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称号付き小説

手渡たされた手紙:手

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/02/12



 王宮に呼ばれた私は、うきうきした気分で手紙を書いていた。


 やっとこれで、あの男に復讐ができる。私を捨てた男を、悔しがらせる事ができる。


 きっとこれからは贅沢な生活ができるだろう。


 そうだ、もう少し手紙の内容を盛っておこう。


 どうせお姫様になるのは確定事項なのだから、少しくらい嘘をついても問題ないはずだ。


 何を書こうかな。


 ニヤニヤしながら筆を進めていく。


 とりあえず、この国の王子は私にメロメロだと書いておこう。


 これは、当然よね、


 私に美しさで敵う女はいない。

 この辺りでは、一番の美しさを持つ女なんだもの。


 だから、前回のようにはならないはずだ。


 あの、私を捨てた男の時のようには。


 きっと、私がどれだけ美しいか、あの愚かな王には、分からなかったのだろう。


 きっと愛なんて分からない、お子様だったなのよ。


 皆、踊り子である私が美しく舞っているだけで、惚れてくれるのに。


 あいつは、きっと子供だったから、愛という感情を抱けなかったのね。


 だから私との間で交わされていた婚約を破棄したの。


 かわいそうで愚かな王様。


 この手紙を読んで私の事を今さら欲しくなっても、もう遅いのに。


 そうだ。そんなおバカな王様にも理解できるように、もうちょっと分かりやすく書いてあげないとね。


 あれこれ、考えた末にその手紙を書きあげた私は、召使に手渡した。


 ちゃんとしっかり届けてね。


 事故でなくしたりしたら、承知しないんだから。












 俺は、町中を歩いていた時にその手紙を手渡しされた。


 俺は一国の王子である。


 だが民達の事を知るために、たまにお忍びで変装し、町を歩く事があった。


 今日はその日だ。


 変装は念入りに行っている。


 だから、大抵の人間は俺の変装に気づかずにスルーした。


 しかし、護衛の人間はなれたもので、すぐに気が付いてしまうのだ。


 今日は、護衛すらふりきって一人で歩いていたのだが、どうやらばれてしまったらしい。


 いつものように咎められたら面倒だ。


 そう思ったが、何かが違う。


 その護衛は少し様子がおかしかった。


 どこか気まずそうにしていたのだ。


「王宮の前にこんなものが落ちていたのですが、内容を確かめられますか?」


 その護衛は、しぶしぶと言った様子でその手紙を持っているようだ。

 本当は捨てたくてたまらない、と考えてそうな表情。


 しかし、よく見ればそれも当然だろうと思った。


 なぜならその封筒には、俺が婚約破棄した相手の名前が書いてあったのだから。


 仕方なしに俺は、手渡された手紙を読んだ。


 それは、つい最近婚約破棄した女からの手紙だった。







 数か月前。


 変装して町を巡り歩いていた時の事。


 一目ぼれした踊り子の女と仲良くなった俺は、その女を王宮へ招いた。


 そして様々な事を知って、彼女を気に入った俺は、婚約をかわしたのだ。


 それからは、花嫁修業をさせていたのだが、人が変わったように贅沢をするようになった。


 だから俺は、こんな人間とは一緒になれないと婚約を無しにしたのだが。


 女は、怒って俺に詰め寄ったのだ。


 俺の襟首をしめるような勢いで。


 だから、護衛に指示して王宮から追い出した。


 それきり、国内では姿を見なくなったが。


 どうやら手紙の内容では、隣国に行ったらしい。


 そこで、その国の王子と仲良くなり、贅沢な暮らしを送っているのだとか。


 将来を見据えたお付き合いとやらもしているらしい。

 

 だが、次第に化けの皮が剥がれるはずだ。


 おそらくヤツは、ただ贅沢な暮らしがしたいだけで、金と権力のある人間に取り入っているだけなのだから。


 隣国の王子は、質素な暮らしを好んでいる。

 おそらくまた、あの女は婚約破棄されるだろう。


 俺は冷ややかな目で、贅沢自慢をしているその手紙を読み終わった。


 そして、護衛に申し訳ない気持ちになりながら、再度それを手渡す。


「絶対に届けてほしい、焼却場へ。この内容が、人目につかないように頼むぞ」

「はい」


 嫌な事を思い出してしまった。


 だから、一刻も早く燃やして消し去り、その手紙を見なかったことにしたかった。



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