第2話 ダレカノ
「ん……」
冬特有のあの張りつめた寒さで俺は目を覚ました。
どうやら早朝であることを、窓から差し込む淡い日差しが教えてくれる。
……未だろくに機能していない頭を何とか活動させ辺りを見回したところ、どうやらここは自分の部屋らしかった。しかしなんか記憶があいまいだ。
わきには、中にコンビニ弁当が入っていると思われるビニール袋が転がっている。……バイトから帰ってそのまま雑魚寝してしまったんだっけか?
ぼんやりとそんなことを考えながら起き上ろうとしたところで、俺はある存在に初めて気が付いた。
さらり。
カーペットに立てた右手にそんな慣れない感触があった。
「なんだ?」
そう何気なしに感触の方へと視線を向けたのだが、そこで俺はおそらく人生驚愕ランキングなんてものがあったとすれば、楽々と上位を飾ってしまう程度に驚いた。
結果から言ってしまえばその感触の正体は髪だった。それも、日差しを浴びてほのかに輝く金色の髪。それから目に入ったのは、まだ幼い華奢な身体。冬場だというのに、ワンピースのような真っ白な一枚着をまとっているだけだ。
そして無垢な寝顔。
……見知らぬ少女がそこにいた。
当然の事ながら状況が全く理解できない俺。まあおかげさまで眠気は吹き飛びましたがね。
ホワイ? 待て待て。誰だこの子は?
どうして今まで野郎臭さしかなかった俺の部屋にいきなり見知らぬ女、それも子供がいるんだ。動揺した頭で俺は必死に答えを探す。
……え~可能性その一。これはまだ夢であり、目の前に眠る少女なんて俺の脳が作り出した幻想に過ぎない。
なるほどな。そう考えるのが妥当な線かもしれないな。
だって有り得ない。俺の部屋にこんなビジョン有り得ない。
二十年近くも生きてくれば自覚症状もあるさ。そう、何を隠そう俺はヘタレに違いないのだから。
という訳で俺はその辺の壁におもむろに頭を打ち付けてみた。
……次の案行こうか。数分後、うずく頭を抱えながら俺はそう思った。
可能性その2。こんなことは思いたくないのだが……残念ながら俺にはロリコンの気があったのかもしれない。それも無意識の内にかっさらって自分の家に連れ込むようなハイレベルなやつ。
くっ……バカな……。思わず顔を歪めてしまう。
……しかし、認めたくはないのだが、否定してみたところで目の前の現実は覆らない。残念ながら俺の頭ではこのくらいしか考えは浮かばない。
(まさかロリコンだったとはなぁ……。そんな特殊な趣味があるとは今まで全く気付かなかった……)
その時俺の目元には一筋の光るものがあったことだろう。