ALICE is ***
曰く。
彼女は「気が触れている」という表現が適切なのだろう。
人を殺して回っている。
それだけでも、十二分に、気が狂っている。
ただ――。
彼女には彼女なりの、理由、大義名分がある。
曰く。
「神様が殺しなさいって。そう。仰ったから」
にこり、と、笑いながら、嬉しそうに、銃剣の付いた突撃銃を華麗に振り回し、小躍りを交えつつ、彼女は自慢げに胸を張る。
『〝……――自らの行為に、意味は、あるのか?〟』
恐らくは、そんなことを、一度でさえ考えたことはないのだろう。
彼女の信仰は、つまり、〝狂気的〟なのだ。
語る。
〝神様〟とやらは、日常的に、彼女の意識に語りかけるそうだ。
処分するべき存在の名を。
処分するべき理由を。
「……――キミは。その神託に。異を唱えたことはないの?」
黒い服の青年、彼が彼女に問いかけると、首を傾げながら答える。
「神様が言うことなのだから。間違いはないわ。絶対に」
盲信ではないのか。
青年の頭によぎる、疑念、口を挟みたくもなる。
だが。
「きっと――。うん。そうなんだろうね」
青年は、疑念を抱きつつも、彼女の言葉に異を唱えない。
首肯。
彼女の言葉に相づちを打った。
『〝ボクは、ただ、キミの側にいたかった――〟』
青年の心は、それだけで、満たされている。
故に。
他の物事は些細なコトだった。
アリスを支える。
それだけが、青年の生きる理由であり、青年が生きるすべてであった。