表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創生のオラクル  作者: ハルサメ
本編1
33/52

第三十二話

 辺りがやけに静かだ。夜中独特のシーンとした耳鳴りの様な音だけが耳に入ってくる。そんな静寂とは完全に不釣り合いなものが今圭の目の前に現れた。

 

 先程までの弱りが嘘のようにそれは力強く、そして神々しく感じる。戦っていた時とは大きさに変わりはない。だが迫力が段違いだった。


 稲荷神社の狐の銅像のように背筋を伸ばして座り、まだ襲ってくる素振りは見せていない。だが、このいるだけで気圧されるほどの空気は異常だった。


 これが完全に力を取り戻した妖魔の中でも最高の神獣クラス、天狐だ。


「人間」


 声の主、天狐は俺を見下ろした。


「私が瀕死の中、随分と偉そうな口を叩いたものだな」


「俺は現実を言ったまでだ」


「ほう。この状態でも臆さず私に立ち向かう気があるのか、契約を破棄出来たりと面白い人間だ」


「臆してたらやってられない立場なんでな」


 天狐は完全に力を取り戻している。それが今ここで暴れでもしたら、都心は完全に壊滅する。とても周囲に張っておいた結界では耐えられるはずがない。


「そう慌てるな人間。絢がここに出てきたのはお前と二人だけで話がしたかったからだ」


「俺と?」


 戦う意思がないということか。だがそれでも圭は警戒を解こうとはしなかった。


「絢は消えていない。まだ私の中にいる。いや、逆か。私があの子の中にいるといった方が正しいな」


「お前があいつの中に?」


「絢は私に力を与えようとした。しかしお前も気付いている様に、この力は神獣と言われる私ですら扱える代物ではない。考えてもみろ。巨大なダムと言っても、海の水全てを受け入れられるはずがない。今のこの子の行動はそれと同じだ。すでに私はあの子に取り込まれ始めている」


「じゃあ今のお前は、あいつの力をもらってここにいるってことか? それってつまり」


「絢は絢に使役される使い魔となったということだ」


 神獣クラスが使役される。さっきまで妖魔が何なのか知らずに、自分の力の事も知らなかったあいつが、能力者の中でも数えるほどしかいない神獣使いになる。なんでも話が急過ぎるのではないか。

そう思った圭は、しかし考え直した。

 

 絢は莫大な力をその身に秘めている。理由はそれだけで十分だ。厄介事が集まってくるのはむしろ必然だ。


「じゃあ、あんたはこれからどうするんだ? 使役されるってことはこいつの力を思い通りに仕えるんだろ?」


「ただ目的が変わっただけで私が絢を守ることには変わりはない。最小限の力で具現化していくつもりだ。それに、もう私にはこの子の力を利用しようとする意思はない。瀕死の状態をいくら力を持つとはいえ、自分の命を投げ出す覚悟で助けようとした絢を、これ以上苦しませることはできない」


 優しい言葉だった。最小限と言うのは多分姿だけの存在ということだろう。妖魔としての大半の能力を持たず、ただいるだけ。俗にいう守護霊という位置だ。


 すると天狐の体が薄くなっていった。巨大な肉体を維持には負担がかかる。まだ力を使い慣れていないあいつには負荷が大きすぎる。


「最後に頼みたいことがある」


「頼み?」


 消えかかっている天狐はそこでにやりと笑った。


「しばらく絢の面倒を見てやってくれ。私が家を壊してしまったから、絢は帰るところがない。どうせ乗りかかった船だ、断るとは言わせん」


 爆弾発言を投下して天狐は消え去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ