嵐が来た
嵐が来た。
ポツ
それはほんの小さな一滴だった。
ポツポツ
やがてそれは二滴になった。
ポツポツポツポツポツ……
その水滴は徐々に数を増し、やがて、もう数えるのも億劫なくらいの数になった。
地面に叩きつけるように降り注ぎ、土を抉った。
そのうち風が吹いてきた。
ゴオォと地の底から響くような音が聞こえた。
狙い澄ましたように水滴の矢束が全身をうつ。
まるで何処かの荒法師のように、全てを受け止めるかのように身構えた。
どれくらいそうしていただろうか。
唐突に、嵐は去った。
空は嘘のように晴れ渡った。
気の抜けた顔で雲一つ無い空を見上げ、服が乾くまでずっと、立ち尽くしていたのだ。