第四話
妖怪というフレーズで絢は地元にある裏山の洞窟を連想する。
「そう言えばなんで天狗って呼ばれてるんだっけ?」
「道路を破壊するほどのスピード、太い木々をなぎ倒す怪力、電線を切り裂く風。そこから連想してこれは天狗の仕業なんではないかという噂がたってね」
「へぇ。確かに天狗ってそんなイメージかも。後、いかにも怒ってますっていう顔してるよね」
「あはは、それ分かる」
なんでそんなイメージを持っていたのかは自分でもよく分からない。
でも普通に生活していても妖怪について名前や姿くらいは聞いたことがあると思う。
川辺に住む河童、鬼や座敷わらしなどメジャーな妖怪はお話などによく書かれていてそういった点では親しみがある部類だ。
天狗もその例に漏れないと思う。
「でも本当のところどうなんだろうね。怪我した人はまだいないらしいって話だけど、まだ原因はわからないんだよね?」
「らしいね。怪我人の方はいつ出てもおかしくは無いよ。というか今まで居なかったのが奇跡でしょ。原因の方は発見が明け方って言う話だから、夜中に交代制で巡回とかやってるらしいんだけど」
成果は見られない、沙耶ちゃんが言わなくてもそれぐらいは察することが出来た。
最初の発生からは既に1か月は経とうとしている。
長引けば長引くほど人々は不安になって行くだろう。
天狗の仕業説、今はまだ笑い話の類ではあるが、その内それが本当になって行ってしまうのだろうか。
「よっし、こんな辛気臭い話は終わり。早く着替えてきな。どうせ朝から跳ぶ気はないんだろうからちょっと走ろうよ」
確かに朝にする話題ではなかったかもしれない。
陸上部の朝練は基本的に自由参加であり、決まったトレーニングメニューがあるわけでもない。
絢は走高跳を専門にしているが、今日は金縛りのこともありちょっと汗を流したい気分で朝練に来たのだ。
話しこんでしまい忘れてしまっていた。
忘れていたのなら思い出したくないことではあるが、紗耶がいてくれたことで少し心が軽くなった気がする。
「ありがとう」
「ん?なんか言った?」
呟きは紗耶には聞こえていなかった。
しかし、それでよかったと絢は思う。
「ううん。なんでもない」
紗耶に心配など掛けられない。
これは自身の問題。
踏ん切りをつけ、部室に行こうと歩を進めた時、ふと体に異変の異変に気付いた。




