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第2話の8

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……次の日。

 俺が目を覚ますと、その傍らには未だ穏やかに寝息をたてて眠っている、長い金色の髪を有する少女、リリカがいた。一瞬は何事かと動揺してしまったが、すぐに昨日の出来事を思い出し状況を把握する。

(あー……そうだった。今日からこの少女としばらく行動を共にしていくことになったんだったな……)


 上体を起こして目をつぶって、そのことをうなずきながら再確認した後一つ深呼吸をして…………俺は頭を抱えて悶えた。


 (うお~……‼ バカか俺は……! 一時のテンションに身を任せてなんちゅうことを簡単に決めてしまったんだ……!)


 今更ながら激しい自己嫌悪に追い込まれる。だってそうでしょう? アイアムアスチューデント。おまけに一人暮らし。生活のどこにリリカのような小さな少女と暮らしていくだけの余裕があるだろうか。……あ、時間だけはあるか。さすが大学生。すばらしい人生のモラトリアム。…………いやいやいやいや、そんなことを言っている場合ではなくてだな……。

 そんな感じでリリカを起こしてしまわないように、一人声にならない阿鼻叫喚状態に陥っていると、ふと俺はあることに気が付いた。

 ……リリカのまだ幼くか細い白い手が、俺の上着の袖を小さく握っていたのだ。


(………………)


 その時俺は、なぜか自分がたった今の今まで抱えていた焦燥から不思議と解放されていくのを感じた。


(……ま、なんとかするしかないよな……)


 生活のことはまあ……追々考えていけばなんとかやりようもあるだろう。ならばせめて、あの男が戻ってくるまでの間くらい、その代わりになってはやれまいか。隣にいる少女の無垢な寝顔を見ながら、柄にもなくそんなことを考えていた俺もまた、あの男と同様に大バカ野郎に違いなかった。


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