退魔士とお泊まり調査
放課後
重要な会議があるとの報告を受けていた俺は、放課後に生徒会室にやって来た。
部屋に入ると、柚子だけが椅子に座って携帯を弄くる。
「うぃーす柚子」
「おう来たか退魔士」
柚子からの呼び名にガックリという反応を見せる。
「ここでは退魔士はNGだろ」
俺が退魔士であるということを柚子は知っている少ない存在だ。
灯と同様に情報を与えてくれるのだが、灯とは種類が違う。
簡潔に言えば、灯りは妖魔絡みの事件を教えてくるのだが、柚子は妖魔の情報を俺に金銭と引き換えで与えてくれる縁の下の力持ちだ。
柚子は退魔士と昔から馴染みが深い記憶屋というのを営んでいて、妖魔の情報や退魔に役立つ道具などを販売してくれる。
音喰いや野槌の情報も柚子から得たもので、今までにも非常に助かる存在だ。
「柚子、重要な会議って聞いたけど今日は何するんだ?」
「それは全員が集まってから」
「全員って言ってもどうせ残りは愛と灯だろ」
何故か柚子が生徒会に集合と声を掛けるとなると俺、愛、灯、柚子の四人なのだ。
他にもいろんな委員の委員長はいるのだが、月に一度しか集まらない程度。
まあそれで楽しいから俺は全然かまわない。
そして柚子とそうこう話している内に愛と灯が合流した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さあ、今日集まってもらったのはもうすぐある二年生の林間学校について」
「林間学校がどうしたんだよ?」
不安がる愛を代弁した俺に、柚子は何の躊躇いもなく言った。
「中止になりそうだ」
「「え!?」」
俺と愛はガタッと立ち上がり、理由を柚子に求める。
「毎年恒例になっているメインの牛の乳絞りや酪農体験だが、それが難しいとのことだ」
「難しいって……理由はそれだけ?」
柚子は首を静かに縦に振る。
「またおかしな話だな、別にメインがなくても林間学校はできるだろうに」
「詳しくはわからん……だから調べる!」
「調べるって詳しく原因を?」
「そうだ、今の時代教師などあてにはならぬ」
さらっと酷いこと言うな……
「ちょうど明日は土日のことだ、頼んだぞ天久」
「あ、はい……って俺!」
「固いことを言うな、どうせニート予備軍の生活をするだけだろ、それにな……」
とてつもなく嫌な予感がするが、続きを聞かなきゃダメなんだろう。
「じっくり調べてもらうために宿を男女で予約しちゃっんたんだ」
なんと勝手なことを言おうと思った俺だが、ガタンと左右にいた愛と灯急に立ち上がったことに驚き、口を止める。
「柚子さん、その宿に泊まる女性は決まってなかったら私がやります」
愛の言葉に間髪入れずに喋る。
「ダメよ愛さん、何かが起こった時に冷静に対処が出来る私が行くべきです」
またもやバッチバチに火花が散る時、柚子が口を開く。
「残念ながらお前ら二人は無理だからな」
バタン!
今度は椅子が倒れる音。
まったく騒がしい日だ。
「愛、お前は風紀風紀が月曜日から始める風紀クリームアップ活動の報告書と具体的な内容がまだ出来てないぞ」
「うっ!?それは……今からやろうと……」
「今日一日じゃあ出来ないから土日返上してやるんだろう?」
完全に柚子の勝ち、愛は何も言い返すことができなくて椅子を元に戻して座る。
「そんで灯、お前は土日に新書が250冊入ってくるだろ、だから無理なのは決まりだ」
一言も言えず、愛と同様そのまま椅子を戻して座る灯。
ここで気になったのは一緒に泊まる女性は誰かと言うことだ。
普通に考えるなら、残るは柚子なのだが……まず柚子はない。
いわゆる家庭の事情というやつだ。
となれば残りはない……じゃあ誰がということになる……
「天久、お前の知り合いでいいから明日の朝までに見つけろ」
「はぁ!」
「ああぁぁん!」
いつものドスの効いた目を光らせ、俺に拒否件はなかった。