黒い歴史の象徴
今回は愛心がメインです
アガレプトを倒して数日、最近街では神隠しというものが世間を騒がせていた
なんでも急に何人かと連絡が取れなくなるなどして行方が分からなくなる事があり
わずか数日で帰ってくる事もあれば今もまだ所在が分からない人達もいるそうだ
戻ってきた人達に話を聞こうと思っても
行方が分からなくなっていた期間の記憶は失っているようだ
「まぁ・・・確かにそんな事が出来るのは魔人に間違いないんだろうが・・・
どんな能力なのか分からないし人間を逃すのも意味が分からない・・・」
さすがの凶夜もこの噂を聞いても今回の混成魔人がどんな能力を持っているのか理解できなかった
「凶夜さんでも分かりませんか・・・これでは迂闊に手が出せませんね・・・
ただでさえ空さん達はしばらくの間、戦えないというのに・・・」
実は空達はこの前のアガレプトとの戦いで変身ブレスが壊れてしまい
来島博士が修理しているので今は戦いに参加する事が出来ないのだ
そんな中で今回の事件に対処しなくてはいけないのだが
「問題は今回の魔人は人通りの多い場所でも姿を見られてないというところか・・・」
そう・・・今回の神隠しに関してはそれが行われた瞬間を誰も目撃できていないのだ
それこそ隣を歩いていた人物が突如として消えてしまうような感覚だ
近くにいた人でそんな風に感じるという事は連れ去られた本人も魔人に気がついてはいないだろう
そしてそれは同時に凶夜達の力を持ってしても敵を見つけられないかもしれないという事でもあった
「今も行方不明になっている人達の捜索は続いているそうですが・・・やはり・・・」
現に警察なども動いて行方不明者を捜してはいるみたいなのだが成果はないそうだ
「だろうな・・・むしろその捜査員がやられる可能性だって十分にある・・・
どうにかして能力だけでも調べられればいいんだが・・・」
凶夜はせめて能力だけでも分からないだろうかと悩んでいた時、ふと違和感に気がついた
「・・・そういえば・・・いつもうるさいあの二人はどうしたんだ?」
それは愛心とリリムがこの場にいないという事だった
「二人ならもしかしたら何か分かるかもしれないと行方不明者が出た場所に・・・」
その頃、肝心の二人は事件の現場へと来て混成魔人の痕跡がないかを調べていた
「どう?何か見つかったりとかしない?」
愛心は自分では何も分からないのでリリムに進展を確認する
「残念だけど何もないわね・・・やっぱり本職の人でも見つけられないのは無理もないわ」
しかしリリムも混成魔人の気配すら見つけられなかったようで
警察が未だに見つけられていないのも仕方ないと話していた
「あんたでも見つけられないとなるとかなり厳しい事になったわね・・・」
愛心もそれを聞いてどうすれあ混成魔人を見つけられるようになるのか悩んでしまう
「あれ?二人も事件の事について調べていたんですか?」
そこへ聴き慣れた声が聞こえてきて二人が振り返るとそこには明里の姿があった
「あんたこそ・・・危険だって何度言っても懲りないわよね〜・・・」
まさかここに来ると思っていなかった愛心とリリムは頭を抱えていた
するとそれもつかの間、二人はすぐに何かがこちらを見ている事に気がついた
「っ?!しまっ?!!」
しかしそれに気がつくのが一足遅かったようで二人は謎の光に飲み込まれてしまった
「・・・ん?ここは・・・そういえば魔人の攻撃を受けたんだっけ・・・」
ようやく目を覚ました愛心は周りを見渡してみるが霧だらけで何も見えなかった
「リリム〜!明里〜!・・・やっぱり近くには誰もいないか・・・」
叫んでも何の反応もなかったので愛心はすぐに自分が一人なのだろ理解した
「・・・とにかくあたりを見て回りますか・・・」
このままここで立っているだけでは何も解決はしないと思い愛心は霧の中でも探索を始めた
しかしどこまで行っても霧だらけで全く何も見えてはこなかった
「なるほどね〜・・・確かにこれは神隠しと言われても仕方ないわ・・・」
愛心もその光景を見て自分が神隠しにあったのだと実感できた
だからと言って別に諦めた訳でもなくどうすればこの状況を打開できるのだろうと考えていると
「ん?霧が晴れてきたわね・・・もしかして脱出できちゃった?」
「っ?!!」
しかし霧が晴れていくとそこは彼女の知っている街ではなかった
いや・・・正確には彼女はこの街を知ってはいた・・・
何故ならここは彼女の暮らしている過去の街なのだから・・・
「嘘でしょ?!一体どうなってんのよ?!!」
あまりの事に同様の隠せない愛心だったがここでもう一つの違和感に気がついた
それは周りにいる人間が自分という存在に全く気がついていないという事だった
(もしかして・・・この街は全部幻覚って事?
だとしたらどこかにこの幻を作り出している奴がいるはず・・・!)
それを見てようやく自分が幻の世界に来たのだと悟った愛心は
急いで幻覚と作り出している混成魔人を探しに向かおうとした時だった
「っ?!あれは・・・!!」
突如として自分の目の前に幼き日の自分が現れて目の前を走り去った
「!もしかして!!」
そしてその走り去っていく過去の自分を見て愛心は何か分かったらしく急いで追いかけていった
追いかけていった先には案の定、自分の家があり
そして彼女はこの日に何が起こるのかを知っていた
意を決して中に入っていくとリビングの前で蹲っている過去の自分の姿があった
(・・・やっぱりこの日は・・・)
そう・・・この日は愛心にとってとても苦い思い出の日だったのだ
リビングでは母が電話で父に対して怒鳴っていた
その理由は愛心の誕生日が迫っているのに何も準備をしてなかった事はおろか
海外の仕事が長引いてしまって当日に帰って来れなくなったからである
愛心は海外での生活が多い父親と会えるのを心待ちにしていたのだが
それが叶わなくなってしまったのだと今まさに知ってしまったのだ
(・・・あれ・・・結局私・・・この後どうしたんだっけ?)
その頃、愛心と同じく過去の幻覚世界へと連れてこられたリリムはすでにそこから脱出していた
「ふぅ・・・どうやら出られたみたいだけど・・・一体どうなっているの?」
リリムは幻覚世界から抜け出た事は覚えているのだが
そこで何があったのかまでは覚えていなかった
「本当にやっかいな能力ね・・・おかげでどうして出られたのか全くわからないじゃない・・・
おまけにあいつは出てきていないみたいだし・・・
ここは一度、兄様に報告するしかないみたいね・・・」
ここで立ち止まってもどうにもならないと思ったリリムは凶夜にこの事を報告しに向かった
「なるほどな・・・確かにそれはやっかいな能力だ・・・
おまけにあいつまで閉じ込められるとはな・・・
こうなってくると本格的に敵の事を調べないといけないか・・・」
話を聞いた凶夜は本腰を入れて敵についての情報を調べなければならないと考えていた
しかし問題はやはり相手が見えないのに能力に捕まってしまうという事だった
「視線に気がついた時にはすでに能力を使われていました・・・
おそらくは相手を視界に入れる事で発動する能力だと思うのですが・・・」
リリムの言わんとしている事はなんとなくではあるがわかっていた
確かに視界に入った瞬間に能力が使われるというのならば死角に入ればいいだけなのだが
それだと自分達も相手を見つける事が出来ないので不利に働いてしまうのだ
そうなってくると相手を目視して捕まえなくてはいけないのだが
「それだと相手の思う壺か・・・どうにかして能力を封じる方法があればいいんだが・・・」
凶夜はまだ見てもいない混成魔人の能力を封じる方法はないかと考えていると
「あの〜・・・姿を見られないようにするのであれば私にいい作戦があります」
どうやら奏歌になにやら秘策があると話していた
「・・・わかった・・・そこら辺の作戦に関してはお前に任せる・・・
あともう一つは・・・どうやってあのバカを救出するかだな・・・」
凶夜は未だに閉じ込められているであろう愛心の事を考えるのだった
その頃、肝心の愛心は未だに幻覚世界から出られないでいた
いや・・・正確には出ようとしていなかったのだ
彼女の目の前には過去の自分がおりどうにか出来ないかと考えてしまい
それが邪魔をしてこの幻覚世界を抜け出すという事が頭から抜け落ちてしまっているのだ
(・・・わかっている・・・こんな事をしても過去なんて変えられないって・・・
でも・・・どうしてもこの顔を見ていると・・・どうにかしたくなっちゃう・・・!)
愛心はいつの間にか走り出していた
おそらくは父のいる海外へと向かおうとしているのだろうが
ここは幻覚の世界でありここではそもそも海外に行けるのかどうかすら怪しかった
案の定、そもそもこの街から出る事すら出来ず愛心は絶望に打ち拉がれる
そしてその様子を水晶越しに眺めている存在があった
「どうやら順調に過去の世界に飲み込まれたようだな・・・
しかし俺も運がいい・・・!
復活して早々にスピリットメイデンの一人を捕まえるとは・・・」
どうやらこの者こそ愛心を閉じ込めた張本人である混成魔人のようだ
しかもこの混成魔人はちゃんと自我を持っている方だった
「確かにスピリットメイデンの一人を捕まえたが・・・
もう一人には逃げられているのではないか?」
そこへナキアが現れて嬉しそうにしている混成魔人にリリムの逃亡についてを話す
「俺の能力は強力な分、使い勝手が悪くなってしまいましたからね・・・
おかげでせっかく捕まえた人間にも逃げられてしまっていますし・・・
でも・・・彼女は俺の能力からは逃げられないと思いますよ?」
しかし混成魔人は愛心ならば絶対に自身の能力からは逃れられないと話していた
「どうしてそう思うのか・・・聞かせてもらってもいいかな?」
ナキアは混成魔人がどうしてそこまでの自身を持っているのかを聞くと
「彼女は・・・自分のトラウマを克服できないから・・・ですよ・・・!」
過去の幻覚に囚われてしまった愛心
果たして凶夜達は彼女を助け出す事が出来るのか?!




