過ぎ去りし過去
今回はリリムとフィアーナイトが出会った過去のお話です
それは昔・・・リリムが魔人となり始めて少し経った頃だった
人から魔人となった者達は少なくなかったのだがリリムはその中でもかなり弱く
当時は蔑まれたり捨て駒にされたりなどしていた
(やっぱり私は魔人になってもダメなのかな・・・)
リリムはどんな風になっても自分は役に立つ事は出来ないとそう思っていた
そんなとある日の事だった
急遽、四天王のリーダーであるキグスに呼ばれたリリムは足取り思いながらも
とりあえず呼び出された部屋へと向かっていた
「はぁ・・・私も用済みって事なのかな・・・」
この組織で使えない者を切り捨てるのは何度も見てきた
今度は自分がその立場になるのだと思いリリムは覚悟を決める
そして部屋の前に着きノックをして扉を開けるとそこには呼び出したキグスともう一人
「・・・来たか・・・紹介しよう・・・この者の名は・・・」
「・・・フィアーナイト・・・!」
そう・・・彼こそ四天王の中で最強と言われていた男・・・
そしてリリムと同じく人から魔人の力を経た者でもあった
「おい・・・客が来るなら先に言えよ・・・とりあえず俺は帰るぞ」
フィアーナイトはリリムが現れたのを見て明らかにキグスへの事務的なようなのだと察して
その場を去ろうとするのだが
「いや・・・今回はお前にも関係のあることだ・・・」
キグスはフィアーナイトを呼び止めて話を続けた
「はぁ?俺はお前の話を聞くのはいいとして・・・こいつは中級魔人にもなれてないんだろ?
そんな奴と一緒に何の話をしようってんだ?」
フィアーナイトは実力もそこまでないリリムと一緒にどんな話をするつもりなのか聞く
「そこまで難しい話ではない・・・お前にはこのリリムの教育を頼みたい」
何とキグスはフィアーナイトにリリムの教育を任命したのだ
「おいおい・・・それは上級魔人の仕事だろ・・・何で俺がしなくちゃいけないんだよ」
もちろん納得のいかないフィアーナイトはどうして自分がそんな役目をしなくてはならないのか聞く
「私の見立てではこの少女はかなりの素質を持っている・・・
それこそ四天王候補にすら上がるほどな・・・だが・・・」
そう言ってキグスはリリムの方をじっと見ていた
「残念だが自分に自信が持てず特性も理解していない・・・
だからこそお前に任命しようと思っているのだ・・・どうかな?」
キグスはリリムがまだ実力の半分も発揮できてないと思っており
もしその可能性を引き出せる人物がいるとすればそれはフィアーナイトしかいないと思っていたのだ
「・・・わかっているとは思うが・・・俺は俺の目的があってここにいる・・・
もちろんそれを優先して行動する・・・それはわかってるよな?」
フィアーナイトはあくまで自分の目的を優先して行動すると宣言する
「ああ・・・無論それで構わない・・・」
「・・・いいだろう・・・こいつの面倒はしばらく俺が見てやる」
フィアーナイトは仕方なくリリムの面倒を引き受けることにした
「えっと・・・よろしくお願いします!」
後半から全く話についていけていなかったリリムはとりあえずこの人が師匠になるのだと思い
とりあえずフィアーナイトに対して頭を下げる
「先に言っておくが・・・俺は甘やかす気もなければ守る気もないからそのつもりでいろ」
フィアーナイトは自分はそこまで面倒を見るつもりはないとリリムに釘を刺した
それを聞いたリリムはやはりこんな扱いなのかとがっくりしていた
「さてと・・・それでは早速お前達に最初の任務を言い渡そう・・・
先ほど中級魔人達が襲われ倒された・・・どうやらお前の復讐相手の仕業だそうだ」
キグスはそんな二人に対して新しい任務を言い渡した
(すごい殺気?!まるで体が縛られているように動けない!!)
それを聞いた瞬間にフィアーナイトはリリムが怯えるほどの殺気を放っていた
「そうか・・・ならその任務を受けない選択肢はないな・・・!」
フィアーナイトはその依頼書をキグスの手から奪い取りその部屋から出て行く
「ちょっ?!待ってください!!」
リリムはキグスに挨拶をして急いでフィアーナイトの後を追いかけていく
(さて・・・この結果がどうなるのか・・・期待しておくとしよう・・・)
キグスは去っていった二人を見ながらそんな事を思うのだった
「・・・・・」
フィアーナイトは自分の部屋に戻った後、キグスから受け取った依頼書をじっくりと見ていた
(・・・すごい真剣・・・それほどまでに本気なんだ・・・)
それを見ていたリリムもどれだけフィアーナイトが必死なのかが伝わってきた
「・・・よし・・・行くぞ」
そしてフィアーナイトは一通り目を通し終わるとリリムを連れて
中級魔人達が襲われたとされる場所へと向かった
「ここが例の場所か・・・なるほどな・・・結構な戦闘があったみたいだが・・・
おそらくこの跡は俺ら側じゃなく相手側ってところだろうな・・・」
フィアーナイトはその戦闘跡は魔人側ではなく相手側だと思っていた
何故なら襲われたのは中級魔人達であり彼の知る限りではここまでの戦闘跡を残せるほどの力はない
ならこの跡を残せるのは襲ってきた犯人以外に他ならないだろう
「なるほど・・・キグスの言う通り・・・犯人は間違いなく・・・鬼だな・・・!」
フィアーナイトはすぐに犯人が誰なのかわかり他の手がかりを探しに向かう
「あの〜・・・そもそも鬼とはなんなのですか?」
ここまで勢いでついてきているリリムだったがよくよく考えれば
今、後を追っている鬼については何も知らされてはいなかった
「・・・鬼っていうのは魔人と同じく昔から存在する怪物だ・・・
魔人よりは新しい方だがあいつらの主な目的は人間だ・・・
あいつらはさまざまな方法を使って人間を集めそして・・・喰らう」
フィアーナイトのその言葉を聞いた瞬間にリリムの体が強張る
自分も元は人間でありそんな怪物がいるなんて知らなかったからだ
「そして・・・俺の家族は鬼に食われた・・・三本の角を持つ鬼に・・・!」
そして同時にフィアーナイトがどうしてそこまで鬼に執着するのかも理解した
彼にとって鬼とは復讐の相手であり怒りの根源なのだ
(そうか・・・だからこの人は身も心も魔人に売ってしまったのか・・・)
リリムは自分とは違う理由で魔人の力を得たフィアーナイトの過去を知り
何故だかとても他人事のようには思えなくなっていった
「フィアーナイト様・・・必ず鬼を探し出して仇を取りましょう!」
リリムはそんな彼に必ず鬼を探し出そうと意気込んだ
「・・・・・」
それを見ていたフィアーナイトはまるで鳩が豆鉄砲を食ったような感じで止まっていた
「?どうしたんですか?」
「いや・・・お前は魔人らしくないなと思ってな・・・」
「そう・・・でしょうか・・・」
リリムはそれを聞いて素直には喜べなかった
それもそのはず彼女はすでに魔人の仲間として働いているのに
魔人らしくないと言われてしまえばそれはまるで使えないと言われているようだったからだ
「ああ・・・普通はお前みたいに他人に干渉なんてせず自分の思うがままに行動する
それが魔人って生き物だからな・・・だがお前は・・・優しい心を持っている・・・」
しかしフィアーナイトは彼女を出来損ないだと思って言ったのではなく
むしろ魔人の中には絶対にないその優しい心を褒めていたのだ
「優しい心・・・ですか・・・」
リリムはその言葉を聞いてあまりしっくりとはきていなかった
おそらくそれは彼女がそれを自覚していなかったからだろう
「まぁ・・・その心は魔人にとってはいらないだろうがな・・・
だが・・・お前は多分その心を持って戦うのが一番良いんだろう」
フィアーナイトはリリムのその優しい心こそが彼女の一番の強さなのだと思っていた
「私の・・・強さ・・・」
リリムはなぜだかその言葉は胸の奥に染み込み満足していた
これまでの自分の人生が認めてもらえたような・・・そんな感じだった
「さて・・・話はとりあえず終わりだ・・・とっとと探しに向かうぞ」
フィアーナイトはすぐに話を切り替えて例の鬼を探しに向かおうとすると
「おやぁ〜?またまた獲物が来たな〜?」
木の上から声が聞こえてきて振り返るとそこには明らかに魔人ではない怪物がいた
「・・・頭に大きな角・・・間違いない・・・お前は鬼だな?」
フィアーナイトはその風貌からすぐに相手が鬼だと理解した
「その通り!俺様の名前は突付鬼自慢の角でお前らを串刺しにしてやるぜ!!」
そう言って突付鬼は木の上から飛び降りてフィアーナイトに角を刺してこようとする
二人はその一撃を躱して戦闘体勢をとる
「お前は貫き甲斐がなさそうだな・・・まずは鎧の男!お前からだ!」
突付鬼はどうやらフィアーナイトに狙いを定めたらしく
リリムには骸兵を召喚して戦わせていた
「さぁ・・・死ねぇぇぇぇぇ!!」
突付鬼は自分の角を向けて全速力でフィアーナイトに突っ込んで行ったが
「なっ?!」
その一撃はフィアーナイトに簡単に止められてしまう
「はぁ!!」
そして自慢の角をフィアーナイトは叩き折った
「ガァァァァァ?!!俺の自慢の角がぁぁぁぁぁ!!」
突付鬼は自分の角を折られてショックのあまりに取り乱している
『デッ・・・ド・・・』
その間にフィアーナイトはベルトのボタンを押す
「オラァ!!」
そして足にオーラを貯めて必殺の一撃を放った
「ギャァァァァァ!!呪天様ぁぁぁぁぁ!!」
突付鬼は最後に自分の主人の名前を叫びながら爆散した
「すごい・・・!」
リリムはその戦いを見て感動していた
自分もあんな風に戦いたいあの人のようになりたいと
それからリリムはフィアーナイトを兄と呼び慕うようになった
フィアーナイト自身も彼女を死んだ妹のように可愛がっていた
・・・しかしそんな日々を過ごしていた時だった
フィアーナイトが彼女の元を離れたのは・・・
何も言わずに去ってしまったフィアーナイト
そんな彼に対してリリムは何を想うのだろうか?




