トーナメント
今回は空の単独戦闘が少しだけあります
「どうやら全員集まってもらえたようですね」
どこからともなく声が聞こえてきて
そこにいた全員が一斉にその声の主の方を見た
「初めまして・・・私が今回の大会の主催者であるティウスです」
その者はまるでどこかの騎士のような格好をしており
その腰にはとても綺麗な剣をぶら下げていた
「あれが果し状を出してきた男なのか・・・?」
空はその人物を見て驚いていた
なぜならティウスは見た目だけならとてもおとなしい印象で
果し状を出して戦うくらいの野蛮さはなかったからだ
「もしかして・・・これ楽勝なんじゃないの?」
海も同じことを思っていたらしく
これならば楽勝なのではないかと考えていた
「いや・・・仮にも上級魔人なんだからここにいる奴らより
弱いなんてことはないはずだ・・・」
しかし森は彼が本当に上級魔人なら弱いわけはないと考えており
絶対に気を抜いてはダメだと思っていた
「そうですね・・・でも問題はそちらよりも・・・」
そして問題はもう一つあった
それはこの大会に業鬼衆の一人である星童も参戦するということだ
「あいつの実力は折り紙付きだからな・・・正直な話
あのティウスって奴より強い・・・」
その実力はおそらく主催者のティウスより強く
今回の大会では敵なしの可能性は十分高いだろう
「あいつとは当たらないように祈らないとダメか・・・」
「だったらあいつの相手は俺がもらうぞ?」
「「?!」」
後ろから急に声をかけられて振り返ってみると
「「凶夜?!(さん)」」
そこにはサラのそいつより強いであろう凶夜も来ていた
「あんたも参加するの?」
愛心は凶夜も参加をするつもりなのか聞く
「ここにいるんだから当たり前だろ?何を言っているんだ?」
しかし凶夜はここにいる時点で参加するのだから聞くなと邪険にする
「なっ?!」
それを聞いて愛心は拳をワナワナと震わせるが奏歌に止められる
「本当なら参加するつもりはなかったんだが・・・
今回はあいつが出るって聞いてな」
どうやら彼の目的は大会そのものではなく星童ただ一人だった
「それで大会の参加を決めたのですね・・・」
奏歌はそれが凶夜の参加理由だと聞いて悲しい気持ちになった
やはりこの人の中には復讐しかないのだと
「だったら今回は二人で協力してみたらどうですか?」
すると霧がこの大会に参加する空と凶夜に協力できないかと提案する
「確かに・・・それならお互いに無駄な消費はしないし
確実に戦いたい相手と戦える!」
空はその話を聞いてとてもいい提案だと霧を褒めるが
「・・・たぶんそれは無理だろうな・・・」
凶夜はその提案は無駄だと考えていた
「どうしてですか?
霧はその理由がわからずに尋ねると
「簡単だ・・・今年の大会もおそらくは・・・」
「トーナメントだからな」
「「「「「トーナメント?!」」」」」
みんなはその話を聞いてショックを受けていた
何故ならトーナメントになってしまったら
勝てば勝つほどに消耗してしまい
しかも次の敵はそれほどまでに強い敵が出てくるということだ
つまりはこの中で最も強いであろう
星童は確実に勝ち上がってくるということだ
「でもそれ主催者のあいつが絶対に有利じゃない!!」
すると愛心はこの試合形式だと
後で参加するティウスが確実に有利だと抗議する
「いや・・・あいつもちゃんと俺達と同じ一回戦から戦う・・・
それほどまでにあいつは自分の力を信じているからな・・・」
だがそんな愛心の考えとは裏腹に
彼は本気で最強の剣士になりたいと思っているらしく
みんなと同じ一回戦から参加するつもりのようだ
「あいつはそこまでして自分が最強だと知りたいのか?」
森はどうしてそこまでして
最強の名前にこだわるのか疑問に思っていた
「・・・原因は俺だろうな・・・」
するとその原因は自分にあると凶夜は告げる
「どういう意味ですか?」
奏歌はそれはどういう意味なのか聞く
「あいつは魔人になった時に俺に戦いを挑んできたことがあるんだ
そん時に面倒くさくてわざと負けて以降
俺にもう一回挑むために腕を磨いているみたいだ」
(((確かにそれは悔しい・・・)))
その話を聞いた男子三人は彼の悔しさがわかってしまった
自分がどんなに戦っても勝てない相手が自ら負けを認める
それがどれほど屈辱的なものなのか
男ならばその悔しさは嫌というほど理解できた
しかも彼らはつい最近その悔しさを味わっていた
だからこそ余計に彼に共感が持てた
(だが・・・それでも負けるわけにはいかない・・・!)
しかしそれでも相手は魔人
共感はできても同情はしない
空は何としてもこの戦いを勝ち抜く覚悟を決めるのだった
「さて・・・話はそれくらいにした方がいいぞ
そろそろ大会が始まるはずだ」
そう凶夜が言った瞬間に全員が光に包まれて
次にみんなが目を開けると目の前に広がっていたのは大きな闘技場だった
「えっと・・・どこですか?ここ・・・」
奏歌はここがどこなのか凶夜に聞く
「おそらくはあのマッドサイエンティストが作った仮想空間ってやつだろうな
まぁ・・・俺にはどうでもいいけどな」
どうやら凶夜も詳しいことはわかっておらず
むしろ理解するつもりもないようだ
「さて・・・それでは会場にもついたし・・・
それでは早速トーナメントの組み合わせを発表するとしよう!!」
ティウスの後ろに大きなモニターが表示されて
そこに各々の相手をする選手の名前が表示されるのだが
「・・・まさかこんな結果になるとはな・・・」
なんとそこに書かれていたのはとんでもないないようだった
一回戦の相手は普通の中級魔人なのだが
凶夜の二回戦の対戦相手が悪かった
その相手とはこの大会で間違いなく優勝候補の星童なのだ
「これは・・・さすがにまずいな・・・」
森はさすがにこの状況はまずいと考えていた
「ああ・・・まさかここで星童と戦うことになるとはな・・・」
大地も同じ気持ちだった
この戦いでもし凶夜が負けてしまったら
残る味方は空ただ一人となってしまう
しかも相手は凶夜すら倒した星童ということだ
それだけは何としても避けないといけない
もし凶夜が負けるようなことがあれば
全ての魔人と鬼を空達だけで対処をしなくてはいけなくなる
それほどまでにこの試合は重要な一戦となるだろう
「・・・大丈夫ですか?」
奏歌は不安になり凶夜に大丈夫か尋ねる
「ああ・・・むしろこんなに早く戦えるとは思ってなかったからな・・・
興奮が収まらねぇよ・・・!」
だが肝心の凶夜は怯えるどころか早く戦いたいと
やる気に満ち溢れていた
「どうやら組み合わせは決まったようだな・・・
それでは順次試合を始める!最初の組以外の選手は観客席に移動せよ!」
組み合わせを発表した後、ティウスは最初の選手以外に観客席に行くように指示し
残った選手がそれぞれの獲物を抜いて構え戦いを始める
そのままトーナメントは進んで行きいよいよ次は空の番となった
「よし・・・それじゃあ行ってくる!!」
空は変身して意気揚々と戦いの場に赴いた
対する対戦相手は薄く広い青龍刀を持った中級の魔人だった
「ヒャハ!お前が俺の相手か?随分と弱そうだな!!」
その魔人は馬鹿にするようにスカイレッドに対して挑発する
「・・・・・」
しかしスカイレッドは何も答えずただ武器を構える
「チッ!つまらねぇ男だ・・・!」
魔人は誘いに乗ってこないスカイレッドに苛立ちながらも
自分も持っていた武器を構えて切り掛かっていく
「オラオラオラオラオラァ!!」
魔人はまるでノコギリのように回転し
反撃を許さないほどの攻撃をしてきた
「どうしたどうした?!そんな腕でよくこの大会に出ようと思ったな!!」
魔人は自分の勝利を確信して最後に大振りの一撃をかまそうとするが
「ガバァ?!」
その一撃を待っていたスカイレッドがその隙をついて
がら空きになった胴に自身の剣を突き刺した
「チクショ・・・俺の負けかよ・・・!」
魔人は悔しそうな声を上げながら地面に倒れ込み爆発した
「さすがはスカイレッド様!」
愛心はスカイレッドの戦いを見てさすがと喜んでいた
「まぁあれくらいは当然だろうな・・・」
凶夜はあれくらいできて当然だと言った
「あんたね・・・少しは勝利の余韻を味あわせなさいよ!!」
愛心は少しくらい喜んでもいいじゃないと抗議する
「馬鹿かお前?ここには敵しかいないんだぞ・・・
だったらあいつは負けることは許されない・・・
お前達の身の安全の為にもな」
しかし凶夜は別の考えがあってそう思っていたようだ
確かに凶夜の言う通りここでスカイレッドが負けてしまったら
正体がバレてしまいそこから他のメンバーの正体もバレてしまう
だからこそ彼は仲間を危険に晒さない為
絶対に負けるわけにはいかなかった
「・・・・・」
その言葉を聞いて愛心は何も言えなくなってしまう
もちろんスカイレッドはそこまで考えて戦っているわけではないが
おそらくいつもその気持ちで戦っているはずだ
それなのに自分は無邪気に勝利を喜んでしまっていた
「さて・・・俺も向かうとするか・・・」
そして次が自分の番となった凶夜も早速ステージの方に向かっていく
「待って!」
すると愛心に呼び止められて凶夜は足を止める
「・・・頑張ってよね・・・」
愛心は何を言えばいいのかわからず必死で放り絞った言葉がそれだった
「・・・ああ・・・」
それに対して凶夜は笑いもしなければ笑顔を向けるでもなく
ただそう言って再びステージへと歩いていくのだった
次回は凶夜と星童の戦い!
果たして勝つのはどっちだ?!




