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【第一部完結】ちゃちな正義を語るなら、あんたの“想い”で壊してみせろ。  作者: 竹間単


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●2


 放課後。俺は目黒に連れられて校舎内を歩いていた。

 校舎は年季を感じさせる建物の割に、綺麗に保たれている気がする。


「この高校は掃除に力でも入れてるのか?」


「掃除に力? ああ、校舎が綺麗なのは業者が掃除してくれるからだよ」


「高校が掃除の業者を入れてるのか?」


「入れてると言うか、理事長のご機嫌取りで自主的にやってると言うか……」


 理事長はこの村の権力者なのだろうか。

 それにこの高校は学費の面でかなり気になることがあるのだが、目黒に聞いても良い話だろうか。

 少しの逡巡の末、他に聞けそうな相手もいないため、やはり目黒に聞くことにした。


「この高校って私立なんだよな? それなのに学費がやたら安くて驚いたんだけど、どうなってるんだ? 理事長は慈善事業のつもりで高校を運営してるのか?」


「慈善事業なんてとんでもない。餌を撒いて獲物を呼び込んでるんだよ」


「……獲物?」


 なんだろう、この言い回しは。

 もしかして生徒は授業料として臓器を取られでもするのだろうか。そんなまさか。いや、しかし……。


「臓器売買は違法だよな?」


 嫌な想像に顔を蒼くする俺を見た目黒は、くすくすと笑い始めた。


「相馬君、ビビりすぎだよ。高校が臓器売買なんてやってるわけないじゃん」


「そう、だよな?」


 では目黒のこの反応は何なのだろう。

 先程露骨に話を変えたのも、気になると言えば気になるし……。


「ここが音楽室。今は軽音部が使用中みたいだね」


 俺は首を傾げるばかりだが、目黒は何事も無かったかのように校舎案内を再開した。

 それにしても軽音部か。前に通っていた高校にも軽音部はあった。

 しかし失礼な話だが、この小さな高校に軽音部があるとは思わなかった。


「ちょっと疑問なんだけど、部活って何種類くらいあるんだ? そんなに人数の多い高校じゃないよな、ここ」


 一クラスが約三十人、単純計算で三学年合わせて九十人。

 あまりたくさんの部活動が存続可能とは思えない。


「この高校では、部活には何種類入っても良いことになってるの。だから兼部してる生徒も多いんだ」


 なるほど。兼部可能なら部活動の種類が多くても存続が可能そうだ。

 きっと顧問になる先生も複数の部活動を兼任しているに違いない。


「今ある部活は、軽音部と美術部と写真部と、陸上部とテニス部と卓球部とボクシング部と柔道部と新体操部、それに剣道部の、全部で十個」


 目黒が指を折って数えながらそう言った。


「へえ。少人数でも活動可能な部活が多いんだな」


 メジャーな野球部やサッカー部が無いのは、必要な選手の人数が多いスポーツだからだろう。


「言われてみるとそうかも。だけど今ある部活でも、年によっては団体戦が難しい部員数だったりもするんだよ」


「兼部が可能なのに?」


「兼部してる人も多いけど、部活自体をやらない人も多いから」


 それはそうだ。前に通っていた高校でも、部活動に活動的な生徒もいれば、授業が終わった瞬間に帰宅する生徒もいた。

 そういう生徒たちは部活動の代わりにアルバイトに精を出したり、恋に遊びに青春を謳歌したりしている。

 この町でもそういった生徒が多いのだろうか。


「あれ。でもバイト募集は少ないんだよな? 部活をしないならその人たちは放課後に何をしてるんだ? 失礼だけど、この町には遊ぶところも少なそうだし」


 俺に質問をされた目黒は、少し考え込むような仕草をしてから口を開いた。


「家で絵を描いたり、プラモデルを作ったり、ゲームをしたり、いろいろだよ。それより相馬君は隣町に住んでるんだよね? どうしてこの高校に来たの? 小学生の頃は隣町の小学校に通ってたのに」


「俺の家は町で区切ると隣町だけど、この町との境界線付近にあるんだ。だから隣町の中心部にある高校よりも、この町の高校の方が距離的には近い。でも小学校は町ごとに入学する学校が決められてたから、隣町の学校に通ってたってわけだ」


 俺の話を聞いた目黒は納得したように頷いた。


「このあたりは過疎地って言うほどでもないけど、人口が少ないからね。町に何個も学校を作る余裕が無いんだよ、きっと。私の家も高校から結構離れたところにあるもん」


「電車が通ってたら離れてても楽なんだけど、ここにはそういうのは無いからなあ」


 この町の基本的な移動方法は、車か自転車か徒歩だ。

 バスが走ってはいるものの一時間に一本とかそのレベルで、時間帯によっては三時間くらい待たされることもある。

 ……って、あれ。もしかして今、また目黒に話題を変えられたのだろうか。

 帰宅部の生徒が放課後に何をしているのかという質問に、一応は答えてくれたが、俺が深く聞かないように話を変えられた気もする。

 やはりこの町ではパパ活が横行しているのだろうか。



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