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序 はじまり
小学生の頃考えたお話です。
暖かく見守っていただければ。
――聖ブラングルス皇国皇都バリエント――
「皇帝陛下、今しがた準備が整ったようにございます」
「そうか、ご苦労」
白の国、ブラングルス皇国のトルシルト皇帝は
巨大な玉座から立ち上がり、
ゆっくりバルコニーへと向かって歩いていった。
「これで我々の運命は一人の男に託されたようだ……な」
「左様にございます」
大きな広場に集まった大勢の群衆の前に
城のバルコニーからトルシルト皇帝が姿をあらわして言った。
「皆の衆! よいか! 我々人類は、決して魔王を誕生させてはならない!
今こそ勇者の登場が我々に必要なのだ!
全ての用意は整った、今こそ勇者の到来を共に祈ろう!」
皇帝の言葉が終わるやいなや、ブラングルス皇国を歓声が包んだ。
“魔界冥界の王となりし者来たり。
王は地を終焉へ導く者なり。
これ止めるは勇ましく挑む選ばれし者の力の他に非ず。
選ばれし者は比類なき強さを持つものなり”
―――プロフェイトの大預言書 下巻勇者と魔王に関する第一預言書より――