第十九話
「洞窟に行ってみようぜ!」
私たちのグループでリーダー格の男の子―裕輔君がそう告げた。
辺りは薄暗く鳴り始め、赤い夕陽が外をかけずり回っていた私たちを照らしていた。あまりの眩しさに目は薄く開けていた。
「でもあそこは……」
洞窟とは裏山の洞窟に違いない。大人の全てが口を揃えて注意を促している禁断の場所だ。
まだ子供だが、その場所に行くことが悪いことだという認識はそこにいた誰もが思っていた。
「でも何があるのか気になるだろ?」
その言葉に全員の心が揺れた。子供心の探究心は誰もが持つ成長の通過点である。
好奇心に身を任せ行動する。その中でも私たちのグループはその好奇心が旺盛だということは理解してた。毎日のように走り回り、もうこの町で知らない場所は無かった。
ただ1つ、裏山を除いては。
裏山は洞窟だけでなくそこ自体が進入禁止になっている。だから私たちは本当に裏山に洞窟があるのかさえ確認したことがない。
神社は鳥居が見える程度で、実際のお社は既に取り壊されているらしい。
「洞窟があるかどうか確認するだけだよ。中まで入ろうなんて思っていない」
彼はそう言った。私たちの中で葛藤が生まれる。まだ10歳前の子供にとってみればかなりの難題だ。
そう、子供の好奇心と肩を並べるほどこの掟は私たちに浸透していた。
決行は夜だった。
といっても小学生が集まる時間帯なのでまだ8時を過ぎたあたりだ。
夕食を終え、裕輔の家に泊まりに行くということを親に告げ、私たちは集合した。泊まりということで大げさな荷物を持つことを不信がられなかった。
中にはお菓子や懐中電灯など、おのおのが必要となるものを詰めていった。
彼が家から出てきた。他の子に比べると小さいリュック、だが彼は誰も持っていないあるものを手に持っていた。
体の半分以上もある木刀。もしもの時の武器ということらしい。探検ということで舞い上がっているとばかり思っていたが、彼が一番冷静だったのかもしれない。
彼はこのグループの中で一番喧嘩が強い。だからこそリーダーが務まると言えるのだが、それだけでなく彼はこの年代ではよく頭が回る方だった。
遊びにも他の子たちが考え付かない発想を持っていたし、どれもが面白かった。私たちにとってみればリーダーであり、ヒーローだったのだ。
今だって唯一武器を持参してきた。彼についていけば大丈夫だ、何も問題ない、彼が何とかしてくれる。
そんな彼が言ったからこそ、私たちは掟を無視して洞窟へと向かう決意をしたのだ。




