一流の剣士の戦い
今回はフィアーナイトと星童の戦いです
続く二回戦からはあまり気持ちのいい試合とは言えなかった
他の魔人達は卑怯な手で勝ち上がっており
とても剣の技で勝ち上がった感じの人はいなかった
そしていよいよフィアーナイトの番になった
「さて?俺の相手はどいつだ?」
フィアーナイトは対戦相手がどこにいるのか周りを見ると
「俺が相手だよ!」
後ろから大きな影が出てきて振り返ると
そこには大きな大剣とそれに見合うだけの巨体をした魔人が立っていた
「ちょっと前まで四天王の座にいた割には弱そうだな?
もしかしてビビったから四天王の座を降りたのか?」
巨体の魔人は挑発するようにフィアーナイトのことをバカにするが
特に本人は何も思っていないらしく肩を回しながら話を聞き流していた
「チッ!そのデケェ態度が続くのも今の道だけだ!!」
巨体の魔人がそう言った瞬間に試合が開始され魔人はそのまま突っ込んでいく
「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!」
そして大きく剣を放りかぶりフィアーナイト目掛けて振り下ろした
その衝撃であたりには砂埃がまいフィアーナイトの姿を確認できなくなった
「どうだ?!これが俺の実力だ!!」
魔人はまるで自慢するかのように高々とそう叫んだが
「なんだ?こんなものなのか?」
「?!」
急に声が聞こえてきて自分の切っ先の方を見ると
「なっ?!」
先ほどの一撃を無傷で受け切っているフィアーナイトの姿があった
「全く・・・少しは自信があるみたいだったから期待してたんだが・・・
これは魔人族のスカウトも目が曇ったみたいだな」
フィアーナイトは期待外れだと魔人のことをバカにしながら
受け切った剣を弾き飛ばした
「グゥ?!」
弾き飛ばされた魔人はそのまま体勢を崩して尻餅をついてしまう
「さて・・・それじゃあ一撃で終わらせるとしますかね」
フィアーナイトはこれで止めだと剣を真正面に構える
「ふざけんな!!終わるのはテメェの方だ!!」
魔人は怒りに身を任せてそのままフィアーナイトに向かって突撃する
「オラァァァァァ!!」
そして再びフィアーナイトに向かって剣を振り下ろすが
「・・・・・!ヌゥン!」
それよりも先にフィアーナイトが魔人を切り裂き
魔人はそのまま縦に真っ二つになって地面に倒れ爆発した
「はぁ・・・これじゃああいつを弱らせるのは無理か・・・」
フィアーナイトは少しだけ魔人達に期待をしていたようだが
その期待は大きく外れて星童が
自分と当たる前に弱る可能性は無くなってしまった
「まぁいいか・・・どうせ倒すことに変わりはないし・・・」
そう言いながらフィアーナイトは
自分を睨みつけている星童を睨み返すのだった
「・・・やはり来たか・・・フィアーナイト・・・」
そしてこの男・・・今回の大会主催者であるティウスも
フィアーナイトを睨みつけていた
「まぁこの大会自体、彼をおびき出す為のものだからな
それにしても・・・強いな・・・元四天王は伊達ではないか・・・」
ティウスは自分が憧れそして越えようと思っていた相手を見て
改めてその強さを実感していた
「さて・・・それではもう一人の最強を見てみるか・・・」
そしてティウスは今回のもう一人の目玉である
星童の戦いに目を向けるのだった
「ふむ・・・やはり僕の相手になったのは彼か・・・
ならばこの戦いは無様に勝つことは許されないな」
星童はすでに自分が勝つと確信しており
むしろどうやって勝つかを考えていた
「随分と自己中心的な鬼なのですね?
そんな考えはいずれ身を滅ぼしますよ?」
すると対戦相手であるレイピアを持った魔人が星童の前に立ち
そんなことを考えている場合ではないと告げる
「悪いが僕にとっては一番重要なことだからね〜・・・
それに・・・君がそんなに強いとは思えないしね?」
しかし星童は考えを改めるどころか
むしろ本人に向かって自信満々に勝利宣言をした
「その驕りがあなたの敗因となるでしょうね・・・!」
それに怒った魔人は静かにレイピアを構える
星童も背中に背負っている刀を抜く
そしてそれと童子に試合が開始される
「ハァァァァァ!!」
試合が開始されると同時に魔人は
凄まじいスピードで星童の懐に入り込み怒涛の突きを放つ
しかし星童それを擦りもしないで避け続けていた
「?!」
しかもただ躱しているのではなく
完全に目を瞑ったまま躱し続けていた
「どうしたんだい?このままだと僕に一撃も当てることはできないよ?」
星童は突きを避けながら次はどうするのかと相手を挑発する
「舐めるなよ?これが全力ではない!」
すると魔人は一度、星童から距離を取り始めた
そしてレイピアだけを星童に構えたまま力を溜める
「そこから突きでも放つつもりかい?」
星童は皮肉もこめてどうやって攻撃するつもりなのか聞く
「ああ・・・お前にすら捉えられないほどのスピードでな・・・!」
そう言った瞬間に魔人の足が車輪に変形し急激に回転し始めた
「ハァ!!」
そして魔人の掛け声とともに先ほど以上のスピードで星童の突っ込んでいった
さすがのこのスピードにはあの星童も避けることはできないだろう
誰しもがそんな風に思う中、放たれた一撃は
「なっ?!」
いとも簡単に避けられてしまった
「そんなにびっくりしなくてもいいんじゃない?
確かにスピードは目をみはるものがあるけどその分単調すぎる
僕ほどの腕になればどこ目掛けてくるか
なんで大体予測がつけられてしまうんだよ」
星童は圧倒的なまでの実力差を相手に見せつけた後
「それじゃあ・・・さよならだ!」
レイピアごと魔人を横一線に切り裂いた
魔人は下半身だけを残して地面に崩れ落ちそのまま爆発した
「やれやれ・・・この分だと期待できそうなのは一人しかいない気がするね」
星童は期待外れだと思いつつ次の本命にさらなる期待をするのだった
無事に全ての一回戦が終わり選手は少しの休憩をしていた
「・・・やはりあいつの強さは桁外れだな・・・」
先ほどの試合を見ていた空達は率直に強いと感じていた
「ああ・・・あの二人がこのまま戦えば・・・
間違いなくどちらかが死ぬな・・・」
森はこのままあの二人が戦えばどちらかが死ぬと思っていた
「だろうね・・・それほどまでに圧倒的だった・・・」
その言葉に大地は同意した
それほどまでにあの二人の戦いはとても洗練されたものだった
「だからと言って勝った方がタダで済む・・・なんてこともないよね?」
海の言う通りたとえ勝てたとしてもおそらく無事では済まないだろう
つまりは次の戦いは完全に別次元の戦いになるということだ
しかしその戦いに加われない空は自分の実力不足だと悔しく思っていた
「問題はあの二人の試合の後だな・・・
正直な話あいつが勝ってくれれば問題はないが
もし負けてしまってもあいつが弱っていれば特に支障はない
しかし今回の主催者であるティウスと
戦うだけの体力が残っているかどうか・・・」
森は残酷なまでに冷静にそして慎重に事をどうやって運ぶか考えていた
「本当なら俺がそいつと戦えれば問題はなかったんだが・・・
別のブロックになってしまっているから
決勝に行かない限り戦うことはできない・・・」
本当ならその役目は自分にあると空は考えているが
トーナメントの所為で直接戦えるのは決勝になってからだった
「つまりあいつは星童とティウス・・・この二人と連戦することになる・・・」
「・・・・・」
一方で凶夜は外に出て次の戦いのことを静かに考えていた
(次の戦いであいつと戦う・・・そうすればお前にたどり着ける・・・
家族の仇・・・呪天!お前のところにな!!)
凶夜の頭の中には復讐のことしかなく
次に戦うであろうティウスのことなどまるで考えていなかった
「・・・なんの用だ?」
すると凶夜は後ろから気配を感じてその者に話しかける
「さすがはフィアーナイト・・・やはりすごいですね・・・」
凶夜の見ていた通路から出てきたのは主催者であるティウスだった
「何をしに来たんだ?まさかトーナメントを無視して
戦いに来たってわけじゃねぇだろ?」
凶夜は一体何をしに来たのか聞く
「別に大した用ではありませんよ・・・ただの激励です」
しかしティウスはそこまで深く何かを考えているわけではなく
次の戦いに対する激励のためだけに来たらしい
「それでどうですか?次の戦いは鬼とですけど」
ティウスは次の戦いに勝てるかどうか聞く
「別に・・・死んでも勝つ・・・それだけだよ」
凶夜にとっては次の試合は勝つでも負けるでもなく
絶対に勝たなくてはいけないものだった
「やはりあなたは鬼のことになると他に目もくれないのですね・・・」
だがそれはティウスにとって予測していた答えであり
その言葉を聞いた瞬間に自分の剣を抜いて凶夜に向ける
「しかし覚えておいてください・・・
私もあなたを超える為にここにいるのだと・・・」
「・・・ああ・・・覚えておくよ・・・」
「・・・その言葉・・・信じていますよ・・・」
ティウスは剣を鞘に戻してそのまま去っていく
「・・・はぁ・・・随分と面倒な性格になったな・・・」
凶夜は自分のいない間に彼の性格が変わっていたことに
少しだけうんざりしながらも
次の楽しみができたかのように笑っていた
「「・・・・・」」
その姿を遠くから愛心と奏歌が見ており
二人の心の中には言い知れぬ不安が漂っていた
彼は結局、戦いの中でしか生きられないのだと
たとえ復讐を抜きにしたとしても彼は戦い続けてしまうのだと
そんな色んな考えが二人の頭の中を駆け巡っていく
しかし二人はその不安を口にすることはできなかった
何故なら自分達には凶夜を止める術もなければ権利もなく
ただ見守ることしかできない
そんなもどかしい思いで次の試合を見ることにしかできないのだ
だからこそ二人は祈ることにした
凶夜が絶対に無事で勝つことを・・・
いよいよ次回はフィアーナイトVS星童!!




