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創生のオラクル  作者: ハルサメ
本編1
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第二十九話

 狐の化け物が絢に向かって動いているのが分かる。一歩一歩踏みしめる度に地面が揺れるのだ。


 それに伴い、地面が揺れる度に胸を締め付けられている気がした。まるで寿命を縮められている様な、そんな痛み。絢は膝を折った。


 顔を伏せ、ただ茫然とした。


 私はきっと死ぬんだ。


 もう無理だよ、もう誰も絢を助けられない。相手は神様って言われている化け物なんだよ。


 もう逆らえない。私が悪いんだ。私が掟を破ったから。掟を破って洞窟に近づいたから。約束、守らなかったダメな子なんだ。


「安心しろ痛みは無い」


 正面には化け狐がいた。頭を垂れ、絢の正面に顔を近づけて大きく口を開いた。


 その口は絢を丸のみに出来てしまうかと思うほど大きい。思わず目を瞑った。


「一つ聞きたいんだが」


 その時だ、圭が絢の前に立ちふさがった。


「契約を邪魔するというのか?」


「そうじゃない、ただの確認だ。まぁ返答次第ではどう転ぶかは分からないが」


「確認だと」


「何であんたはストーカーに化けるなんて面倒くさいまで使って、こいつの精神を追い込む手段を取ったんだ?」


「何を今更、決まっているだろう。精神を不安定にさせれば魂の波長がぶれる。より

魂を抜きやすくするためだ」


「そんなこと聞いてんじゃねえよ!!」


 怒声、圭からは想像もできないほどの迫力の聞いた声だ。


 思わず体を強張らせた絢だが、目の前の化け狐には何の変化も見られない。


 1メートルとない距離で両者はにらみ合っている。


「強制契約なら魂を抜きやすくする必要は無いはずだろ。なんたって人間側の許可なしに魂を引き抜くことが出来るんだからな。なのに、なんであんたはこいつをここまで追い込んだ。わざわざ帰宅の瞬間を狙って襲撃して、俺に化けてまで何でこいつの精神を不安定にさせた! 答えは一つだろ! こいつは契約なんかしてない、強制契約なんて始めからなかったんじゃないか?」


 圭の後ろにいる絢には圭の表情は分からない。だけど、今の言葉はとても温かく感じた。それは何故だろうか……。


「ふふふふ」


 笑い声が響いた。まるで笑うのを我慢している様な不気味な笑い声、声の主は他でもない、化け狐だった。


「はっはっはっはっ! そうだとも、この娘と私は強制契約などしていない。だが小娘が私の神域に近づいたのは紛れもない事実だ。入ってはいないがね」


「なら契約の無効により、俺はあんたの邪魔をする」


「いや、契約は生きている。たった今私たちは契約したんだよ」


 化け狐の笑い声が大きくなった。


「先程私は掟を小娘に問うた。私の神域に近づいたか、とな。それ自体が契約だ」


 化け狐の顔の横が突如発火する。炎に包まれて現れたのは一枚の紙だった。そこにはびっしりとみた事もない文字が書かれている。


 だが一か所だけ、読み解くことが出来る部分がある。右下の所、走り書きのようになっているが、あれは紛れもなく絢の名前。


「それが、お前の言う契約書か」


 圭はその紙に手を伸ばす。


「口上だとしても契約は契約。貴様にはどうすることもでき――」


 パァン。言葉が最後まで紡がれるより先に何かが弾ける音がした。


 直後、何かが宙に舞った。音の発信源は圭が触れていた紙だった。


 それは最早宙に舞っている紙切れにすぎないのだが。


「ふざけるな!!!」


 今までしゃがみ込んでいた狐が体を起こした。その表情は読み解くのにそう苦労しない。


 驚愕と不信それと、


「貴様何をした!!!」


 その二つを凌駕し、感情の大多数を占めるであろう圧倒的な怒気。巨大な前足を振るい、絢たちを吹き飛ばそうとする。


 間一髪、素早く対応した圭によって絢は遠くまで運ばれる。不可抗力とは言え、腰に手を回されるのは遠慮したいんだけど。


 今まで絢たちがいた地面は深く抉れていた。そう、まるで話に聞いていた天狗の仕業のように。


 もう少しタイミングが遅ければ確実に真っ二つになっていた。


「下がってろ」


 圭は絢から手を離した。


「ここからはこっちの世界の領域だ」


「こっちって?」


 絢の疑問に答えるように圭が宙に向かって手を伸ばした。すると圭の手に微かな光が生じる。


 分散している塵の様な光は一旦圭の手の中に集束するかと思うと、そこから一筋の光が伸びた。


 まるで光の剣とでも言う様な輝きを放つ形の光の中から現れたのは日本刀だった。


 何もないところから日本刀が出てきた。あの光は何だったのか。質問をしようとして圭の言葉を思い出す。


『こっちの世界の領域だ』


これが答えなのだろう。


 つまり、絢が立ち入ることが出来ない領域という意味だ。


 これから何かが起こる。


 それだけは分かった。

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