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神隠しの庭  作者: シルフェまたさぶろう
第二章 予見者と勇者様
38/77

その十四


「おい新入り!ぼさっとしてねえでさっさと運びな!」

 港に響く怒鳴り声。声の主はこの市場で働く虫型獣人インセムの男だ。

 叱責を受けた仁太は返事を返そうとするが、息も絶え絶えであり、そのような余裕はなかった。

「は、はひっ・・・」

 かろうじて搾り出した声はなんともみっともないもので、これならいっそ返事などしなければ良かった思ってしまう。

 やっとの思いで魚入りの箱を降ろしてインセムの男のほうへ顔を向けると、そこにあったのはにやにやと意地の悪い笑みだった。クワガタ型インセムの男の顔は人間の作りと違い、クワガタをそのまま大きくしたような特殊なものであったが、口元の歪みなどからそれが笑みであること、それもとびきり悪意のこもったものであることは仁太にも何となくだがわかった。

 クワガタ男、グワンは仁太が仕事を始めてからずっとこの調子だった。からかわれていることは間違いなく、その理由は"勇者様"だからということで間違いなさそうだと仁太は考えていた。

「根性ねえなおめぇ。まだ一日目だってのに死にそうな面して」

「い、一日目だから・・・きついん・・・です・・・」

「おっと、前言撤回だ。元気にお喋りできるってこたぁ、まだまだいけんな。さっ、きりきり働きな」

「ちょ・・・そんな・・・!」

「ほらほら、次の荷物来てんぞ。早く行った行った。こんな調子じゃ給料どんどんさっぴくぞ。セナちゃんのお尻一回触らせてくれたほうが、もっと高い金払えるってもんだ」

「あーあー、わかりました・・・!いま行きます」

 青の層の男性はすぐにセクハラに走る傾向がある。どこまで本気かはわからないが、こんなことを言われては仕事しないわけにはいかない。

 疲労のたまった足を気力で動かし、再び荷物をとりに市場の外へと向かう。と、そんな仁太の背中に男の声が再び響いてくる。

「さっきの、考えといてくれよー!おめぇが言えば案外やらせ」

「お断りします!」

 背後からのふざけた提案を言葉を被せてきっぱりと断る。が、大声を出したせいでまた少し息が乱れ、思わず咳き込んでしまった。

 現在、仁太が青の層に訪れて三日目の朝である。

 二日目、ベルザルクの屋敷から帰った仁太は、早速仕事を探すことにした。当初、セナは「助けていただいたお礼に衣食住を保証する」と言いだしたが、仁太はこれを拒否した。偶然で助けた相手にそこまで尽くしてもらうのは申し訳なかったし、のちに様子を見に来た徳郎がセナに「ヒモ」という単語を吹き込もうとしていたところを目撃したら働く以外にプライドを保つ手段が見つからない。ちなみに、徳郎はその後ミアに耳を引っ張られながら退場していった。

 そうしたわけで、仁太の職探しが始まった。だが、術法を使えず、獣人でもなく、さらに徳郎のような技術を持たない仁太に合う職業はなかなか見つからず、難航。陽も暮れ始めたため仕方なく市場の仕事を体験するということで手をうち今に至る。

 港から運ばれてくる魚介類は市場へと運ばれ売りさばかれる。それを管理するのが魚をあまり好まないインセムであるグワンだ。疑問に思って仁太が尋ねてみると、「バディアやキャルトの連中は本能的に魚を好み、耐え切れずつまみ食いをすることがよくある」という返答が得られた。

 そういったわけで、この市場で働く条件はバディアやキャルト、ならびにそれに近い魚を好むタイプの獣人"ではない"ことである。青の層にはキャルトやバディアが住み着きやすく、パステパスは漁業が盛んなこともあって他の島よりもその手の種族が多く住んでいる。

 自分で仕事を考案できず、これといって秀でた技術を持つわけでもないような、一部種族を除いた人間の最終避難場所とも言えるのが、この市場の職員だ。ちなみに市場は名目上は島将が(=島が)管理する公営の施設扱いで、それゆえ職員という表現をする。

 上記の種族的な制約で、島の半数近い住民が働くことができない。さらに力仕事がメインのため非常に辛い仕事であり、そのくせ給料はさほど多くはない。そのため市場の職員は人手が足りず常に求人状態にある。

 この際猫の手でも借りたい、とは市場の人手不足を嘆いたベルザルクの言葉らしいが、この件に関しては猫の手は決して借りることができない。藁のように貧弱な仁太を、それもお試しで快く雇ってくれたのはこういう理由があった。

 が、理由はそれだけではない。

「大丈夫ですか、勇者様」

 心配そうに仁太に声をかけたのは、仁太と同じく日雇い職員として採用されたセナだ。

 現在、セナの目の前には巨大な箱があった。さきほど仁太が運んだものよりも大きく、中にはぎっしりと魚が詰まっている。当然重さも凄まじく、仁太では浮かすことすらできないほどの重量だ。それを彼女は悠々と運んでいる。当然、腕力で運んでいるわけではなく、魔術を使って運んでいる。今回使用しているのは彼女の十八番である物質移動術式だ。機海賊団から逃げ出す際にも使用した術式で、練った魔力で対象物に慣性の力を加える。これにより、さながらポルターガイスト現象のような状態を引き起こすことができるのだそうだ。

 あくまで一方向に慣性を付けるだけの術式のため、物体を浮遊させるためには術者が対象物に微弱な術式を連続でかけ続ける必要がある。仁太たちが運んでいる箱には当然車輪などという便利なものは付いていないため、セナもこうして箱を浮かせるため箱と共に移動している。微弱とは言え常に魔力を消費し続ける状態にあるため集中力を要し、余裕の表情でい続けるのはなかなか難しいのだが、魔術に疎い仁太がそれを知るよしもない。

 この魔術のおかげでセナの仕事の効率は仁太の比ではなかった。

 ちなみにセナは他にもいくつか有用な術式を識っており、そのため島の何でも屋として重宝されているらしい。若くしてそこそこの家を建てたのも、この魔術の力による優秀な働きっぷりがあったからだ。

 そんな即戦力であるセナが一緒に働く、ということで仁太の採用はあっさりと決まった。

 何から何までセナ頼りの上、こうして心配までされてしまうと、仁太のプライドもいよいよ音を立てて崩れる一歩手前といったところだった。せめてここで大丈夫と一発言ってやりたところだったが、

「大丈夫・・・だったら良かった」

 嘘を付くほどの余裕もない。

「あと、その勇者様って呼び方、やめてもらえないか」

「それはできません」

 即答だった。

「非常に恥ずかしいんだけど・・・」

「恥じることなどありません!勇者様は勇者様です!」

「他にないの?仁太とか。名前が嫌なら、楠木でもいいけど」

「それはできません」

「なぜ?」

「勇者様は勇者様だからです」

「理由になってないんだけど・・・」

 などと仁太が暖簾少女に必死の腕押しをしていると、

「おい、いちゃついてんじゃねえぞ勇者様よぉ!」

 様子を見に来たのだろう、グワンの大声が聞こえてきた。

 グワンの「勇者様」という言葉には悪意を感じる。もはや島中に知れ渡りつつあるあだ名とはいえ、大声で叫ばれるのは恥ずかしい。

「いま戻ります!」

 大声で返事を返すと、グワンは「ごゆっくり!」などとさっきとは真逆の事を言って建物の中に引っ込んでいった。完全にからかわれている。

「すみません、私が肉体強化術式を覚えていれば・・・」

 苦労している仁太に責任を感じたのだろう、申し訳なさそうな声でセナが言った。

 確かに肉体強化を施せば仁太でもセナのと同じサイズの箱を運べる様になるだろう。しかし、それに伴う代償を、仁太は既に知っている。

「あれは遠慮しとくよ。反動が凄いことになりそうだから」

 緑の層で魔術師ダムダに掛けられた肉体強化術式の反動がすごかったのは記憶に新しい。治癒能力を高めるタイプの術式と併用してもあの辛さは耐え難いものがある。

 肉体強化術式自体は特別珍しいわけではないが、セナの師であるリーマットがこの術を知らなかったため、セナも知ることができなかった。時と場合によりけりではあるが、物質移動術式は肉体強化術式を補うことができる術式のため、覚える必要がないのだとか。

「そう言っていただけると私も気が楽になります。では勇者様、頑張ってください」

「ああ。セナもがんば」

 別段、セナを気遣っての発言ではないのだが、感謝は素直に受け取っておく。

 まるで普通に歩くかのような速度ですたすた去っていくセナの後ろ姿をしばし眺めた後、仁太は意を決して立ち上がり、再び荷物を受け取りに向かった。


 荷物の運び込みの後も仁太たちは市場の店番をさせられ、仕事が終わったのは陽が高く登った後のことだった。

 その後も他の島からの貿易品などを運んでくる船舶があったが、ここからはパートのおばさんキャルトなどの出番である。キャルトといえども獣人。腕力が特別秀でている種族ではないが、それでもただの人間よりは強靭にできている。これには仁太も参加する気になれず、本日分の給料を貰い、港を後にした。

「お疲れ様です勇者様。えーと・・・その内慣れますよ、きっと」

 満身創痍の仁太を見て、セナが励ましの言葉をくれる。「えーと」の一言のせいで、彼女が無理をしているのは明らかだったが、その程度のことに一喜一憂するほどの余裕は仁太にはなかった。まずは腰をおろして一息つきたい。

 その意向を仁太が伝えると、セナが手近な食堂をいくつか教えてくれた。仁太が「特に安いところ」と男としてはこれ以上ないほどに情けない要望を出し、二人はその条件に合う定食屋へと向かった。

 セナの案内した定食屋は海の見える高台という好条件の場所にあった。店頭のスペースに椅子やテーブルが並んでおり、海が見え、気持の良い風が吹くなど、最も安い定食屋には贅沢な場所だった。

 現時点では七島同名で最も新参の第七島パステパスは住民が他の島よりも少ない。島の歴史の長さはすなわち軍備増強の歴史であり、歴史が長ければ長いほど島はより高い防衛力を用意していると考えられている。防衛力とはすなわち島の安心度に等しく、それゆえ新しい島ほど住民の数が少なくなる。住民が少なければ当然敷地も余るので、パステパスはかなり土地に余裕がある島だと言える。この定食屋の立地の良さもこういうところから来るのだろう。

 席につくと、疲れがどっと溢れでてきた。うなだれる仁太。向かいの席に座るセナのほうは相変わらずの涼しい顔だ。

「朝だけの仕事で助かった・・・。ひ弱なただの子供相手に容赦無いな、グワンさん」

 仁太が気怠そうに愚痴をこぼすと、セナは小さく笑った。

「随分と気に入られてましたからね、勇者様は」

「あれで?冗談だろ?」

「お給料、比べてみます?」

 そう言ってセナが給料袋を取り出した。

 セナの意図はわからなかったが、仁太も未開封の給料袋をテーブルの上に置く。目算ではセナのほうが厚い。当然だ、セナのほうが仕事をこなしていたのだから。比べるまでもない、と仁太は確信していた。

「じゃあ開けるぞ」

「はい」

 二人が一斉に封を破り、中の紙幣を取り出す。偽装防止のため魔術師によって特殊な加工がされた紙幣だ。確か、同じ柄の紙幣同士を重ねる際に互いに検知し合い、成功した場合は淡く発光するとのことだ。仁太の手の中にある紙幣はぼんやりと明滅を繰り返している。

 同様にセナのものも輝いているが、紙幣の柄が仁太のものと違うことに気づいた。

「それ、俺のより額の小さい紙幣?」

 セナの紙幣に印刷された数字は100、枚数は10枚。一方、仁太の手にある紙幣は500と書かれ、その数は3枚だ。単純に計算して、仁太のほうが多い。

「ね、勇者様のほうが多いでしょう?」

「ほんとだ・・・」

 この額ならば、セナのほうに500を二枚なり、1000を一枚入れればよいものを、あえて100を10枚入れることで厚みで仁太のものに勝らせたのはグワンなりの嫌がらせか何かだろう。仁太にはそんな気がした。

 ともあれ、仁太のほうが多くもらっているのは事実だ。釈然としない。

 と、給料袋の中に紙切れが入っていることに仁太は気づいた。封筒を逆さにし、ちょいちょいと揺らしてやると、その紙がテーブルの上にすっと落ちる。

 拾ってみてみると、その紙切れにグワンの名前と一言のメッセージが書かれていた。

「おめぇにこの仕事は向いてねえ、ひと足早い退職金だ・・・ってなんだよそれ。お試し雇用一日目で解雇で退職金ってめちゃくちゃだ」

 するとセナが再びくすくすと笑い出した。その表情からは悪意が感じられず、むしろ喜んでいるようにさえ見える。

「ツンクワさんのやり口ですよ」

 セナが紙切れを指す。

 恐らくツンデレとクワガタを混ぜたであろう変なあだ名はグワンのことだ。こんなふざけたあだ名を提案するのは徳郎に違いない。

「どういうこと?」

「お祝いですよ。新しく来た島民の方が市場で働くと、ツンクワさんはこうするんです。勇者様のは他の人よりも少し多いですね」

「へ、へぇ」

 急に照れくさくなり、仁太は給料から目を背け、頭の裏を掻いた。

「ただのセクハラ親父だと思ってたけど・・・同性にも優しいんだな」

「それはそうですよ」

 なぜなら、と一拍置いて、

「あの方は性別に関係なく人を愛せる方ですから」

 同じ島の仲間を誇るような、満面の笑顔を輝かせるセナ。

 対する仁太は自分の手のうちにある紙幣が急に光を失っていくような錯覚を覚えた。少し緩みかけていた表情は一転、不快感を露にしたものへと即座に変わった。

 その様子を見ていたセナが相変わらずの笑顔で、

「冗談です」

 と付け加えた。セナの表情には変化が見られないため、彼女の言が嘘か真か見定めることが難しい。いずれにせよ、グワンとは無意識に少し距離を置いてしまう気がする。

 少しして店からバディアの女性が料理を運んで出てきた。

 値段は安かったが料理自体は決して安っぽくはない。相変わらず仁太の知らない料理だったが、匂いから判断してこの料理も口に合いそうだ。

 仁太が料理を前にそんなことを考えていると、「おっ!」という男の声が聞こえた。

「よぉよぉお二人さん。昼間っから仲良くデートかい?」

 声の方を向くと、そこにいたのは筋肉の塊のようなバディア、ドウヴィーがいた。その後ろには黄色、赤、青ときつい色をしたバディアが三人ほど見える。

「こんにちは風読みさん」

「ドウヴィーさん。元気そうでなによりです」

 口々に返事をする。風読みさんというのはドウヴィーのあだ名だ。

「スルーかよ」

 からかいの言葉を相手にされなかったのが効いたのか、ドウヴィーは顔をしかめた。

 徳郎とまではいかないまでも、それに近い思考を持った覗き犯である。まともに取り合うと苦労するというのは、徳郎から学んでいる。セナの場合は、からかわれていることに気づいていない可能性もあるが。

 先に話題を仕掛けるのが得策と考えた仁太は、バディア三人組に狙いを定めることにした。

「後ろのお三方はドウヴィーさんの仕事仲間ですか?」

「ん、ああ、こいつらか。俺んとこの船員だ」

 言って、ドウヴィーが横に退く。

「ウキマです。はじめまして、噂の勇者様」

 意地悪い顔で黄色のバディアが言う。

「うっす、俺はヘーントだ! よろしくな、ゆーしゃ様!」

 赤のバディアが続く。唾が飛んで汚い。

「・・・ジマ」

 最後に消え入りそうな声で青のバディアが言った。

「はっはっは、大人気だな勇者様」

 意地の悪い笑いをあげてドウヴィーが締める。

 自己紹介と同時にイジメが行われているというのにセナのほうは「勇者様、大人気です」などと満足気でいる。

 実に居心地の悪い空間だった。

「それはそうと、随分くたびれてんなあ仁太」

 仁太たちの隣の席に腰掛けながらドウヴィーが言う。三人のバディアもそれに続いた。

「市場で雑用やったんですよ。お試しだって。・・・結果は見ての通りです」

「貧弱そうだもんなーお前。肉体労働で疲れて、自分より優秀な女の子を見て更に疲れてーってとこか。くくっ、とんだ勇者様だなぁ、おい」

「笑っちゃ失礼ですよ親分。あの仕事はかなりしんどいです。普通の人間にやらせようというのがそもそも間違ってます」

 黄色のバディア、ウキマが助け舟を出してくる。ドウヴィーと違い、ウキマの肉体は細身だ。何の鳥かは仁太にはわからなかったが、見た目から考えて特別強い種族というわけでもなさそうである。おそらく、ウキマの体力や腕力はさほど高くはないのだろう。

 ウキマの隣に座る青のバディア、ジマも無言で頷き、同意の意を示している。こちらはウキマよりも細身だ。

「お前たちは鍛え方がぬるいんだよ!俺にかかりゃあ、あれくらい屁でもないぜ」

 得意げに言うのは赤のバディア、ヘーントだ。ドウヴィーほどではないが、この男も相当鍛えている。

 口ぶりからして、この三人はどうやら市場の仕事をしたことがあるようだが、仁太の記憶ではあの仕事はバディアは厳禁だったはずだ。

「真っ先に蓋を破って中の魚に手を出したのはどこの誰ですか、まったく。魚に興味のないバディアもいるかも知れない、と市場の雇用条件変更を提案してくれたベルザルクさんのご好意を無駄にした張本人が偉そうに。あなたは力仕事云々以前の問題です」

「し、仕方ねえだろ!疲れてて、つい手が出ちまっただけで・・・」

「バディアの恥晒しだ」

「ほら見なさい。ジマがわざわざ口を開いてまで罵倒する意味の重さ、その軽い頭でよく考えることです」

「ぐっ・・・」

 ベルザルクも相当苦労しているようだ。

「で、結局うちに流れてきたってわけだ」

 今度もドウヴィーが三人の話をまとめた。放っておくといつまでも喋り続けそうな三人組のため、ドウヴィーは良いまとめ役のようである。

 と、それを聞いたドウヴィーが思い出したように、

「そうだ。おい、お前もうちに来てみねえか」

「うちって、ドウヴィーさんの船にってことですか?」

「おうよ。聞いてのとおり、こいつらも元々は市場で働いて、それが駄目でうちに流れてきた連中だ」

「噂の勇者様にもできる仕事がありますよ」

「後輩が欲しい」

「後輩が欲し・・・ってジマ!てめえ台詞かぶらせやがって!」

 ドウヴィーの言葉に三人が続く。歓迎してもらえる雰囲気があるのは間違いない。

 仁太が横目でセナのほうを確認すると、彼女の笑顔に少し複雑な色が浮かんでいるのが見えた。この仕事に対して、心配事でもあるのかもしれない。

「ちょうど二人ほど欲しかったんだよなー、人手」

 どことなく芝居がかったドウヴィーの言葉。これを聞いた瞬間、セナの表情が一変した。

「良い仕事だと思いますよ、勇者様」

 唐突にセナが言った。

 先ほどとは打って変わって、今は目が輝いて見える。仁太についてくる気があるのは間違いない。

「なるほど、そういうことか・・・」

「そういうことだ」

 ニッと笑うドウヴィー。仁太を誘うことで、セナも船員に引きこもうという魂胆だ。むしろセナだけが目的で、仁太はどうでもいいのかもしれない。

 相手の思惑通りというのも癪だったが、この様子ではセナの同行を阻止するのは難しそうだ。

「わかりました。お世話になります」

「私もご一緒します、勇者様。よろしいですよね?」

「勿論!じゃあ決まりだな。この"風読み"ドウヴィー、船の上では容赦しないぜ?」

 得意げに胸を張るドウヴィー。下心丸出しの勧誘をしてきたり、嬉々として覗きに参加するような彼も今だけは、仁太の目に頼もしく映った。

 話別アクセス解析を見たところ、一章その九を境に読むのをやめた方がいるのがわかり、以前知人から頂いた「世界観の説明垂れ流すだけのシーンは嫌がれるよ」という助言を思い出しました。

 書いた当時はさっさと世界観説明しちまえば後が楽だぜグヘグヘと頭の悪いことを考えていたため、キャラ一人に喋らせる形で強行突破をはかりましたが、今読み返すと確かにもう少しやりようがあるように思えたので、思い切って書きなおすことにしました。

 実際にあそこでこの作品を見限る人がいるわけですし、こりゃ書きなおすしかないよねと。


 結果、文章量は1.8倍くらいに増え、一部の無理やりぶち込んだ解説が話の流れの関係で削除される形となりました。

 あと、解説したつもりでいた「術法文明、機械文明、後進文明」や、いずれも平行世界の地球であることなど、抜けていた説明も補完しました。


 私的な理由による急な変更で大変申し訳ありません。

 変更によって追加された内容は上記の二つ、文明の説明と平行世界についての部分だけなので、既に一章その九を読み終わってる方は特に読み返す必要はないので、「読み返したくねーよハゲ!」と言う方は読まなくても大丈夫・・・のはずです。


 私の私生活のだらしなさと遅筆のため更新が遅い作品ですが、無駄に長い大学の夏休みを利用して少しでも更新を早くしていくつもりでいます。

 二章もやっと折り返し地点、よろしければ最後までお付き合いください。



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