笑う門には福来たる
今回はギャグ回ではないです
「・・・兄様の笑った顔を見たい・・・!」
それはかなり唐突なことだった
学校の昼時間に三人で一緒にご飯を食べていると急にリリムが変な事を言い始めた
「・・・何よ急に?おかしな事、言うから思わず吹き出しそうになったじゃない・・・」
予想していなかった言葉に愛心が思わず吹き出しそうになっていたが
リリムは全く気にせずに話を続ける
「思えば私・・・兄様がちゃんと笑っているところって見た事ないのよね〜・・・」
確かにこれまでの凶夜は作り笑いなどをして一応の笑顔みたいなのは見せているが
本当に笑っているところは誰も見た事がないだろう
「言われてみればそうかもしれませんね・・・でも仕方のない事ではないのですか?」
奏歌のいう通り凶夜は家族を失いその復讐の為だけに生きているので
そんな風に笑う事など今の彼には無理だろう
「それはそうなんだけどさ・・・だからこそ笑って欲しいんだよ・・・」
リリムはそんな今の彼だからこそ笑って欲しいのだと切に願っていたのだ
それを聞いて二人も静かに頷いていた
「・・・なら提案なのですが・・・私達で凶夜さんを笑わせてみませんか?」
しばらくの沈黙の後に奏歌が急にとんでもない事を言い始めた
「えっと・・・何を言ってるのかわからないんだけど・・・もしかしてボケ?」
愛心はとても奏歌の口から出た言葉とは思えず冗談かと思って確認するがどうやら本気のようだ
「でも笑わせるって言っても何をするの?兄様は生半可な事じゃ笑わないわよ?」
確かに今までの話を聞いてとてもではないが凶夜を笑わせるのは困難だと気づくだろう
しかしそれでも彼の本当に笑った姿を見て見たいと思った三人は色々とアイディアを出していく
「三人とも・・・一体何してるの・・・?」
そこへ明らかにやばい感じになっている三人を心配して明里が話しかける
「・・・どうやったら人は笑うのかを必死で考えてる・・・」
明里は一瞬だけ自分の耳を疑ったが真剣な彼女達の顔を見て本当の事なのだとすぐに理解する
「なるほどね〜・・・だからそんなに真剣な顔で相談していたのか・・・」
三人からの詳しい話を聞いた明里はようやく納得がいったというような顔をしていた
「でも・・・さすがに素人がそんな人を笑わせるのは無理なんじゃないですか?」
明里の話を聞いて三人は確かに今の自分達では絶対に凶夜を笑わせるのは無理だと思っていた
「そこでなんですけど・・・これを見に行ってみてはどうですか?」
そう言って明里が取り出したのはとあるライブのチケットだった
「実はとある芸人さん達がこの街でコントするんだってさ
一応はチケットをもらったんだけど私は見に行くつもりないから見て参考にしてくれば?」
明里はそのチケットを三人に渡してこれを参考に凶夜を笑わせる方法を見つけれないかと案を出す
「ありがとう・・・って言えばいいのかな?・・・これ・・・」
愛心はお礼を言うべきなのかどうか迷ったがとりあえずはお礼を言って
三人で一応ではあるがこのコントライブに行ってみる事にした
「とは言ったけど・・・やっぱり無理でしょ・・・これを私達が真似するのって・・・」
見に来たのまでは良かったのだがやはり素人である自分達がこれをやっても笑わせる自信はなかった
しかし会場にいたみんなはすごい大喜びでそのギャグを笑っており確かに人気としては高い方だった
「どうやら終わった見たいね・・・次の人って誰だっけ?」
今の公演していた芸人さんが終わり愛心は次に出てくる人は誰なのか尋ねる
「えっと・・・どうやら新人の方々みたいですね・・・あまり見た事のない名前です」
パンフレットを持っていた奏歌が確認するとどうやら新人の人達らしく
今回のこのライブで初めて人前で芸をやるのではないかというくらい知らない名前だった
「あぁ〜・・・それじゃあもしかしたら緊張で何も出来ないかもね・・・」
愛心は新人と聞いて初の舞台で緊張してしまい失敗するのではないかと思っていた
「あんたね・・・見る前からそんな予想するのはさすがに失礼よ・・・」
これにはさすがのリリムの言い過ぎではないかと思っていたが
次に瞬間に現れた二人を見てその言葉もあながちあっているかもしれないと思っていた
「・・・どうする・・・確実に参考にならなそうなんだけど・・・」
その二人は初の舞台だったのであまりに緊張しており何度も噛んでは言い直していた
もはや見るに堪えないその状況に三人はどうしようかと思って目を合わせると
「「「?!!」」」
なんと会場にいるみんながそれを見て大笑いしていたのだ
その戸惑う二人に笑ったのかそれとも単純に芸が面白くて笑っていたのかわからないが
そこにいた愛心達を除く全員が二人の芸を見て大笑いしていた
それに自信をつけたのか二人は先ほどの緊張を払拭し綺麗で見事なコントを披露していく
愛心達もそれを見てようやく面白いなと思っていたのだがリリムだけはおかしいと思っていた
そして二人の芸が終わり舞台裏に帰っていくのを見て愛心達はようやく異変に気がつく
「あれ・・・なんでみんなまだ笑っているの?!」
そう・・・なぜかコントが終わったにも関わらず会場にいたみんなは未だに笑っていた
「おそらくは何かの仕業で間違いないわね・・・
急いで原因を探さないとみんな呼吸困難になるわ・・・!」
三人は急いでこの異常事態の原因を探し回るがどんなに頑張ってもその原因が分からなかった
(くっ?!このままだとみんなが死んじゃう!!)
みんなが危機に陥っているのにその原因が分からず愛心が悔しがっていると
いつの間にかみんなは笑い止んでいた
「どういう事?なんでみんな急に・・・」
愛心もどうして急にと思っていたがおそらくは原因であるものが取り除かれたからだろう
とりあえず気絶した人達の元へと向かうとどうやら息遣いは荒いが生きてはいるようだ
「よかった・・・!・・・・?!」
生存を確認して愛心がホッと胸を撫で下ろしていると今度か会場の奥で笑い声が聞こえてきた
三人は急いで会場の裏へと入っていくとスタッフの人や
先ほどステージに上がっていた芸人の人達が先ほどと同じように大笑いしていた
「ってことはこっちに来たって訳か!一体どこ?!」
三人は先ほどと同じようにみんなが笑っている原因を探すが全くと言っていいほど見つからず
「結局、原因がわかんないままその笑いは止まったと・・・」
「はい・・・すいません・・・何の役にも立てないで・・・」
騒ぎを聞きつけた空達が来た時にはすでにみんなは病院へと運ばれた後であり
その場にいた愛心達に何があったのかを確認していた
「それにしても姿が分からなかったか・・・一部でも異常な部分があればわかり休んだろうが・・・
今回の場合はみんなが一斉に笑い出してしまったから全部が異常だったわけだしな・・・」
森の言う通りおかしな部分を探すにしても全体的におかしな部分しかなかったので
相手を探すにしてもかなり困難だったのだろう
故に空達は誰一人として愛心達を責めようとはしなかった
「問題は相手の能力とその範囲だな・・・姿が見えないほど離れていても使えるのか・・・
それとも笑わせるのは別の何かの影響で姿を消せるのが能力なのか・・・
何れにしてもちゃんと姿を捉えない限りは何も言えないな・・・」
相手の不気味さに森はどんな相手なのかまずは確認をしなければならないと考えていた
「となると・・・相手の狙いかな?一体どうしてここに現れたんだろう?」
大地はどうしてここに現れて能力を使ったのか疑問に思っていた
確かにここではコントライブをやっていたので笑ってくれる人はたくさんいただろうが
自分の能力を使えばおそらくは場所なんて関係ないのではないかとみんなは思っていた
「確かに・・・それさえ分かれば相手をおびき出せるかもしれないな」
空もそれさえ分かれば向こうから来てくれるようにする事も出来るはずだと考えており
みんなで必死で考えていると愛心がリリムがいない事に気がつく
「あれ?あいつに一体どこに行ったのよ?」
周りを必死で探すがどこにも見当たらずしばらくするとゆっくりと歩いてくる姿があった
「あんたね〜・・・せっかくみんなで色々と話し合っているのにどこ行ってたのよ?」
愛心はどこにいたのかと尋ねるとリリムは一枚の紙を見せる
「さっきまで聞き込みをしてたのよ・・・そしたらようやく相手の狙いが理解できたわ」
そう言ってリリムが見せていたのは一枚の地図だった
そこにはいろんな場所にマークが付けられておりおそらくはそこで事件が起きたのだろう
「・・・これのどこが手掛かりになるのよ?」
愛心の言う通りこれだけでは確かに手掛かりになどならないだろう
するとリリムはもう一枚の紙を見せるとそこにはその場所で行われたイベントが書かれていた
「どれもこれも面白そうなイベントばっかりだな・・・!まさか?!」
空はそれを見せられてようやく理解したというような顔をしていた
「そのまさかよ・・・今回の相手は人に何かする事を目的としているんじゃなくて
自分が楽しく笑えそうな場所に向かっているのよ・・・!」
なんと今回の相手は相手を笑わせるのが目的ではなく
自分が楽しそうと思えるような場所へと出没していたのだ
「だとしたらなんでなんだ?もしかして能力と関係があるのか?」
明らかに今までの相手とは違うその行動に森は疑問を持っているが
今はそんなのを気にしている場合ではない
「とにかく目的がわかったんだし次に面白そうなイベントをやっている場所に向かおう!」
空は相手が現れるであろうイベントが行われる場所へと向かおうとするが
「・・・残念ながらそのイベントはこのコントライブで最後・・・
あとは二週間後までイベントらしいイベントは行われないわ・・・」
それも既にリリムが調べておりなんと今回のようなイベントはもう行われないらしい
「嘘?!それじゃあどうするのよ?!」
愛心はそれなのにどうやって相手をおびき出せばいいのだと聞く
「そんなもの決まってるでしょ・・・私達でやるのよ・・・コントをね!」
「「「「「・・・えぇぇぇぇぇ?!!」」」」」
次回はみんなでコントに挑戦!




