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家族

目的地に着くとそこには馬が倒れており、あたりには

先ほどまで使用されていたであろう野営の道具が転がっていた。馬はすでに機能を停止している。

愛馬は頭部から流血しており、使い物にならないことは明白だった。


「おい、そこの旦那。大丈夫か。」

彼はひどく怪我、あるいは損傷した男に声をかけた。

こういった場合、相手をスキャンしない方が得策だ。


どの程度生身が残っているかがわからないがワンダラーのような生身狩りに怯えて暮らしているものがほとんどだ。


生身であれ機械であれ、この時代での新たな出会いは

限りなく死に近い出来事だった。

そのためこの男がどんな反応を見せるかわからない。


「あぁ...どうか見逃してください。見ての通り、この辺りの野盗にやられましてね。今日は少し遅くに出発しようかと。そう娘と話をしていたところだったんです。ですがあいつらは娘をさらっていきました。まだ若いのにもしこのまま娘に会えないと思うと、死んでも死に切れません。」


「そうか。じゃあ俺は行くぞ。」

そう答えると、ワンダラーは足早に去ろうとした。

あれだけの光だ。他にも火事場泥棒が来るかもしれない、そう考えていた。それに娘だと?格好の餌食だ。

ああいう類の欲求は脳を弄ればいくらでも満足できる、ただ自分が殺されるリスクを冒してまで人攫いをする連中はどこかがおかしい。


「ちょっと待ってください!あなた、生身狩りのワンダラーですよね...?何かシェリフにお困りはありませんか?」


「そうだよ。こんだけ武器を持ってりゃ誰だってわかるさ。」


「そうではない!頼みがあります、私は医者なんですよ。あなたに娘を助ける手伝いをしてほしい。その代わりにあなたのシェリフのメンテナンスをしてあげましょう。」


ワンダラーは黙って、彼の体をスキャンした。

もちろんつい昨日、眼に不具合を感じたことなど

少しも表情には浮かばせない。


「さあ!どうですか!私の言うことは事実でしょう?」

「...そのようだな。よしあんたの言うことを聞こう。ただし俺はあんたを助けるだけだ。娘を助けるんじゃない。わかったか。」

彼は平静を装い医者の提案に同意した。だが内心少し驚いてもいた。彼の体はいつも見る風景とは少し違っていたからだ。脳と右腕、左腕をのぞくほとんどが

医療道具で埋め尽くされている。今この場でも小さなクリニックが開けそうな雰囲気だった。


出発の準備をしつつもワンダラーはそのことが気がかりだった。こいつ自身に何かトラブルの原因があるかもしれない。

「出発の前に一つ質問だ。その体はなんだ。シェリフ化にしてもおかしいだろ。普通は一般的な機能の置換とせいぜい武装、防衛あるいはその両方を強化するはずだ。」


医者は少し自慢げに答えた。

「いやあね。私もこう見えてあなたと同じように奴ら側だったんですよ。」


「なに?」とワンダラーは眉を顰める。


「いえいえ、誤解を招く発言でした。私が協力させられていた。と言う意味です。そのために生身の時代に重宝した脳と両腕だけを残してシェリフになったんですよ。本当は皆さんと同じが良かったですがやれ『今は両腕は余っとる。』『娘の命が惜しくないのか。』と脅されましてね。おかけで娘は生身のまま、私は歪な機械というわけです。」


「そういうことか。そういうゲスいやつは何人か知ってる。顔がシワだらけの赤いツラだったら確実にあいつだな。とはいえこうなってしまっちゃ同情するよ。先を急ごう。」


歪な体の医者とその若い娘。旅をするには危険すぎる、とワンダラーは胸騒ぎを感じていたが

野盗の手がかりを探すため医者とともに馬に跨った。

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