礼儀正しき民族
とある星のとある国に『穏やかで優しく礼儀正しい』と言われる民族が居た。
他国から見れば『臆病者』と捉えられて笑われてしまうほどに。
けれど、彼らはそんな言葉を気にもしない。
何故なら穏やかで優しく礼儀正しいからだ。
――もしかしたら、そこに臆病さもあったかもしれないけれど。
さて。
そんな民族を見た悪魔がふと一つの実験をした。
庇うようなことを言えば、これはあくまでも実験であり悪意は一つもなかった。
「これをあげるよ」
そう言って悪魔は彼らに銃を与えた。
「人を簡単に殺せるからね。使い所には気をつけてね」
繰り返しになるが悪魔に悪意などなかった。
ただの興味本位の実験程度の認識。
――だからこそ。
「あー、やっぱりこうなったか」
人々が当然のように殺し合う変わり果てた国を見て悪魔は呟いた。
「普段、温厚な奴らほど我慢しているもんだしなぁ」
そう言って悪魔は大きく伸びをする。
特に罪悪感はなかった。
むしろ、彼らがあるべき姿に戻った……そう思う程だ。
「ま、あのまま生きてたら間違いなく侵略されていただろうしね」
悪魔は欠伸を一つしてそのままどこかへ消えてしまった。