プロローグ
どこにでもルールというものはある。
そこに集団があれば彼らには共有する規則というものがある。
それはつい最近出来たものであれ、長年語り継がれてきたものであれ、守る必要があるものだ。
私の地元にもそれに準ずるものが当然あった。
「裏山の神社の奥にある洞窟に近寄らないこと。近寄ったら妖怪に魂を食べられてしまう」
ルールというよりは掟と言って良いかも知れない。
特別田舎というわけではなく、その神社がある一か所だけが若干の山林になっているだけの土地だった。
地元の子供は皆、大人たちから嫌というほどその言葉を聞かされて育った。お母さんもおばあちゃんも、遡ったらきりがないほど長い歴史があるようだ。民話とでも言うのだろう。
小さい頃から聞かされており、誰もが「何がいるの?」と一回は尋ねた経験を持っている。だがそれに対する答えは無かった。
大人たちは子供に対して魂を食べられることを強調し、具体的な妖怪の名前など詳しいことは口にしなかった。
もしかしたら大人たちもそこに何がいるのか知らなかったのかもしれない。自分が幼いころより伝えられてきたことを、ただ単に反復しているだけなのかもしれなかった。
近づいたら妖怪に食べられる。
それはこの世からいなくなってしまうということだ。
だが本当にそうなのか?
本当に誰かいなくなった子供がいるのか?
妖怪に食べられるところを目撃したのだろうか?
ルールは集団を規律良くまとめるためにあるもの。
それを破るとどうなるか。
災厄は目の前に迫っている。




