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第22話 出撃、エイリアンバスターズ

 ノマと亞月は、手芸店や画材屋やホームセンターなどで材料を購入し、バーガーショップで食事をして木村家に帰ってきた。

 帰ってくると、木村がガレージで何かを造っていた。鉄パイプや銅線のコイルや傘の骨などを組み合わせた何かの装置のようだった。

 「兄さん、何を造ってるの?」

 と亞月が訊いた。

 「宇宙人と闘うための武器だよ。明日はいよいよ〈プロジェクト・イライジャ〉決行の日だからな。アンコも準備しときな」

 「うふふ。あたしたちもこれから準備するつもりよ」

 亞月はそう言って木村にウィンクし、ノマと一緒に二階へと上がっていった。

 亞月は買ってきた材料で魔法少女の衣装を作りはじめた。

 「私は何をすればいい?」

 とノマは亞月の作業を見ながら言った。

 「ノマちゃんはもちろん、できたパーツを実際に身に着けていくのよ~」

 「おう。じゃあすでにできてるのを先にくれ」

 ノマはワンピースを脱いだ。

 「じゃあ、このオーバーニーソックスをまず履いて。そうそう。それから、この手袋をつけて……」

 「こうか?」

 「きゃあ、カワイイ」

 「いちいち喜ぶな。……このフワフワしたものは何だ?」

 「それはパニエ。スカートの下に着けてボリューム感を増すのよ」

 「ふーん。パンツはこのままでいいものなのか?」

 「その女児ショーツも可愛くて個人的には好きだけど……やっぱりクラシカルなカボパンにしましょう」

 「カボパンって何だ?」

 「カボチャパンツよ」

 「おい、この衣装、ヘソが出てるのが微妙に恥ずかしいんだが……」

 「そのヘソ出しがいいのよ~。セクシーよォ~」

 「幼女にセクシーさを演出してどうするつもりだよ? ……こっちのパーツは首につけるのか?」

 「前後が逆ね。あ、そうそう」

 「おい、本当にこの髪型にするのか?」

 「やっぱり幼女はツインテールが正義だわァ~。ツインテールにできるのは子供のうちだけの特権よ~。ばっちり似合ってるわよ~」

 そんなやりとりをしながら作業は夜の10時まで続いた。ノマは幼女ゆえの体力切れで、衣装を着たまま眠ってしまった。

 亞月は床でヨダレを垂らして眠っているノマを抱きかかえ、ベッドに運んだ。

 深夜1時を過ぎても一階からは木村の作業の音が聴こえていた。

 

 翌日も木村と亞月は、作業を続けた。

 午後4時過ぎ、木村はようやく作業が完了した。

 木村は「おーい」と言いながら二階に上がってきた。亞月の部屋のドアが閉まっていたので、木村はノブを回してドアを開けた。

 部屋の中ではノマが魔法少女の変身ポーズの練習をしていた。亞月はデジカメでノマの写真を何枚も撮りながらポージングの指導をしていた。

 「――もうちょっと指を伸ばしてやってみて?」

 「〈地球侵略を企てる下劣な宇宙人ども! プニピュアがカワイさ地獄に堕としてあげるわッ! 泣きながら感謝しなさいッ!〉」

 「そうそうそう。あでも、最後のところはもうちょっと(さげす)むような感じの目で。あ、そうそうそういう感じ。イイ感じイイ感じ!」

 しばらくポカンと見ていた木村がようやく言葉を発した。

 「――何してるの?」

 ノマは振り返り、木村の顔を見て顔が真っ赤になった。

 「ちょ、お前……! いつから見てた~ッ!?」

 「〈地球侵略を企てる下劣な宇宙人ども〉あたりから」

 「いやあァ~」

 ノマがノマらしくない悲鳴をあげて顔を手で覆った。

 「……いや、普通に似合ってるぞ。子供らしくてカワイイじゃないか」

 と木村。

 「カワイイって言うな~!」

 ノマは手に持っていたドリル状の武器で木村を殴った。……つもりだったが、木村はドリルを真剣白刃取りのように受けとめた。

 「そんな武器でヒトを殴ったら危ないよ~」

 と木村。

 「えッ、今の身のこなしは何だ? 素人の動きじゃなかったぞ」

 「兄さんはね、昔、色々な武術を習っていたのよ」

 と亞月が言う。

 「いやあ、もうすっかり(なま)っちゃってるけどねえ。それに歳だし急に動くと関節や筋肉が痛くって……。ははは」

 と木村が自嘲気味に笑い、

 「練習もいいけど、5時にここを出るからね。盆踊りは6時スタートだ。準備して下に降りてきてね」

 と言って部屋を出ていった。


 ノマと亞月が一階に降りてガレージに行くと、木村が軽自動車のトランクに色々な物を積み込んでいた。 

 「いっぱい持ってくんだね」

 と亞月。

 「ああ、備えあれば憂いなしってな。――おおそうだ、これはアンコが持っておけ」

 と木村はビールのロング缶を亞月に投げて渡した。

 「ビール……じゃない?」

 「その赤いボタンを押してみな」

 亞月は言われた通りに缶の赤ボタンを押した。すると缶の内側に収納されて部分がシュルッと伸びて棒のような形になった。

 「わ。バットに変形した!」

 「〈ロング缶偽装型伸縮金属バット〉だ。いざというときはそれで思い切り宇宙人をぶん殴れ」

 「サンキュ」

 魔法少女のコスプレをしたノマは、少し言いにくそうに木村に話しかけた。

 「……なあ、やっぱり宇宙人を退治しにいくのか?」

 「ノマちゃんは、もうやるべきことをやったのだから、無理にボクたちに付きあう必要はないんだよ。ここから先は危険なこともあるだろうし。ノマちゃんは留守番にするかい?」

 「お前たちは、本気で宇宙人をやっつけるつもりなのか?」

 「もちろんさ。宇宙人がこの地球で悪さをしているのを黙って見過ごすわけにはいかないからね。()()()()()()

 「いや、だけど、宇宙人とまともにやりあって勝てると思うのか? あいつらは人類よりも科学力があるんだろ?」

 「……そうだろうね。ヤツラの超科学にはボクたちはたぶん太刀打ちできない――」

 「じゃあ、なんでわざわざそんなヤツラと闘うんだ! 負けることが目に見えてるじゃないか」

 木村はノマの頭に手をのせた。

 「勝ち負けよりも大切なものがあるんだよ、ノマちゃん。勝ち負けなんていうのは結果に過ぎない。でも、結果よりも過程のほうがずっと重要なことがこの世界にはいっぱいあるのさ。――それに、勝てないから闘わない、というのは一見合理的な判断だけど、決定論に基づいた誤謬(ごびゅう)だとボクは思っているよ。前に、未来は変えられるってボクが話したよね? ――あと、敵がいかに強くても100%勝てる(いくさ)というものは存在しない。どんなに強いヤツでも病気になるし怪我もする。常に万全なヤツなんていないよ。――ボクは自分のことを少しも強いなんて思っていない。逆説的だが、()()()()()勝機があるんだ。コンピュータのハッキングのように、あるいは忍者のように、相手の最も弱い部分を見つけて狙うのさ。その戦い方は一見、卑怯(ひきょう)に見えるかもしれないけど。現実の真の闘いにおいては卑怯も何もすべてが正当な戦術なのさ」

 そう言って、木村は軽自動車のトランクのドアを閉めた

 「木村……」

 「ノマちゃんは、待ってて。必ず帰ってくるから」

 「待て待て待て! そんな死亡フラグみたいなセリフを言うな! 私も連れていってくれ」

 「本当に、いいのかい? この先何があるかわからないよ?」

 ノマはグッと力強く顔を上げて木村の目を見た。

 「見た目が幼女だからってナめるなよ! タイムマシンに乗ったときから、この先どんな目に遭うかわからないっていう覚悟はできていたさッ!」

 「わかった。じゃあ行こう!」


 

 〈つづく〉 

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