天からの贈り物
今回は戦闘少なめです
時は少しだけ遡り魔人の基地にあるアテトの研究室での出来事・・・
「・・・今度は何のようだ・・・アテト・・・」
再び彼に呼ばれたルーレはかなり不機嫌そうな顔をしていた
「そう怒るな・・・本当ならばキグスに話を通すのじゃが彼奴は忙しいからのう・・・
ナキアもどこかに姿を隠した今ではお前さんしか報告する奴がおらんのじゃ」
確かにアテトの言う通り四天王のほとんどが姿を消してしまっては
もはや何かを相談できるのはルーレ以外にはいないだろう
「だからといってこき使われるわけにもいかない・・・
それこそ貴様の作る人形にでも任せればいいのではないか?」
本当に今回呼ばれた案件は自分が必要なのかとルーレが告げると
アテトは近くにあった端末を操作してスクリーンに何かを映し出した
「これは・・・何かの軌道予想図か?隕石・・・もしくはステーションの残骸か?」
ルーレはそれがすぐに軌道予想図だというのまでは理解できたが
それが何に対してのものなのかまでは分からなかった
「残念じゃが・・・それはどちらも外れじゃよ・・・!」
そう言ってアテトが再び端末を操作するとその落ちてくるものの詳細なデータが表示される
そしてそれを見たルーレは思わず目を見開いてしまう
「馬鹿な・・・?!こんなものが落ちてきたら地球は終わるぞ・・・!」
その詳細なデータに映し出された落下物のエネルギーは明らかに隕石や瓦礫などではない
いや・・・そもそも地球上に存在するエネルギーのすべてを超えていると言えるだろう
そんなものが地上に落下すればどうなるか・・・それはもはや誰が言わなくてもわかるだろう
「じゃが・・・儂がお前さんにこの情報を与えたのはこれを止める為ではない・・・
これを・・・奪い取るために協力してもらおうと思ってのう・・・」
何とアテトはこれを手に入れる為にルーレを呼び寄せたらしいのだ
「何だと・・・?!確かに凄まじいエネルギーではあるが・・・!まさか?!」
ルーレは自分の考えに対して何か思いついたようではあったがその可能性は低いと思っていた
「そのまさかじゃ・・・この隕石は・・・すべてプラネットジェルで出来ている・・・!」
そして時は現在に戻りルーレはアガレプトと共に落下予測地点まで来ていた
「さて・・・ここまで来たのはいいが・・・本当にここに来るのか?」
ルーレはアテトが予想した地点に例の隕石が本当に来るのかと怪しんでいた
「奴の話ではプラネットジュエルが落ちてくる事などありえない事らしいからな・・・
おそらくはこの情報もそこまではあてにできないだろうな・・・」
アガレプトの話ではプラネットジュエルが落ちてくる事など地球創生ほど昔の話なので
どんな事が起こるかなど誰にも予測できないと言っていた
「確かにな・・・貴様が生き返るくらいには・・・ありえない事だろうな・・・」
そう言ってルーレの目には体のほとんどを機械に変えられたアガレプトだった
「あの後でアテトが俺を回収してな・・・ヘルナイトと同じく実験台としてこの体にされた・・・
だが・・・ヘルナイトが敗れた以上は俺が奴の実験台というわけだ・・・」
しかしアガレプトはその事に対して何の気持ちも湧いてはいなかった
「別に俺はそれでも構わん・・・あの男を・・・!スカイレッドをこの手で殺せるのならば・・・!」
もはや口調すらも変わってしまっているアガレプトの中に
残っているのはスカイレッドに対する憎しみだけ・・・
(・・・まるで・・・昔の彼奴だな・・・)
ルーレはその姿に昔の凶夜の姿を重ね合わせていた
(いや・・・こちらの憎しみは禍々しく不純なもの・・・
そういった意味では彼奴の方がまだマシな方か・・・)
しかしすぐにルーレはアガレプトの憎しみが邪悪なものだと判断しにて非なるものだと実感した
「何れにしても・・・彼奴らもすぐにここを突き止めるだろう・・・
その時は邪魔はしない・・・存分に相手をするといい・・・」
それを聞いたアガレプトは邪悪な笑みを浮かべていた
(そしておそらくは・・・彼奴も来るだろうな・・・ルナティックパラディン・・・!)
ルーレはそれと同じくして来るであろう凶夜に対して凄まじい殺気を漲らせていた
「・・・あっ・・・混成魔人の事を忘れていた・・・」
一方その頃、凶夜はみんなと別れてとある場所まで来ていた
「・・・久しぶりですね・・・凶夜殿・・・」
彼の前に現れたのは癒しの森の主である大婆様だった
そう・・・凶夜は彼女に聞きたい事があってここまで来ていたのだ
「・・・お前は昔・・・ファーシルと一緒に居たんだよな?・・・
なら・・・プラネットジュエルの進化を見たことがあるのか?」
どうやら凶夜が聞きたかったのはプラネットジュエルの進化についてだった
もしかしたら今の状況をどうにかする事が出来るのではないかと思い
それを知っているであろう大婆様に話を聞きに来た
「・・・確かに私は彼の進化する瞬間をこの目にはしました・・・
そしてそれは同時に・・・私にとって忘れられない・・・傷になりました・・・」
それを聞いて凶夜は理解してしまった・・・
ファーシルと呼ばれるものが一体何を糧にして進化を果たしたのか
(おそらくそれは・・・人間に対する果てのない憎しみ・・・)
自分とは正反対の理由で進化を果たしてしまったファーシルの話を聞いたとしても
おそらくは参考にならないと感じ取った凶夜はそれ以上、聞くことをやめた
「それに・・・たとえ話したとしてもおそらくあなたの力と彼の力は全く異質なもの・・・
あなたの考えているようにうまくはいかないでしょう・・・」
どうやら大婆様は凶夜が自らの今に不安を抱えていると理解していたようだ
そしてその為にはどうすればいいのか悩んでいる事も・・・
「慰めに聞こえるかもしれませんが・・・これまでのあなたの行いを天が見ているはず・・・
必ずいつかあなたに善行に報いてくれるはずです・・・」
確かに大婆様の言っている事は気休めなのかもしれないだろう
しかしそれでも今の凶夜からして見ればとても心強い言葉となった
「そうだな・・・天が俺の味方をしてくれる事を願うとしよう・・・!」
凶夜はその言葉を気持ち良く受け取りながら森を後にするのだった
その頃、空達は来島博士に協力して消えた魔人の動向を探っていた
「・・・どうやら凶夜くんの予想通りだな・・・魔人は落下地点を目指して進んでいる・・・」
空達はまさか凶夜の予想が当たっているとは思っていなかったようで
かなり驚いてはいたが気持ちを切り替えて先へと進む事にした
すると目の前から激流の如き水が彼らへと向かってきた
「っ?!離れろ!!」
なんとか攻撃を回避する事が出来たが完全に遅れと取ってしまった
その事に対して空達はやられたと思うのは無理もないだろう
「クックックッ・・・!まさか貴様らが現れてくれるとはな・・・これも運命か・・・!」
そして彼らの前に姿を現したのは他でもない・・・あのアガレプトだった
「またお前か・・・どうやら今度こそ引導を渡した方がいいようだな・・・!」
森も彼の姿を見てはそのしつこさに呆れたようで今日こそは倒すと宣言する
しかし肝心のアガレプトは森の事など見てはいなかった
彼の目に映っているのはもはや只一人・・・
「貴様の体も・・・俺と同じようにバラバラにしてやろう・・・!」
空を睨みつけるアガレプトの目はまさに深淵の憎しみを持つ者の目をしていた
「・・・そこまで俺を恨んでいるのか・・・!・・・だったら相手になってやる・・・!」
覚悟を決めスカイレッドへと変身を果たした空はそのままアガレプトへと向かっていく
「食らうがいい!機械の力を得た俺の新たなる一撃を!」
アガレプトが放った一撃をスカイレッドは間一髪で躱す事が出来たのだが
その一撃はなんと山肌すらも貫通するほどの高い威力を誇っていた
「どうだ!ウォーターカッターに螺旋状の回転を加えて貫通力を上げたのだ!
おまけに今までの技のように大きな溜めもいらない・・・まさしく進化した技だ!」
アガレプトはそう言いながら次々と先ほどと同じ一撃を放ってくる
これにはさすがのスカイレッドといえど躱すだけで精一杯だった
「俺達の事も無視してんじゃねぇよ・・・!」
「チィ!鬱陶しいハエどもが!そんなに死にたければ先に殺してやる・・・!」
アガレプトは狙いをスカイレッドからずらし先に他の四人を倒そうとするが
「生憎だけど水を操れるのはあんただけじゃないのよ!」
ブルーが機転を利かせて先ほどの一撃を上空へと逸らした
「なるほど・・・だが・・・!これならばどうだ?!」
アガレプトは次に放ったのは氷の弾丸だった
しかもそれは機械化した両腕から放たれたものだったのだ
「くっ?!さすがにこれは!」
ブルーも氷ではどうしようもなくイエローとグリーンに庇われる形となった
「どうやら機械化した影響で色んな事が出来るようになったみたいだな・・・!」
もはや魔人としての力から逸脱したものを手に入れたアガレプト
五人はこの強敵にどうやって立ち向かうか考えている時だった
「ん?」
かすかではあるが何かが落ちてくる音が聞こえてきて上を見てみると
そこには例の隕石がちょうど落下してきている瞬間が目撃できた
しかし場所は明らかにこことは違う方向へと向かっていた
(どうやらここはハズレだったみたいだな・・・あとは頼んだぞ・・・みんな・・・!)
ようやく姿を現した隕石
果たして彼らはこれを魔人より先に手にする事が出来るのか?!




