色々と乗りまくった。


 はっきり言うと、俺は純白のウェディングドレス姿になっていた。


 呆れたことに指先には肌色のマニキュアがされ、メイクは勿論、ネックレスにイヤリングなどのアクセサリーまでさせられていた。


 慌てて洗面所の小さな鏡に行こうとしたんだけど、凄い量のスカートでまともに動けない。


 この時点でハイヒールまで履かされ、ストッキングをさせられていることも気が付いた。


 仕方なくあちこちまとめて抱え上げて歩いたんだけど、洗面所の前に台所の鏡に映った自分自身の花嫁姿を見て思わず『はっ!』としちゃったね。


 コルセットを嵌められてたのか、細く引き締まった…様に見えるウェストから広がる滝の様なドレスの美しいこと!


 そうなんだ。下手に足らないところを作ると、そこも埋め合わせてきやがるんだ。


 俺はもう完全に観念した。



 といっても、このウェディングドレスを脱ぐのにはえらく苦労した。はっきり言って一日がかりだったんだ。


 背中のファスナーには手は届かないし、どこからどう身体を引きぬけばいいのかも全く分からない。


 さんざん苦労して脱げても、今度は拘束具同然の下着をどこから外せばいいのかも分からない。


 ヒドい話なんだけど、俺はもうまたその辺のものが勝手に変形するのは嫌だから、ドレスを脱いで下着オンリーになった時点で適当なスカートひっつかんで履いた状態で、めくりあげながら脱ぐ様にした。


 俺は常になんらかのスカートを履いていないと大変なことになるのだ。風呂に入る時以外は。



 そんなこんなで今の引きこもり生活だ。


 勿論、スカート履いてるよ。というかそれ以外は無理だから。


 スカートの下にズボンを履けばいいのかな?とも思ったんだけど、そういうインチキは駄目らしい。ズボンを履いてると必ずストッキングになったりパンティになったりしてしまう。


 女物のズボンを通信販売で取り寄せてみたりするんだけど、履くとすぐにスカートに変形しちゃう。女物ってだけじゃだめで、女物の上にスカート形状でなくてはならず、例え当の女たちがしているスタイルであったとしても、スカートの下にジャージを着こんだり、ズボンを履いたりすると、必ず「純・スカート」っぽいスタイルにされてしまう。


 思い切って男物の恰好いい「メンズスカート」でござい、みたいにモデルっぽく決められそうな露出度の低い巻きスカートみたいなので外出しようとしても、すぐに女子高生みたいなチェックのミニスカートに変形してしまってたちまち「変態さん」っぽくなって飛んで帰ることになる。


 余り回数はやってないが、神出鬼没の女装スカート男として近所で評判になってないか不安すぎる。


 とにかく、お蔭で全く外出できなくなってしまった。


 ひざ下まであるトレンチコートで「中身」を隠しながらなら外出できるんじゃ?…と思って試してみたら、トレンチコートが身体にへばりついて変形を始め、真っ黒な生地でぶわりとドーム状に広がったお姫様みたいな舞踏会ドレスに変形してしまって大失敗。


 あのまま外出していたら、突如出現した金髪巻毛のドレス男として通報されていたかもしれない。危ない危ない。 



 あの女の子は何を狙っていたんだろうか?


 俺の予想だが、俺がストーカーだったせいだろう。


ストーカー


 ↓


スカートー


 ↓


スカート


 なので、「じゃあ、いつもスカート履いてる様にしてあげる!」みたいな感じじゃないかと。


 そんなこんなで流石に俺もスカートの感触に慣れてきた。


 ストッキングなら許されていることもあって冬も寒くないし。


 ここだけの話、一歩も外に出られない生活には変わりないんだけど、インターネットのオークションサイトでスカートを通信販売して生計を立てている。


 え?いいだろ別に。それくらいしか出来ないんだから。


 全裸だと創造するみたいにいろんな恰好させられるから、色々試してるんだけど、絶対にバニーガールとかレースクイーンの格好はさせられないのな。「スカート形状」じゃないから。ホントに徹底してる。


 いたいけな(?)女性も多くは俺が一回履いたスカートを嬉々として購入してることになるが…まあ、いいだろう。格安なんだし。俺だって売り物は大事にするから嫌というほど風呂に入って清潔そのものにしてから着てるから。

 それより、一生外出できない俺に同情してくれよ。


 さて、今日も二束三文で買ったズボン形状のそれを履いて、季節の新作スカートでも作り出しますかね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] さすがの「真城節」ですね。 もう「安定の」という感じで。 面白かったです。 [一言] いっそ女体化してりゃ堂々とスカート姿で外出できたんでしょうけどねぇ(笑) 「あの子」にしては珍しく女体…
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