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創生のオラクル  作者: ハルサメ
本編1
37/52

第三十六話

「数学を教えてください」


 自分が出来る最大限の低姿勢で絢は教えを請うた。


 対してお願いされている立場の圭はお願いなどどこ吹く風と、目の前に広げている新聞に目を通していた。


 まさかの理科での失態。手詰まりになっていたとはいえ、空欄で提出するのは教師を挑発していると思われても仕方がない。


 何とか数学で挽回しなくてはならないのだが、頼んだ相手が完全に我関せずを決め込んでいる。


「俺に得することがあるのか?」


「復習になるじゃん!」


「知ってるか? 分かり切ってる問題をやるほど退屈な事ってないんだよ」


「うぐっ、そんなこと言わなくてもいいじゃん!」


 自分を見ないで会話を続ける圭にイラッとしたが絢は文句は言わなかった。


 今の絢は圭の家に居候している状態にある。


 というものも圭が絢の大家と話をしたのはあくまで金銭的な被害であり、修理をするにも数週間かかるということだからである。


 その間住む場所がない絢は無理を言って圭の家に一時的に住むことになったのだ。


 暴魂の件もあり、その方が都合がよかったというのもある。


「で、結局周辺の妖魔に聞いてみて何か収穫はあったのか?」


 新聞を四つ折りに畳んで圭はテーブルの中央に置いた。


「あれ、知ってたの?」


「霊力が一か所に固まってるんだ、言われなくても気付く。で、どうなんだ?」


 圭はテーブルの上できちんと座っている琥々を見た。


「そうだな、多少なりとも収穫はあった。今後の指針は決められそうだ」


「それじゃあ聞かせてもらおうか」


「その前にここ一帯の地図、それとコンパスはあるかはあるか?」


「ちょっと待ててくれ」


 圭は一度リビングから出て行った。次に帰って来た時には見事にコンパスを握り締めていた。


「能力で出せないの?」


「いちいち能力使ってたらものが増え続けるだろ。それに能力だって一応脳に負担がかかるんだよ」


 それもそうだと絢は納得した。次に圭は壁際にある本棚まで行くと、そこから一冊の地図が載っている本を取った。


 最新版の地図だ、なんであるのかという疑問が絢の頭を過ったが、脱線させていい様な雰囲気ではないことは流石に察せた。


 広げたページで琥々が前足を置いた位置に圭がマーカーで印を付けていく。


 その印が発生現場を示しているのは分かっていた。


 だが文字など何かしらの形になっているのかと思った絢の予想は外れ、発生現場は本当にバラバラに見えた。


「発生現場に距離的な関係でもあるのか?」


「そうだな、一見ランダムに起っている様に見えるが、学校に針を置いて発生順にペン先を移動させるんだ」


 琥々の指示に従い、圭はコンパスを動かして行った。


「なるほど、そういうことか」


 最後の箇所を指した後、圭は満足そうに呟いた。また置いてかれている、そう思った絢は圭からコンパスを貸してもらった。


 絢はさっそく実行に移した。


 最初の発生現場にペン先を合わせる。次の発生現場は少し幅を狭めなければならなかった。


 三番目の箇所も若干短くしなければならないようだ。


「何か気付かないか?」


「どんどん短くなってる」


「ってことはどういうことだ?」


「えーっと。学校に近づいてる?」


「そういうことだ」


 琥々が頷いた。


「奴は動く度に学校に近づいている。場所が不規則だから分かりにくいがな」


 コンパスの針は確かに間隔を狭めていた。


 しかしその差は些細なものであり、コンパスでも使わなければ気付かないほどだ。


 よく琥々は気がついた、と絢は感心した。


「でもなんで徐々に学校に近づいているの?」


 宿主は確かに学校関係者であり、昼間学校にいる人間が何故真夜中に学校を目指すのだろう。


「それが今の宿主の行動理念なのだろう。暴魂は何も無差別に破壊を繰り返しているわけではない。奴は宿主の負の感情から来る願いを、手段を選ばずに実行しているだけだ」


「負の感情から来る願い?」


 絢の問いに圭は頷く。


「負の感情ってのは現状に不満を感じているということだ。身近な例で言えば、今のお前は明日の数学のテストがいやだよな? ならそのテストを回避する方法にはどんなものがある?」


「頭を良くする?」


 絢の答えに圭は頭を抱えた。その仕草に絢は少しムッとした。


「そんな馬鹿正直な答えしかないのか?」


「じゃあ、欠席する」


 投げやりに答える。


「確かにそれも目的を達するための強硬な一つの方法だが、奴ならもっと簡単な答えを叩き出すだろう」


「簡単な答え?」


 絢は一旦考えたが、それ以外に答えは見つからなった。


 そもそももっと簡単な方法が見つからないから、こうして困っているのだから当然だった。

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