痛みが理由を探している
黒い太陽かと思った。レースカーテン越しの空、隣のアパートのアンテナに付いている四角い器具が、ちょうど雲の切れ間の光に重なって皆既日食のように見える。雲は緩やかに動いていた。
先月中旬。定期的に受けている化学療法から一週間ほど過ぎたころ、体の右側が痛くなった。痛みは胸の下部から背中につながっている。数日後、痛い部分が、みみず腫れのように赤く晴れているのに気づいた。腫れはひどくなり日に日に広がっていく。ある日、突然思いついて検索した。「帯状疱疹」。PCの画面に現れた文章が、症状とことごとく一致している。「症状が出てから四十八時間以内に治療を受けないと、効果はあまり出ない」という記述に、諦めと安堵を感じた。できるだけ病院には行きたくない。
けれども、一日中ひどく痛む。早く病院に行ったほうがいいに決まっていた。高熱が三日くらい続く。頭痛用に処方してもらっているアセトアミノフェンを飲むと、一時的に熱は下がるが痛みは引かない。発熱していたので次の化学療法は休んだ。
先週の月曜日。抗がん剤治療のために病院に行ってきた。水膨れは治まり瘡蓋もほとんど残っていなかったけれど、痛みは続いている。痛くなりはじめてから1か月経っていたので、治療は行われた。治療後は免疫が落ちるため、ひどくなったらすぐに皮膚科に行くように言われる。帯状疱疹後神経痛といって、何年も痛みが続くこともあるらしい。
以前より痛みがひどくなったような気がする。それでも私はまだ皮膚科に行っていない。先週の水曜日は心療内科を受診する日だったのに、痛みにかまけて忘れていた。
神経痛のほかにも困ることがでてきた。痛いほう、なぜか右側を下にして横になると痛みがましになるので、右を下にしてばかりだと右耳や右脚が痛くなってしまうのだ。鋭い痛みに堪えながら、数分上を向いて寝る。
そして、やっと今日の夕方、いちばん近い皮膚科のホームページを開いた。Web で診察の予約をするつもりだったけれど、当日の予約しかできないらしい。すでに予約は埋まっていた。土曜日の午前中もやっているらしいので、明日の朝 Web 予約を試し、できなければ直接行こうと思っている。
一か月以上も強い痛みを放置しておくなんて、どれだけ病院が嫌いなのだろうと、我ながら情けなく思うけれど、明日はやっと行けそうだ。昼過ぎに見上げた半分以上に膨らんだ月を思い出しながら、診てもらえるように願っている。




