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創生のオラクル  作者: ハルサメ
本編1
38/52

第三十七話

「テスト自体を無かったことにすればいいんだ。そうすれば悩むことが無くなるからな。じゃあテストを無くすにはどうすればいい? 答えは一つ、学校を無かったことにすればいい。学校が破壊されればテストどころじゃないからな」


「えっ、そんないきなり!?」


 絢の驚きに対して、圭は冷静だった。


「言っただろ、目的のためには手段は選ばない奴だと。重要なのはテストをいかに回避するかだ。それ以外は二の次だ」


「奴の思考ならそのくらいの飛躍容易いだろう」


 圭の言葉に琥々が頷いた。学校を壊す、それが目的を達するための最も有効的な手段である。


 テストを行う施設が無くなれば事実上テストは無くなる。だが学校という施設など所詮名前でしかない。紙と鉛筆さえあればテストは再開する。


 ならばそのテストをどう回避するのか?

答えは簡単だった。


 それすら破壊してしまえばいい、なかったことにしてしまえばいい。


 それの繰り返し、テストは永遠に訪れる事が無くなる。圭が言ったことを、絢はそう解釈した。


 ならば、絢は思考を巡らせた。この宿主も学校を破壊しようとしているのだろうか。


 学校に何かしらの恨みを持っているのだろうか。日々学校に近づく被害はその表れである。


 だが、絢の頭に納得がいかないことがあった。


「宿主は学校の何かを嫌っている?」


「中々回転の速い頭じゃないか」


 圭はコップを手首だけ使って回していた。


 どうやら絢の考えがまとまるまで待っていたようだ。


 絢は圭の烏龍茶の量が増えていることに気付いた。


 絢は集中していて圭が足しに行っていたのに気付かなかった。


「そこまで考えられれば上出来だ。んじゃ、今後の方針を確認しとこう。と言ってもテスト期間が終わるまでは動けないんだがな」


 絢は首をかしげる。


「宿主は学校に何かしらの負の感情、それも暴魂を呼び寄せるほどのものを抱えている。これは俺の予想だが、その負の感情は普段の学校生活の中のごく一部に感じているものだ」


「何でそんなことが分かるの?」


 圭は肘をついて絢を指差した。


「考えてもみろ。琥々は昼間に関わらず奴の霊力を感じ取った。それは昼間に負の感情を増幅させる何かがあった証拠だ。それを使って宿主を特定する。ただテストを受けるだけ、しかも午前中で学校から帰れる日に奴が尻尾を出すとは考えられない」


「じゃあどうするの?」


 絢には今の話では本当に何もするな、という風に聞こえていた。


 今何かできることはないのか、だが絢の頭に答えは浮かばなかった。どうすればいいのか、考えた挙句絢はどうしても納得のいかないことを聞いてみることにした。


「この宿主は、本当に学校を壊したいんですか?」


 絢の問いに圭は少し驚いた表情の後、目線を外して遠くを見る様な眼をした。


「多分、迷ってるんだろうな」


 そして感慨深そうに静かに言った。もし本当に学校の恨みがあるのなら、直ぐに壊してしまえばいい。


 そうすれば全てが終わるのだから。直ぐに仮校舎が建てられようとも、暴魂がまた破壊するだけだ。


 なのに実際は学校を徘徊しようとする素振りを見せながらも、実行には至っていない。


 それはつまり、宿主の心にまだ迷いがあるからだった。


「俺が言ったごく一部とはそのことだ。宿主は負の感情を抱いている半面、ここが好きなんだろうな」


 圭は地図上の学校に目を落とした。私立栄凌高校。


 地図で見るとその大きさがよく分かった。その巨大な学校を囲む様に書かれた多数の印。


「印が学校に着くまでまだ時間はある。持久戦になるが、今は宿主の情報を集めるしかあるまい」


 不安そうな顔をしている絢を慰めるように琥々が肩に乗った。


「そういうことだ。待つことも時には重要。それより、先にやることがあるんだろ?」


 圭は席を立ち、リビングから出ようとした。


「先にってなんですか?」


 今の話より優先される話があるとは思えなかった。


「数学は明日じゃなかったのか?」


「あっ!」


 絢は思わず声を上げてしまう。完全に忘れていた、見る見るうちに顔が青ざめて行く。


 ゆっくりと時間を確認する。午後11時、まだ頑張れるが勉強が出来るかは自信がなかった。


「見てやるからちょっと待ってろ。参考書持ってくる」


 そう言った後の絢の顔の変わりようは目を見張るものがあった。


 まるで神様でも見たかのように目が輝いている。


 大げさだな、圭はそう思いながら参考書を取りに行った。


 その時、圭は予想していなかった。勉強のために取って来た参考書が、まさかその十分後に、リビングの宙を舞うことになるなど夢にも思っていなかった。

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