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メンコマスター

作者: ひややっこ

棒玉市。

今日も穏やかな風が流れる休日の公園の昼下がり。

ここである事件が起きる。



俺の名前は「鮑栗栖」。

29歳無職童貞独身、彼女いない歴=現年齢。

だが、そんなこたぁどうだっていい。

今が楽しけりゃそれでいいんだい!


今、世間では「メンコマスター」というのが流行っている。

え? 「メンコマスター」が何かって?

それはこのカードのことだ!


このカードを地面へメンコのように叩きつけるように置く!

そうすると、カードに映っているモンスターが立体映像で召喚され、それを戦わせて遊ぶゲームだ!

一体何種類のカードが出回ってるのかは知らんが……フフッ、制作会社もようやるわ!

因みに外で遊ぶ場合はカード裏に傷がつく場合があるから、それを保護するためのプロテクターは必須ぞ!


そして、俺は今日も近所の公園で小学生の友達「モブ」とバトルの真っ最中だ!



「いけ、『備えあれば嬉しい象』の攻撃!」

「うわああああああああああ!!! ……もうクリちゃん強いよ。」

「はーはっはっは! 一昨日来い!」


俺は満面の笑みをモブへ向けた。

因みに「クリちゃん」とは俺のあだ名で、近所の子供達からはこの愛称で呼ばれている。



「フッ、今日も平和だな。」


俺がそう呟くと、何処からともなく悲鳴が聞こえてきた。


「きゃあああああああああああああああ!!!」

「むっ!? この声は……幼女の声では!?」


モブが声のする方へ指をさし「クリちゃん、あそこだよ。」と俺に教えてくれた。


「おっけ! 今すぐにゆく!」





そして、俺は女の子の悲鳴がした場所へ着いた。

とは言っても場所は同じ公園の中で、さっき俺たちがいた位置と然程さほど距離は離れていない。

先程の悲鳴に少しばかりだが人だかりができていた。


「お前達、そこを通してくれ。」


俺は人だかりの中を割って入る。


「むっ!?」


そこには先程の声の持ち主と思われる幼女が尻餅ついて涙を流していた。

そして、その前にはパツキンの女性が立っている。

コイツは確か――「望月まし子」!!

メンコマスターの数々の大会で優勝を収めている上級者だ!

歳的には女子高生ぐらいといったところだろうか……。



「おやおやお嬢さん、この公園に何のようですか?」


俺がそう言うと、望月は答えた。


「フフッ、ただそこの女の子に協力してもらっていただけです。」

「協力……だと……!?」

「ええ、私のカード集めの協力にね。でもダメね、そのカードはもう72枚もダブってるからいらないわ。レアなカードが出たら私に知らせてちょうだい。」


そう告げると、幼女にカードを投げるように返し、その場を立ち去ろうとした。


「待ちな。」


俺の言葉に望月は足を止めた。


「別にお前さんがどこで何しようと知ったこっちゃないがね、俺の辞書の19ページにはこう書いてあるぜ。『幼女を泣かせる奴にロクな奴はいない』ってな。」

「へぇ~。で、どうするの?」

「俺とバトルしろ!」


周りがにわかにざわついた。


「私とバトル? いいわ、身の程を思い知らせてあげる。」


「クリちゃん!! 相手は大会で優勝経験のある上級者だよ! クリちゃんじゃ絶対勝てないよ! どうして女の子のためにここまで!?」

「フッ……。それは俺が『幼女好き』だからだ。」


モブはキョトンとした。


「ま、お前もあと10年すればわかるさ。」


そうモブへ告げ、まし子の方へ俺は向き直った。


「さぁゆくぞ、メス豚ぁ!! 俺のモンスターはコイツだ! 来い『ストレートアント』!」


俺がカードを地面に叩きつけて召喚したモンスターは「ストレートアント」。

2足歩行の蟻がボクシンググローブを付けた3頭身ぐらいのモンスター。

俺の切り札モンスターで1番の相棒さ!



「オーホッホッホ! 『ストレートアント』? そんなノーマル雑魚モンスター、私は69枚所持してるわ! 私のモンスターはこの子よ。来て『雪女』!」


そう高らかに声を上げたメス豚まし子が召喚したモンスターは「雪女」。

黒くて長い髪、白い着物を着用し、真っ白な肌をした綺麗で美しいモンスターだ!



『バトル!!』



「あのモンスターは激レアで一枚数十万円はするカードだ! 気をつけて!」

「おっけ! ストレートアント、『ラッシュ』攻撃だ!」


俺の命令にコクリと頷いたストレートアントが雪女目掛けて無数のパンチを仕掛ける。


「甘い! 雪女、『吹雪』よ!」


次の瞬間、ストレートアントの攻撃を喰らう前に雪女の口から強力な冷気が放たれた。

ストレートアントの攻撃は冷気により無効化され防戦一方。

雪女は尚も冷気をこちらに向かって吐き続け攻撃を止めない!

すでにストレートアントは徐々に体のあちこちが凍り始めている。


ガクガクブルブル……。

こっちまで寒くなってくるぜ!


「俺は……こ……こで死……ぬの……か……?」

「クリちゃん、しっかりして!! これは立体映像だから寒くなって凍え死んだりしないでしょ?!」

「おっと、イッケネ忘れてた! そうだ、このゲームは俺を寒くなんかさせたりしない! 常に俺を熱くさせてくれる画期的なゲームじゃないか! お前もそうだろ、ストレートアント?」


再度ストレートアントは頷き、右腕から炎が巻き起こり始めた。

そして、その炎が徐々に拳の形になり始める。


「な、なにっ?!」

「ストレートアントの攻撃! 『ファイヤーストレート』!!」


ストレートアントが拳の形をした炎の塊を雪女目掛けて飛ばした。


「直接攻撃を当てられないなら遠くから攻撃するだけだ。」


ファイヤーストレートは吹雪をものともせずそのまま直進!

見事雪女にクリーンヒット!!


「きゃあああああああああ!!!」


雪女は少しずつ消え始め、消滅した。



『勝者、鮑栗栖!!』



「キイイイイイイイ!! 覚えてらっしゃい!! この借りはいずれ必ず返すわ!!」


望月はそう告げると逃げるように帰っていった。


「はーはっはっは! 一昨日来い!」


俺は満面の笑みを逃げるように帰る望月の背中へ向けた。


フフッ、まだまだ世界には様々なカードが出回っている。

俺は全てのモンスターを見てみたい……。

そして……世界一のメンコマスター使い目指してこれからも頑張ろう。


俺はいつの間にか傾いていた陽を眺め、そう誓った。



こんな事してる場合じゃない主人公。

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