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三人だけでやってもビンゴは盛り上がるもので、俺が勝つまでビンゴを楽しんだ。
それに俺一人ではあまり菓子類を食べる習慣はないが、喋りながらだとついつい手が進んでしまい、あれだけあったお菓子はかなりの量が三人の胃袋に納まった。
「そろそろお開きにしましょうかね。何だかんだと盛り上がって、もうずいぶんと暗くなってしまいましたから」
窓の外を見ると、空には薄っすらと月が浮かんでいる。
「そうだな。片付けたらちょうどいい時間のはずだ」
「……うん」
このあと、俺は目黒と戦わなくてはならない。
止められるものなら今からでも止めたいが、目黒に止まる気はないようだ。俺と戦わなかったとしても、別の闘技者と戦うだろう。
それなら俺が、目黒の“想い”と向き合いたい。
「片付けは僕がやっておきます。主役の堀田君にやらせるわけにはいきませんし、車いすの目黒さんにやらせるわけにもいきませんから」
「仁部だけに片付けをさせるのは申し訳ないよ」
俺が装飾を取ろうとすると、仁部に腕を押さえられた。
「いいえ、このくらい僕だけで十分です。準備も僕だけでやりましたからね。慣れたものです。それよりも二人は早めに闘技場へ行って、精神統一をしてください」
「……仁部は、俺たちが戦うことを知ってたのか」
「二人は教室で話してましたから。僕にも聞こえてたんです。二人の決闘の話が」
「うん。私たちはこのあと戦うんだ。それぞれの“想い”をかけて」
「二人の勇姿を、僕も観客席から見届けさせてもらうつもりです」
どうやら仁部も観客として闘技場へ来るつもりらしい。なおさら無様な戦いは出来ない。
「仁部って優等生だから塾とかで忙しいと思ってたんだけど、意外と暇人だったりするのか?」
歓迎会の準備もそうだし、急に決まった決闘を観戦に来るというのも、予定が無いからこそ出来ることだ。
「塾はやめました」
「え?」
何気なく聞いた質問は、寝耳に水の情報として返ってきた。
「どうしてやめたんだ? 仁部は良い大学に行きたいんだろ?」
「高校生活を勉強だけで終わらせるのはもったいないじゃないですか。恋に遊びに楽しまないと!」
それは結構な意見だが、しかし。
それは最初から仁部が思っていたことだろうか。
もしかして闘技場に関わったことで、絶対に国立大学に合格したいという強い“想い”が消えたために生まれた考えなのではないだろうか。
本来の仁部の考えではない、一番強い“想い”が消えたせいで生まれた新たな考え。仁部は変わらず国立大学を目指していると言うが、その実、熱量は変わってしまった。
仁部を変えてしまったのは……“想い”を奪った、俺。
「どうしたんですか。闘技場へ行かないんですか」
俺の思案など知らない仁部が不思議そうに首を傾げた。
「……じゃあ、お言葉に甘えて闘技場へ行くか」
「仁部君、ありがとう」
決闘の開始時刻のこともあるため、今ここで仁部が変わったかもしれないという話をするのは得策ではないと思い、俺は無理やり笑顔を作った。
「片付けのことだけじゃなくて、今日は歓迎パーティーを開いてくれてありがとう。仁部と目黒、俺は友だちに恵まれたみたいだ」
「堀田君にも目黒さんにも楽しんでもらえたようで何よりです。それでは二人とも、悔いのない決闘を」
仁部に見送られながら、俺たちは闘技場へと向かった。
目黒は真面目な顔で、俺は複雑な心境で。
「今朝も言ったけど、相手が相馬君だからって手加減をするつもりはないよ。むしろ相馬君だからこそ、手加減なんて出来ない」
「俺だって力のすべてを出すつもりだ」
「……うん。本気の私を受け止めてね」




