第26話 真相!UFO墜落事件
「――いやしかし、墜落したUFOの乗員は黒焦げになって死んでいたはずだぞ」
と、木村が反論した。
毛瀬は不敵な笑みを浮かべ、話しはじめた。
「彼らは死なないんですよ。私もそれを知ったときは驚きました。――私は当時21歳で、陸上自衛隊の自衛官、階級は一等陸士でした。上官に指示されるまま、この村に来たのです。最初は任務内容を〈墜落した小型飛行機の捜索〉だと教えられました。しかし現場に着いて、墜落したものが飛行機なんかではないことがわかりましたよ。山中に散らばった残骸は明らかに地球の材質ではありませんでしたからね。――捜索隊はその辺一帯を20時間以上にわたり捜索し続けました。ケイド人の焦げたボディを発見したのが、私です。同僚たちと一緒にシートで包み、トラックに積み込みました。宇宙船の残骸と一緒に。しかしひとつ問題がありました。搬入先ですよ。駐屯地からはかなり離れていたので、臨時でこの農業試験場に搬入することになったのです」
「ここにした理由があったんですか?」
と藍。
「この試験場は元々は帝国陸軍の研究施設だったのですよ。正確に言うと陸軍が食糧問題を研究するために作った農業試験場だった。来るべき将来の戦争に備えて研究施設の大半が地下に作られました。敵の爆撃機から食料備蓄を守るために丘の内部をくり貫いて巨大地下倉庫も作られた。その空洞が宇宙船を運び込む場所として最適だったわけです」
「ケイド人の死体もそこに持ちこまれた――?」
「はい。医師や獣医らが数名呼ばれ、その体を調査しました。そして判明したのです。ケイド人の体は私たちの体のような純粋な有機化合物製ではなく、有機体はわずか4%程度で、残り96%はケイ素と特殊な分子構造の合金パーツの混合、つまりはサイボーグのようなものであると。有機体のパーツは脳の一部ぐらいでした。……驚くべきことに、回収から3日後、ケイド人は自分の体を自己修復し、蘇生しました」
「3日後に生き返るなんて……まるでキリストじゃない」
と亞月。
毛瀬がうなずく。
「私は当時クリスチャンでした。だからケイド人こそがキリストの再臨だと感じました。あとから知ったことですが、2000年前に神によって地上に遣わされたとされるキリスト自身がケイド人だったそうですよ。ケイド人のボディはどんな姿にも変形できるので人間に化ければ誰も見破ることはできない。……ケイド人復活の後、政府内に〈ケイド人研究調査会〉ができ、私もそれに加わりました。会の目的はケイド人とコミュニケーションを取り、獲得した知識を科学技術・医療・経済・安全保障の分野でいかに応用するかを研究することでした」
「で、コミュニケーションはうまくいったのか?」
「古代ヘブライ語とシュメール語がおおよそ通じることが判明しました。どちらの言語も彼らの言語を元にして造られたものだったからです。意思疎通ができるようになり、私たちは彼らが地球にやってきて何をしようとしているのかの全貌を知ることになったのですよ」
毛瀬はそう言い、椅子から立ち上がった。
「動くな!」
とノマがレールガンで狙いをつけたまま叫んだ。
「まあまあ、落ちついて。何もしませんよ。ただ、せっかくだから良いものを見せてあげようと思いましてね」
毛瀬はゆっくり壁際に歩いていき、壁に手を触れた。
それまでコンクリートの壁だと思っていたものが一瞬で透明化しガラスのようになった。その壁の向こうに広い空間が現れた。格納庫のようだった。ノマたちがいる部屋は格納庫をやや俯瞰する位置にあった。
通電するような音がして、格納庫の中央に置かれた巨大な物体にライトが当たった。直径20メートルはある銀色の円盤形状の構造物だった。
「まさかッ! UFO……か!?」
木村が目を見開き、興奮して大声を出した。彼はガラス壁にトカゲのように貼りついて銀色に輝く構造物をまじまじと見つめた。
「なんなら、間近で見てみませんか?」
「いいのか?」
「ええ構いませんよ。見るだけでしたら」
毛瀬はそう言い、壁をスワイプするようなゼスチャーをした。すると、壁が左右に開いて割れ、人が通れる通路が現れた。
木村は、まるで子供のように駆け出し、通路から階段を駆けおり、格納庫に飛び出した。
「ははは、まるで子供ですね」
と毛瀬は朗らかな笑みを浮かべた。
ノマ、亞月、藍も木村に続いて格納庫へと降りた。毛瀬も後ろ手を組みながらゆっくりと階段を降りてきた。
「すげええ! これが本物のUFOか!」
木村は円盤を見上げ、声を上げた。こだまのように声が格納庫内に響きわたった。
興奮している木村を眺めながら毛瀬は落ちついた声で言った。
「私たちは〈オリジナル・ケイド・シップ〉と呼んでいます。バラバラになっていた機体を10年以上をかけて復元したんですよ。もちろんケイド人の力も借りてね」
〈つづく〉




