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日常シリーズ

見守る私

作者: 釜瑪秋摩

 私の名前は、伊達 勇(だて いさむ)

 年齢は五十二歳。

 とある企業の部長職についている。


 今日は部下の小松こまつさんと一緒に、午前中から取引先との打ち合わせに出かけていた。

 進捗状況になんの問題もなく、今後の流れや準備などを確認して資料をまとめた。

 問題がなかったとはいえ、それなりに時間を費やし、終わったときには午後二時を回っていた。


「部長、今日はありがとうございました」


「私はなにもしていないよ。小松さんがしっかり進めてくれて、先方も安心しているようだったね」


「いいえ、部長の助言があって、予算内で先方にも納得していただける商品ができることになりましたから」


「進めていく上で、またなにか問題が起きそうなときには、すぐに私も対応するから、いつでも声を掛けてくれて構わないからね」


「ありがとうございます」


 会社に戻る前に遅い昼食をとろうと、私と小松さんは最寄り駅の近くにある洋食屋さんへ足を運んだ。

 基本的には、戻ってからそれぞれ個々に休憩を取って食事にでるのだが、こんなふうに遅くなったときには、食事の席を共にすることもある。


 席について注文を済ませ、待っているあいだ、小松さんは時々、スマートフォンを確認してはニヤニヤとしている。

 一体、なにを見ているのかと、気になって見つめていると、ふと顔を上げた小松さんと目が合った。


「あ、すみません。ちょっと家の様子を確認していて……」


「家の様子?」


「ええ。あ、そういえば部長、猫ちゃんを飼っているんですよね?」


「ああ、うん、一匹ね。小松さんのところは犬だったっけ?」


「はい。部長、それじゃあ見守りカメラ、知っていますか?」


 ペットの見守りカメラ。

 確かに、その存在は知っている。

 ただ、カメラがあるからといって、ずっとペットがカメラの前にいてくれるわけがないと思い、必要と思ったことがなかった。


「留守にしているあいだ、ペットの様子がわかると安心しますよ? 今は見守りカメラも色々な種類が出ていますし、性能も良くて、画像もとっても綺麗なんですよ」


「もしかすると、今、見ていたのはその『見守りカメラ』の映像なのかい?」


「そうなんですよ! 時々、様子を見てみるんです……あっ、もちろん、休憩のときに、ですよ?」


 そう言って小松さんは、誤魔化すように水に口をつけた。

 まあ、仕事中にみているとしても、小松さんだけでなく部署のみんなは仕事をキッチリこなしてくれるから、特に問題ないと思うが。


「へぇ……差し支えなければ、ちょっと見せてもらっていいかな? その『見守りカメラ』の()()()()()()


 小松さんはコップに口をつけたまま、突然、ブッと吹きだした。

 慌ててカバンからハンカチを取り出して、服に掛かった水を拭いている。


「やだ……フッ……すみません、急に……スマホ……んっふ……どうぞ、今、表示されていますので」


 肩を震わせながら、テーブルの上にスマートフォンを置き、私のほうへ向けてくれた。

 見ると、想像以上にハッキリした映像で驚いた。

 白黒かと思いきや、カラーで、しかも小松さんの犬が動くたびに、それを追っている。


「ええ? これ、カメラに追尾機能がついているのかい?」


「そうなんですよ! 動きに合わせて自動追尾してくれるんです。夜には暗視モードもあるんですよ!」


 それは驚きだ。

 専用のアプリを入れれば、こうして外出先から確認できるという。


「ペットの様子を見るだけじゃあなく、防犯カメラとしても使えますよ」


 食事をしているあいだも、小松さんは見守りカメラの良さを熱弁してくれた。

 たった今、すぐに必要かどうか、それはともかくとして――。


 私は仕事を終えたあと、そのまま家電量販店へと向かったのは、言うまでもない。



-完-

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