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プロローグ
―――誰かの泣き声が聞こえる。
「…きて………だ…にも……」
すぐそばに誰かが居る。そして聞こえた泣き声は、その誰かのものだと、頭では理解できた。
ただ、感覚がひどく遠い。
目が、耳が、肌が機能を失っていくのが分かる。
痛みはなく、苦しさも感じない。なのに意識だけがはっきりとしない。
「な……どう……」
泣いている。その泣き声を俺は何度も聞いた。
聞きたくない、そう思って今まで何度もその涙を拭ってきた。
泣かないで。
その言葉は頭に浮かぶだけで、泣き声の主に伝えられない。
泣かないで。
涙を拭おうとしても、思った通りに腕は動いてくれなかった。
泣かないで。
大丈夫。
―――――またきっと出会えるから。