厄災の日
宣言通りに今回も凶夜くんが出てきます
「ハァ〜・・・この時期は本当、体調管理には気をつけないといけないわよね〜・・・」
愛心は学校に着いた瞬間、急に体調管理をしっかりしないといけないと思っていた
というのも実は学校に着いたのはいいのだがこの時期に流行る風邪の影響が
すでにクラスメイトにも出ていてすでに何人かが休んでいたのだ
「本当・・・人間ってこういう時に不便よね〜・・・」
リリムからして見れば人間とはどうして風邪を引くのだろうと疑問に思っているほどだった
確かに彼女は人間をやめているので毒でもない限り体調を崩す事はなかった
「そういえば奏歌の姿が見えないけど・・・彼女も風邪なの?」
二人でしばらく話しているとリリムはふと奏歌がいない事に気がついてどうしたのか聞く
「ああ・・・本人じゃなくて執事の人が風邪を引いてしまったから病院に付き添いだって」
愛心の話では奏歌ではなく執事の藤木野が風邪になってしまったそうでそれに付き添う為に休んだそうだ
「なるほどね・・・でも大丈夫なの?あんた達だって普通の人間なんだから気をつけないと」
リリムの言う通り愛心達は癒しの森の力を持っているとは言っても中は普通の人間
つまり彼女らだけは風邪を引いてしまう可能性が十分にあったのだ
「まぁ・・・そこら辺に関しては私以上にしっかりしてるから大丈夫でしょ?」
愛心は自分以上に奏歌はしっかりしているので十分に対策をしているはずだと話していた
「・・・確かに・・・それなら大丈夫ね・・・!」
それに対してリリムは全く否定せず奏歌だけならば大丈夫だろうと思っていた
「・・・いや・・・そこは私も大丈夫って否定してよ・・・」
逆に愛心としては自分も大丈夫だと言って欲しかったのだが
リリムの反応を見ていたら本当に自信がなくなってしまった
「・・・まぁ・・・なんにしても・・・このままだったら学級閉鎖になってもおかしくないかもね・・・」
正直な話すでに休んでいるクラスメイトに今後も風邪を引く人が増えてしまったら
おそらくは学級閉鎖になってしまうのではないかとリリムは予想していた
「たぶんそうでしょうね・・・まぁ・・・それはそれでしょうがないでしょ・・・」
愛心もそれは予感しているのだがこればかりはどうしようもないので仕方ないと思っていた
一方、藤木野の付き添いに来ていた奏歌は入院手続きをしていた
「・・・これで大丈夫ですね・・・あれ?あそこにいるのは・・・」
一通りの書類に目を通し必要事項を書き終えた奏歌がその書類を持って行こうをすると
その目の前に凶夜の姿がありどうしてここにいるのかと思っていたが
「今は藤木野さんの入院手続きが先ですよね」
藤木野の入院手続きの方を優先して凶夜に話しかけるのは後にしようと考えていた
書類を提出した奏歌は一度、藤木野の様子を見に入院病棟にへと向かった
病室に向かうとそこでは藤木野が申し訳なさそうな顔をして寝ていた
「すいませんお嬢様・・・お手数お掛けしてしまい・・・」
奏歌の顔が見えると藤木野はすぐに謝罪の言葉を告げる
「気にしないでください・・・今はとにかく休む事だけを優先してしっかり治してくださいね?」
しかし奏歌はそんな事は気にせずにとにかく休んでしっかりと治すようにと告げる
そして自分がいてはゆっくり休めないだろうと思った奏歌はそのまま病室を後にする
「・・・ん?あれって凶夜さん?もしかしてお見舞いだったのかな?」
すると凶夜が向こうの病室から出てくるのを確認して
奏歌は話しかけに向かうと話し声が聞こえてきた
「そうですか・・・もう・・・長くはないんですね・・・」
その言葉を聞いて奏歌は一度、話しかけるのをやめてすぐに隠れて盗み聞きし始める
「ええ・・・まぁ・・・もう年が年ですし・・・寿命なんだと思います・・・」
どうやら凶夜が会いに来ていた人は相当な年配な方のようで
話をしているのはおそらくご家族の方ではないかと奏歌は考えていた
「それにしても・・・まさか教え子さんがこうしてきてくれるなんて・・・
父もとても喜んでいると思います・・・」
そう言ってご家族の方は仕事があるらしくそのまま病室を後にした
凶夜はしばらくその病室で眠っている老人を見てから静かに出て行った
「・・・ところで・・・お前はいつまで隠れているつもりだ?」
「・・・なるほどな・・・そっちも病院に用事があったのか・・・」
凶夜に見つかってしまった奏歌は一緒に下の談話室まで来ていた
「はい・・・藤木野さんが風邪を引いてしまって・・・」
奏歌は素直に藤木野が風邪を引いた事を伝えると凶夜は疑問に思った
「ちょっと待て・・・風邪を引いただけで入院になるのか?」
確かにとても重症化していない限りたとえ老人であっても入院するような事態にはならないだろう
それなのにどうして入院する事になってしまうのかと思っていると
「実は・・・風邪を引いただけではなくて・・・
その時に無理をして足の骨を折ってしまったんです・・・」
どうやら入院の理由は風邪ではなく足の骨を折ってしまったからだそうだ
「・・・確かにそれなら納得なんだが・・・随分と無茶をする人だな・・・」
凶夜は入院の理由については納得したようなのだがその行動には呆れて何も言えなかった
「・・・えっと・・・その・・・」
そして今度は奏歌が凶夜が先ほど会っていた人について尋ねようとするが
どんな風に聞けばいいのか分からず言葉を詰まらせていると
「・・・あの人は俺が小学生の時に出会った恩師だ・・・」
それを見かねた凶夜が先ほどの人物について教えてくれた
「ちょうどその時に家族を鬼に食われて一人になった時に
あの人だけは俺に話しかけてくれた・・・今も人間を嫌わないのはあの人のおかげだ・・・」
どうやら先ほどの人は凶夜にとっては良心であり心の支えのようだ
「・・・そんなにいい人だったんですね・・・」
奏歌は凶夜の表情を見ただけでその人がどれだけ良い人なのか理解できた
「ああ・・・だがやはりこの年になると恩師の元気な姿すら見れなかった・・・
こんな事ならもっと早くに一回でも良いから会っておけばよかったと後悔するな・・・」
凶夜はあんな姿の恩師を見る前にもっと元気な姿を見たかったと
今まで会わなかった事を後悔しているようだった
「凶夜さん・・・」
「・・・なんか急に慌しくなってきたな?」
何か急に病院内が慌しくなってきて凶夜は一体
何があったのかを思っていると急患の人が運ばれてきたようだ
「・・・!」
その患者を見た凶夜は何かに気づいたように目を見開いていた
「・・・大丈夫でしょうか・・・」
奏歌はとても心配そうにその患者を見ているとその横で凶夜が病院から出て行ってしまう
「・・・あの患者・・・あと一週間しかもたないだろうな・・・!」
奏歌が急いで後を追いかけていくと凶夜が先ほどの患者がもって一週間だと伝える
「あれはおそらくスルバの疫病だ・・・!あれに感染したら人間は一週間で死ぬ・・・!」
どうやらあの病は魔人によるもののようで凶夜には心当たりがあったらしい
「そんな・・・!どうすればいいんですか?!」
奏歌はどうすれば彼が助かるのかと凶夜に聞く
「そんなもんは簡単だ・・・疫病の原因であるスルバを倒せばいいだけだ・・・!」
凶夜曰くスルバの疫病は本人の影響を多大に受けているので
彼さえ倒せばみんなも助かると教えてくれたのだが
「問題は奴の居場所だ・・・!戦闘能力がない分、逃げる隠れるに関しては一級品・・・
おそらくは俺でもそんな簡単に見つけたりするのは無理だろうな・・・」
どうやら一番問題になってくるのはスルバを見つける難易度のようだった
凶夜をもってしても彼を見つけるにはかなりの時間を必要とするらしく
もしかしたら一週間以内に見つけるのは無理かもしれないと思っていた
「でっでもみなさんと一緒ならきっと・・・!」
すると奏歌は空達にも協力してもらえば必ず見つかると告げるが
「いや・・・お前らは今回は足手纏いになる・・・おとなしく家にいろ・・・!」
凶夜はそれを止めておとなしく引き退るように告げた
「・・・どうしてですか?」
「スルバの能力は人間には絶対に通用する最強の技だ・・・つまりお前らにとっては天敵というわけだ」
凶夜の話では人間相手ではスルバは最悪の天敵であり
おそらく倒せるのは自身かリリムの二人だけだと考えていた
「・・・そこまでの相手なんですね?」
奏歌は真剣な凶夜の顔を見て本当に危険な相手なのだと理解した
しかしだからと言って引き退るかどうかは別の話である
「・・・なら・・・尚更みんなで探さないともっと被害が出てしまいます・・・!」
そんなに危険な相手ならば尚更引くわけにはいかないと奏歌はみんなにも連絡を取る事にした
「ハァ・・・勝手にしろ・・・俺は先に行くぞ・・・!」
どうやら凶夜はこうなる事を予測していたようで特に驚きもせずにスルバを探しに向かった
「あっ!待ってください!!」
奏歌は急いでその後を追いかけながら来島博士に連絡を取った
「わかった・・・!それじゃあ儂らの方でもその敵を探してみるわい!」
奏歌から連絡をもらった来島博士は急いで魔人の反応を確認する
しかしやはり凶夜の言う通り隠れる事に関してはとても上手いようで
レーダーには反応はおろかその形跡すら感じさせないほど上手く隠れていた
「これはかなりの難敵になりそうじゃのう・・・そうじゃった!細菌の対策もせんといかんのじゃった!」
来島博士は急いで開発室へと向かいスルバの細菌を防ぐ防護服の準備をするのだった
「それにしても・・・人間には最悪の天敵が出てくるは・・・あやつらもやってくれるわい・・・」
しかしそこで来島博士は疑問に思った事が一つだけあった
(あやつら・・・どうして急に人を襲い始めたのじゃ?
普段ならばプラネットジュエルを集めるのが目的のはずじゃのに・・・)
そう・・・あくまで魔人の目的は王の復活の為に必要なエネルギーを集める事だった
なのになぜか今回は人の天敵に等しい魔人を出してきたのだ
これはあまりにもおかしいと思っていたがその瞬間に来島博士には最悪の考えが浮かんだ
「まさか・・・!これは儂らを誘き出す為の罠か?!」
人にとって最悪の敵であるスルバ
果たして彼らはこの敵を見つける事が出来るのだろうか?!




