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星の国のアリス  作者: 酔鶴
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その出会いは背後ろから


#新シリーズのご挨拶

 読者の皆様こんにちは。ご訪問ありがとうございます。著者の酔鶴と申します。ゆっくりお話したい所ではありますが、ここではご挨拶だけ。またあとがきパートにて、お待ちしております。



星の国のアリス 第一話



「行ってきまーす!」


 四月。今日は待ちに待った高校の始業式……春特有のちょっぴり肌寒い空気と、優しい桜風。真新しい制服も相まって俺は今、これまでになくワクワクしている……!

 幼、小、中と十年近くに渡って刺激の足りない生活で飽きも来ていたが、ようやく漕ぎ着けた高校合格。心躍らない訳無いのだ。


 俺が合格した学校、上城(かみしろ)高校は私立で、県内でも上位に位置する学校だ。残念ながら大学附属の高校では無いので、また三年後には大学受験が待っているが……まぁ、高校の内容をちゃんと勉強してれば行けるだろ、多分。本当は大学までエスカレーター方式で行けたら良かったんだけど……生憎、都合よく通って行ける一貫校は無かった。まぁでも、昔の"あの"環境と離れられるだけで俺はもう満足なのだ。


 さて、家から学校までは電車に乗る必要がある。電車を降り、交差点の信号を待つ。受験の日は、同じようにこの横断歩道を渡る奴がいっぱいいて、"こいつらがライバルなんだな"って思ったのをよく覚えている。


 ……ま、ワクワクし過ぎてめちゃくちゃ早く家を出たから、周りに制服姿の奴はいない。まだ七時だしな。唯一見えるのは俺と大して背の変わらなさそうな制服姿の女の子が駅の階段を降りて来ているのが見えるだけだ。ふと交差点を振り返っても、歩行者信号さえ変わっていない。まだしばらく掛かりそうだ。

 そうして長い信号待ちが終わり、いざ横断歩道を渡ろうとした時だった。


「Excuse me?」

「え?」


 パッと振り返ると、上城高校の制服を着た女の子が一人。ネクタイの色も、俺と同じく一年生を表す緑色だ。黄金色の髪をシュシュで留め、瞳は透き通る碧。いや、どこからどう見ても外国人……ってか留学生、だよな。確かに、上城高に留学生受け入れ制度があるのは知ってたけど、ばったりこんな所で会うなんてことあるのか⁉︎


「……………………Kamishiro……?」

「あー、えー……」


 困惑する俺のことはお構いなしに流暢な英語で話す女の子。……いや確かに、俺は進学校に合格するレベルには中学までの英語がキッチリ読める訳だけど、あくまで読めるだけだ。受験科目にリスニングはなかった。読み書きは出来ても、話したり聞いたりは出来ない……と言うのは日本人にありがちな英語と言うのをどこかで聞いたことがある。

 いやいや、それは置いといて……とにかくなんか返事しないと。俺は唯一聞き取れた単語を返した。


「えっと……上城?」

「Yes!」


 ニコニコと微笑む女の子。そして、彼女が差し出したスマホの画面にはナビゲートアプリが。うーん……つまりは学校への行き方が分からない、ってことなんだろう。確かに、駅から学校までは若干道が入り組んでいて分かりにくい。いやでも、留学生とは言え仮にも生徒なんだし分からないってことあるのか……?

 受験の時は、人の流れに着いていくだけで良かったから楽だったけど。

 とにかく、何かしら反応しないといけない。こっち来て、と手でサインすると、「I got it!」と返してくれた。多分、「分かった!」と言うことなんだろう……多分。全然自信無いや。


 学校へ歩き始めてすぐ、再び女の子が話し始めた。


「Hey」

「ん?」

「What’s your name ? I’m Alice. Alice Stuart!」


 名前はアリス。アリスか。今のが自己紹介なのはリスニング初心者の俺でも分かったぞ。


「あ〜……浩人。Hiroto Morishita」

「Hiroto?」

「い、イエス」

「Okay, it's a pleasure to meet you!」


 心底嬉しそうなので悪いことは言ってないんだろうけど……とにかく英語が分からん!


「あっそうだ」

「huh?」


 こんな時は、スマホに入ってる翻訳アプリが使えるはず! 一昔前までの自動翻訳はめちゃくちゃだったらしいけど、最近のスマホに搭載されてるやつは普通に会話に使えるらしいからな。幸いなことに、俺のスマホは「高校合格祝いに」と買ってもらった最新型だ。

 翻訳アプリを起動し、「これに向かって話しかけてくれたら、俺が分かるように翻訳されるから」と言うと、みるみる英文になっていく。それを見たアリスは短く「I see」とだけ言った。すると、日本語で『分かったわ』と訳された。

 おぉ……初めてこの機能使ったけど、有能だなコイツ。

 そうして二つ三つやり取りしている間に、学校の正門に到着した。駅から学校まで、距離自体はそんなに離れていないのだ。


「ほら、ここが学校。どう?」

『綺麗な校舎!』

「おはようございまーす」


 正門にスーツ姿の女の人が立っている。名前は分からないが、首から緑色の紐のカードホルダーを下げている。要は一年生担当の先生と言うことだ。ちなみに青が二年、赤が三年に対応している。


「おはようございます」

「Good morning!」

「おはようございます。でもね、歩きスマホはダメだよ?」

「あ……いや、別にゲームしてたとかじゃなくて……これです」


 そう言って俺は翻訳アプリの画面を見せた。それを見た先生はハッとした表情になると、彼女の早とちりを謝った。


「あっ、もしかして留学生のアリスさん?」

「Yes!」

「流石に英語を聞いたり話したりとかはまだ出来ないのでやり取りにスマホ使ってて……」

「そう言うことよね。ごめんねー、早とちりしちゃった。始業式は八時半からだけど、その前に朝礼があるから自分の教室で待っててね?」

「分かりました」


 無事に正門を潜った俺たちは、靴箱で靴を上履きに履き替え、一年の教室がある三階へ階段を登っていた。


「なぁアリス、アリスは何組?」

『私? 私はC組。ヒロは?』

「おぉー……一緒だよ。C組」

『本当に⁉︎ 嬉しい!』


 純粋に同級生と知り合えたのは俺も嬉しい。いや、アリスの喜びようは俺よりも数段上な喜び方だけど。今のアリス、めちゃくちゃ満面の笑みだし。

 って言うか、アリスは俺のことを「ヒロ」って呼ぶのか。まぁ、呼び名なんて変なのじゃなければ何だって良いけどね。


「Good morning!」


 元気良くC組の教室へ入っていくアリスだが、すぐに怪訝そうな顔をして出てきた。


「どうした?」

『まだ誰もいないの』

「そりゃそうだ、まだ七時半にもなってないし」

『みんなもっと遅いのかな』

「いや、俺らが早いだけだよ」

「Ah huh?」


 俺も続いて教室に入る。どうやら、黒板に座る席が書いてあるようだ。俺の席は……あれ、一番右後ろか。他のクラスメイトの名前を見るに、出席番号は例に漏れず五十音順なのが分かる。まさか森下の「も」で出席番号三十九とは……初めてだな。


「Hiro〜?」


 アリスがこっちこっち、と手招きしている。俺が行くと、彼女は一番右後ろの席を指差した。


「My number is forty!」

「え?」


 今のは流石に完璧に聞き取れた。アリスの出席番号は四十番らしい。あれ、ってことはもしかして……。


「……俺ら、隣?」

「Yes!」


 あ、あー、うん。そーゆーことね、完全に理解したわ。つまり、俺らはまぁ当分来ないであろう席替えの時まで隣合わせ……。嫌じゃないし、むしろ女の子が隣なのは嬉しいんだが……緊張がヤバい。さっき同じクラスって分かった時も心臓がお跳ねになられたことだし。


 ちなみに隣って言うのは一列空けて隣、って言うんじゃなくてガチの隣で、机がくっ付いてる方。二人一組が二十ペアで計四十人……と言うことだ。


「いやでも、俺が欲しかったのはこういう刺激もだよな……やっぱ受験して正解だったなぁ⁉︎」


 一人隠れて拳を握る俺とは裏腹に、アリスはなんだか退屈そうだ。


『ねぇヒロ、何かしない?』

「へ?」


 アリスは俺の独り言には構わずに話しかけてくる。見ると、アリスが暇そうに机に座って突っ伏している。必然的に、アプリを使わないと話すこともままならない俺も隣に座っている。


『みんなが来るのはまだまだ先なんでしょ?』

「八時前だからなぁ……そろそろ誰か来てもおかしくないけど。流石に、八時過ぎたら誰かしら来るよ、多分」

『そう……』


 ぺたーん、と机に突っ伏すアリス。三分ぐらい静かな時間が流れる……が。間が持たなくなって、ついに話し掛ける。


「そういやさ、アリスって日本語話せるの?」

『え、日本語? あんまり……日常会話も怪しいかも。日本で三年間勉強するんだから、最低限の日本語の勉強もしてきたけど……あはは』


 頬をかき、苦笑いするアリス。日本語は不得意、と……。


「じゃあ、アリスの母国語は?」

『英語。私、ロンドン生まれロンドン育ちだから。それから、ドイツ語も少しだけね。でも、日本語は英語とかドイツ語とは全然違うから……』


 そう言って、再び笑うアリスだった。話していると、タッタッタッ……と廊下から走る音が聞こえて来る。


『あ。やっと誰か来たのかな?』

「多分」

『そう言えば、この学校にヒロの知り合いっているの?』

「一人だけね。朱理って言うんだけど」

『アカリ……ヒロのガールフレンド?』

「そんな甘いのじゃなくて。中学の頃に、同じクラスの委員長だったヤツだよ。ただ、クラス全体で仲が良かったから名前で呼び合ってたんだよね。その名残で、今でも名前で呼んでるけど」

『なるほど』


 アリスが頷いた所で扉がガラガラッと引かれ、さっき正門で会った先生が息を切らし切らし顔を覗かせた。


「あれ、さっきの……」

「ごめん、二人とも! 今日は体育館で集合だったみたいなの!」

「え」

「まだ時間あるから急がなくていいからね。あっでも、私ここの鍵閉めて行かなきゃだから一緒に行かない?」

「分かりました。アリス、もう行こうぜ」

「All right!」


―・―・―・―・―・―・―


 先生に連れられ、体育館へ。中に入ると、もう結構な人数が列を為して並んでいた。


「俺らはクラスの最後だからここらで待っとこうぜ。どうせ前行っても『もっと下がれ』って言われるだけだし」

『適当に並ぶんじゃダメなのね』

「あー、そうだな」

『どうして?』

「え、理由? ……いや、なんでなんだろうな? そう言われれば確かに考えたこと無いな。そういうものだと思ってたわ」

『ほんとに、日本人って規則正しいのねぇ』


 アリスが感心したように頷く。これは……褒められてるんだろうな、多分。

 俺たちが来たのは本当に最後の方だったらしく、一つ二つ話している間にいくつかのクラスが並び終わっていた。C組も前の方は並び終え、後は俺たちが並ぶだけだ。


「流石に始業式の間はスマホ触れないからまた後でな」

『わかった!』


 そう言うとアリスはパッと笑った。あ……笑った顔もかわいい。

 それからすぐ、今年の始業式が始まった。


「……えー、全員揃ったようですので、令和三年度始業式を始めさせて頂きます。まずは校長先生からご挨拶を」


 今喋っているのが教頭だ。四十代くらいの、教頭としては若めの男。で、今壇へ向かって歩いているのが校長だ。こっちは初老のおじいちゃんって感じだ。還暦迎えたか迎えてないかぐらいのね。一昨日の入学式の時にはこの二人を見た。

 って、もう校長の話終わった。早いな。


「続いて、新任の先生の紹介です。御島先生です、どうぞ」


 呼ばれて舞台袖から現れたのは、さっき教室まで来た先生だった。アリスが俺の肩を叩き、振り返ると「あれ!」と口が動いてる。振り返り、うんうんと返した。


「上城高校の皆さんおはようございます。今年からここの教師になりました、御島美希と言います。よろしくお願いします!」

「御島先生はここの卒業生で、またこの上城に戻ってきてくれました。今の三年生は、教育実習生の時の御島先生を覚えてる人もいるんじゃないですか?」


 三年生達がうんうんと頷く。教育実習生って期間が終わるとついつい忘れがちだけど……あんなに覚えてる人多いのか。


「で、この御島先生ですが……担任は一年」


お……一年か。クラスはF組までの六クラスある。三年生からは「あ〜……」と残念そうな声が漏れる。


「C組の担当です」

「「「おおー!」」」


 C組から歓声。おお……うちか。


「今年の新任の先生は御島先生ただお一人です。連絡も以上なので、始業式は終了です。各々、自分のクラスへ戻って終礼を受けてください。では、解散」


 体育館に残る意味も無いし、教室に戻るとするか。


「そんじゃアリス、帰ろ――」

「やっほ、浩人じゃん」


 俺の言葉が終わる前に、後ろから聞き覚えのある声で呼び止められる。振り返ると、中学時代のクラスメイト、辻元朱理が立っていた。


「朱理か。どうした?」

「いや、浩人も上城って聞いてたけど、ホントに来るとは思ってなかったから」

「俺がバカだって言いたいのか? こやつめ」

「あははは、んな訳無いでしょ!」

「そう言えば、お前のクラスは?」

「あたしはAだよ。A組の二十七番」

「俺はCな。Cの三十九」

「えー、『も』でそんなに後ろなんだ」

「そうそう、意外だよな」


 少しばかり話していると、朱理の後ろから「おーい朱理ー、戻るよー」と女の子が呼んでいる。


「おー……早いな。もう新しい友達か?」

「そ。浩人もさっさと友達作りなよ! それじゃ!」


 ニッと笑うと、朱理は彼女を呼ぶ友達の元へ走って行った。つい一ヶ月前まで同じクラスだったし、前までと何も変わってないな。いや、そりゃそうか。たった一ヶ月だもんな。

 っていけね。アリスを待たせたままだ。


「ごめんアリス、お待たせ」

「だ、だいじょうぶ」

「おー日本語! 上手いじゃん。発音も」

「……そう?」

「行ける行ける。ま、取り敢えず帰ろうぜ」


 ほんの一言二言だけなのに、体育館にはもう誰もいない。早く教室に戻らないと。


―・―・―・―・―・―・―


 小走りになりながら教室へ戻ると、思った通りほぼ全員が座っていた。御島先生も教壇に立っている。


「遅れてすいません」

「大丈夫大丈夫、私も今来たばっかりだから」


 そう言って諸々の配布物をドンと机に置き、俺たちが座ったのを見ると話し始めた。


「はいそれじゃあね、早速始めようと思います。さっき教頭先生からも紹介して貰ったけど、改めて自己紹介します。御島美希、社会科の担当です!」


 パチパチパチパチと拍手を贈られた先生はありがとうねと言って話を続ける。


「みんな気になってるよね、時間割。配りまーす」


 初めに時間割、校内誌、学期始まりのアンケートにその他諸々が配られた。


「今日はもうこれでお終い。始業式だけだからね。ってな訳で解散。また明日からの授業で会いましょう!」


 そこからは騒がしかった。前後左右の席同士で話し始める者、先生と喋る者、取り敢えず帰る者など色々だ。俺はと言うと――。


「なぁアリス、駅まで一人で戻れそうか?」

『……ううーん。ダメ、だと思う』

「じゃあ一緒に帰るか。駅からは帰れるんだよな?」

『最初に会ったのは駅前の交差点だったでしょ?』

「分かってる分かってる。冗談」

『もう』

「学校でしたいことは他にある?」

『先生と話したい』

「御島先生は……あれ、もういないじゃん。職員室行こう」


 こくん、とアリスが頷くのを見て、俺たちは鞄を持って教室を後にした。意外にも、外国人のアリスに物珍しそうにとやかく言ってくる奴はいなかった。俺が思っていたよりも民度が高いと言うか、モラルがあると言うか。


 さて、職員室があるのは一階だ。校内にある地図を見ながら職員室へ向かう。職員室の中は……まだ大半の教室が終礼をやっているのだろう、ほとんどの机が空いている。


「御島先生ー?」

「はーい!」


 先生を呼ぶと、返事と共に軽い足音。


「はいはい、先生だけど」

「アリスが先生に話があるらしくて」

「アリスちゃんが? どうしたの?」

『えっと……全然深刻な話では無いんですけど』

「んー。まぁ食堂行こうか。そこだったら気兼ねなく話せると思うし。流石に、そこの相談室でって言うのも嫌でしょ?」


 そう言って屈託なく笑う先生に連れられ、食堂へ向かう。その途中。


「さっき言ってた相談室ってなんなんですか?」

「進路相談室……って名前の部屋なんだけど、実際はアレだよ。校則違反した生徒を叱るところ」

「あー……」

「だから食堂。食堂はつい最近建て替えられたばっかりでね、テーブル席にカウンター、個室まであるんだから。個室は申請式だけど」

「建て替えられた、って言うのはホームページに出てましたよね。入学前に見たんですけど」

「そうそう、良く見てるじゃん。まぁ、私が卒業してから建て替え工事が始まったらしいから、まだ使ったこと無いんだけどね。入ったことはあるけど。っとー、到着!」


 先生は食堂の食券機の横の端末を操作し、カードリーダーに職員カードを通すと、「こっちこっち」と進んでいく。

 食堂の個室はしっかり個室で、パーテーションで適当に区切っただけではない。ちゃんと小部屋になっている。

 三人とも座ると、先生が話し始めた。


「へぇ……個室もしっかりしてるんだ。ごめんね、話すのにかこつけて食堂見たいな、って思っちゃったからついこっち来ちゃった」

「じゃあ相談室みたいなのは……」

「また別にあってね、そっちも話しやすいオープンな雰囲気の部屋なんだけど……」


 先生はあぁいけない、お話聞かなきゃね、と先生自身に言い聞かせると、アリスの方へ向き直った。


「それで、お話……って行きたいんだけど、君の名前は? ごめんねー、まだクラス名簿に目を通し切れてなくて」

「俺ですか? 森下浩人です」

『ヒロは今朝、迷ってた私を学校まで案内してくれたんです』 

「森下くんね。で、アリスちゃんはそう呼ぶのね……ふふ、私もそうしよっと」

「それってどういう……」

「ヒロくんって呼ぶね」

「あ、はい……呼び方とか気にしませんけど、なんか慣れないっす」

「結構呼ばれそうなあだ名だけど。呼ばれたことない?」

「いやぁ、無いですね。小中ずっと名前で『浩人』って呼ばれてました」


 なんて言うか……親しみやすさが物凄くある先生だな。こういう先生は苦手じゃないし、むしろ好きな方だ。良い意味で気楽だしな。

 先生が「それじゃあ本題……」と呟く。


「アリスちゃんのお話って言うのは?」

『えーと、その。ほんとに大したことなくて、一年間お世話になるので……』


 それを聞いた先生は優しく微笑んだ。


「なぁんだ、そんなことか。先生安心したよ」

「え……?」

「私はてっきり、始業式の日からもう意地悪されたとかそんなのかとばっかり! いやぁ、早とちりって良くないね。お世話になります、って話だったけど、私の方こそ教師一年目だからね。むしろこっちがよろしくお願いしますって感じだよ」

「まぁ、明日以降友達作ろうぜ。な?」

『それもそっか。なんかすっごい緊張してたのが解れたかも』

「良かったじゃん」

「そうそう」


 そんなこんなで食堂から出て、先生に見送られる。見送られるのだがその途中、先生がヒソヒソ声で話しかけてくる。


「ねぇねぇヒロくん」

「なんですか?」

「教師としてはあんまりこーゆーの聞いたらダメなのかも知れないけどさ……二人って付き合ってるの?」


 先生の顔が「the先生」って感じの顔から年相応の若い女の人の顔に変わった。好奇心マシマシって感じの。だがそんな冷静さを保てる筈もなく、途端に心臓が跳ねる。


「え……? いやいやいや! マジで朝知り合ったばっかりですよ?」

「なぁんだ、違ったのかー。私はてっきり――」

「先生、早とちりっすよ」

「はいはい。そう言うことにしておいてあげる♪」

「いやホントに違うんすけど……」


 そう弁明するが、「分かった分かった♪」と言いながらニヤニヤ笑う先生に見送られ、俺たちは学校を出たのだった。



#あとがき


 改めて、著者の酔鶴と申します。この度は手に取って頂き、ありがとうございました。



 それでは。硬っ苦しいのはやめにして、ここからは気軽にやっていきますよ。色々お話について喋っていきます。

 私、作品の裏話的なことを書いてあるあとがきを読むのが滅茶苦茶好きで、それを私自身の作品でもやっている……ま、言ってしまえばただの自己満なんですけど、それでも最後まで付き合って頂ければ幸いです。


注)私のあとがきは私が書きたいことを書きたいままにだらだらと(ココ重要)書いていくコーナーです。そこの所だけは、ご容赦を。



 さて、私酔鶴は普段pixivにて東方Projectの二次創作を執筆しているんですが……来てしまいました。二次創作特有の「飽き」が。二次創作書くのは好きだし、東方原作もやるくらいには東方好きなんですが、どうしてもこの「飽き」からは逃れられなくってですね。

 なんなら、このあとがきも東方ボーカルを聞きながら書いてます。

 ……まぁ、そんなこんなでオリジナルに手を出した、と言うのが今作の執筆動機です。いつかはオリジナルの小説をシリーズでpixivに出したいなとも思っていましたし。ですが、「あのさぁ……結局お前、オリジナル作品のあとがきで二次創作の宣伝しに来たんかよ、帰れ帰れ」と叱られてしまいそうなので、二次創作の話はここまで。


 ここからはちゃんとこの作品についてお話します。

 とは言っても、初回ですし登場人物紹介くらいしかすることは無いんですが……。

 あっ、でも一つだけ。


 今作は特に現代日本の常識から外れた結果には絶対、断固としてしません!(主人公が無双してハーレムエンド、とかね)


……一夫多妻制とか、明治維新の過程で廃止されたんだよなぁ?

 それから、ガチガチのラノベ的展開(例えば、チート能力やら異世界転生やら)にもする予定はありません。現代日本の(以下略)ですし、何より私自身がこれ系を書くのを全く得意としていないんですよね……試しに一度書いてみたんですが、どうしても何れかの著名作と似通ってしまうと言うか。

 あっ、異能・異世界系ラノベ自体は好きですよ。ただ書くのが苦手なだけね。まぁ、広告でよくやってる量産型ラノベ・漫画はどうなんだろうと思ったり思わなかったり……。


 まま、それは横に置いておいて……。


「流行に乗る時は何故か絶対に遅れてから乗る習性」が私にはあるんですが、自分でこの習性のことを「逆ミーハー」と呼んでます(隙自語)。いや、我ながら草。



 はい。滅茶苦茶話が脱線したので戻します、すいませんでした。

 それでは、登場人物の紹介ですね。サクサク行きます。


 まず主人公。浩人くんです。森下浩人。

 彼は幼小中と地元でゆったりと学生生活を過ごしていました。中学でもクラス内はとても平和で、男女隔たりなく仲の良い極めて健全な学校生活だったのですが、ここで浩人くんは新たな環境を求めて――彼自身は「刺激」と言っていましたが――私学の高校を受験し、無事合格して上城高校へと入学しました。まぁ、待っていたのは彼の予想を大きく超える「刺激」だったんですが。


 次。ヒロイン枠。もう誰がどう見ても分かりますね? はい正解。アリスちゃんです。アリス=ステュアート。

 名前ですが、アリスは単に私が好きな名前だから。ステュアートはあのスコットランド王家のステュアート家から取りました。今作に出てくるアリスは貴族でもなんでもない、雨慣れのした極々普通のロンドンっ娘ですけどね。

 わざわざ言わなくても聡明な読者さんには分かっておられると思いますが、彼女の発言の内『』で囲まれたセリフはスマホの翻訳アプリ、つまり彼女が英語で話した言葉が日本語になって表示されています。

 「」内の日本語は彼女の持つ数少ない日本語知識で話している日本語です。発音も日本人と比べると格段にたどたどしいので、そこは脳内補完して頂ければ。

 ……でも小説に出て来る留学生のおぼつかない日本語かわいい、かわいくない?


 次、御島先生。御島美希。

 彼女は浩人やアリスの所属する一年C組の担任です。社会科、世界史担当。教職一年目のガチ新人さんですが、教壇に立った経験が無いだけで、人間はすごく出来上がった人物です。私の「こんな先生だったら良かったよなぁ」と言う欲がふんだんに最後までたっぷり詰まっております。

 その点トッポは最後まで―――(検閲済)。

 また、彼女は上城高校のOGで、大学で教員免許を取り、再び上城高校へと戻ってきました。


 ラスト。朱理ちゃん。辻元朱理。

 彼女は浩人の中学時代の同級生で、浩人のクラスの委員長でした。「中学の同級生」枠を男の子にするか女の子にするか悩みましたが今回は女の子に。浩人との仲の良さを+100〜-100の間で表すなら+40くらい……ですかね。見知らぬ他のクラスメイトとかと比べたら仲は格段に良いですがめちゃくちゃ良いわけでもない、みたいな。まぁ、ここから更に仲良くなるかその逆を行くのかというのは浩人の行動次第かなと。


 以上、四名のご紹介でした。始業式後に朱理を呼びに来た女の子はモブ(だと思う)なので割愛です。


 あぁそうだ、言い忘れてましたが、この世界はコロナの全くない平和な世界です。念の為ね。だって、コロナが流行ってる世界線じゃ満足に研修旅行も出来ない、そうでしょう?


 それから……今私のリアルがめちゃくちゃ忙しい為、「今作は週一で」とかが出来ない状況です。第二話だけは割とすぐ投稿出来るメドが立っていますが、第三話以降はほぼ書けていません。なので、もし

「はー……しゃあねぇな。時間空いてでも良いから、お前の続編読んでやるわ」

と思って下さるのなら是非フォローをお願いします。「○曜の×時になったら定期投稿されてるな、読みに行こ」となるように出来れば良いんですけど……いや、申し訳ないです。



《リアルの影響強まる酔鶴》

・かかってこい、相手になってやる!

・リアルの圧力に屈する。


ログ:イベント「リアルの影響強まる酔鶴」にて酔鶴が「かかってこい、相手になってやる!」を選択。リアルが酔鶴に宣戦布告。



 それでは最後に。後書のラストまで読んで下さった方、長々とお付き合い頂きありがとうございました。後書きだけで二千字です。Hoi2すこ。今でもちまちまやってます。でもフィンランドプレイだけはガチで辛え……。


著者:酔鶴



P.S.アリスの言ってた「ガールフレンド」って言うのは「女友達」じゃなくてお付き合いのある「彼女」って意味だゾ! ……中学の英語で習う、はず。


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