男の戦争
今回は日常回なので戦闘はありません
それは三月に入りすぐの出来事だった
男達にとってはある意味、戦争とも言えるものが迫ってきていた
そう・・・その戦争の名はホワイトデーだった
もちろん空達も海や霧などたくさんの女性からバレンタインのチョコをもらった
なのでそのお返しとしてちゃんよした物を返さないといけないのだが
「正直、今年は返す人が多すぎてどんなのにすればいいのかわからないな・・・」
今年は例年以上にくれた女性が多くてどんなお返しをすればいいのかと三人は悩んでいた
「去年みたいにお菓子だとな〜・・・正直これだけの人数だと予算が厳しい・・」
大地の言う通りお菓子にしたとしても人数が多すぎて予算が高くなってしまう
おまけに食べれない可能性もある人がいるのでなるべくなら取りたくない策だ
「そうなると・・・残るは何か簡単な物を手作りするしかないか・・・」
残された方法は安く大量に材料を買って手作りした物をお返しする事なのだが
「問題は何を作ってお返しするか・・・か・・・」
そこまで数が多いともちろん好みは分かれるだろうしそもそも彼らが作れるかどうかする分からない
「とりあえずこういう時は人生の先輩に聞いてみる事にする?」
何も浮かばない三人は他の人間に聞こうと思い来島博士に連絡しようと思ったが
(((・・・どうしてだろう・・・完全にハズレな気がする・・・)))
何か連絡しても事態の解決はしないと三人は直感的に思い連絡するのをやめた
「そうなると・・・他に誰が頼れるかな?」
三人は他に頼れる大人の人間がいるかどうかと考えるが
残念ながらそんな人間に心当たりは微塵もなかった
「自分で言うのも何だが・・・どうしてこんなに頼れる人間がいないんだ・・・」
森の言う通り普段の戦闘とかならば頼りにはなるのにこんな普通の時に限って
彼らの周りにいる大人の人間は頼りにならないのだった
「しょうがない・・・直接お店に行って店員の人にどんなのがいいか聞くか・・・」
三人は誰も頼れる人間がいないので直接お店の人に聞いてみるのがいいと思い外へと出て行った
「女性へのお返しで予算が少なく手作り出来るの物ですか?」
三人の要望を聞いた店員はどんな物ならそれが叶うだろうか考えていると
「それならこちらのアクセサリーなどはどうですか?
ワンポイント物にすればパーツが一つと紐だけで出来るので予算は抑えられますよ?」
横にあった手作りのアクセサリーを見て店員はこちらがオススメではないかと提案する
「なるほど・・・しかも今はセールで安くなっているのか・・・ならこれがいいな」
セールで安くなっているのも響いたのは三人はそれを購入して帰る事にした
「とりあえず買ったのはいいけど・・・俺らに作れるかな〜・・・」
材料を購入したまでは良かったのだが肝心物になるのか不安に思う大地
「今更何を言ってるんだよ・・・これ以外に予算少なく出来ないんだから
俺らの苦労ぐらいは予算の範囲内だろうが・・・」
しかし森は予算は少なく済ませたのだからそれくらいの苦労はするべきだと思っていた
「そうだな・・・だが大地の言いたい事も分かるよ・・・確かに不出来なのを渡しても
相手にとっては無礼になるかもしれないからね・・・」
空はどちらの言い分も理解する事が出来た
森の言う通り予算を安く済ませた分、気持ちは込めて作って欲しいだろうし
大地の言う不出来な物を渡して相手に嫌がれないかという心配もある
「とにかく俺達は頑張って綺麗な物を作り上げよう!
失敗したのならそれ以上のを作って渡せばいいんだからさ!」
気分が落ち込み気味な二人を勇気付け空はすぐにプレゼントを製作しようと思ったのだが
「・・・思ったんだが・・・これ・・・どこで作るつもりなんだ?」
森のその言葉を聞いて二人はすぐに目を合わせて思い出した
確かに材料まで買って意気込んだのはいいが作る場所については何も考えていなかったと
普通ならば自宅か秘密基地で作りたいのだが絶対にあの二人のどちらかが来る可能性があった
おそらくそれは大学や高校でも同じ事が言えるので選択肢から外れる
「・・・むしろ・・・選択肢がほとんどないんだが・・・」
「・・・そんな道端で何してるんだ?」
そんな三人の後ろから声を掛けてくる一人の男がいた
三人は振り返ってその男を見ると見知った顔だった
「凶夜くん・・・」
三人のに話を掛けたのは他でもない凶夜だったのだ
「凶夜くん!どうか俺達に場所を貸してくれ!!」
空のその言葉に思わず疑問を抱いてしまった凶夜は間違っていないだろう
それほどまでに唐突にしかも切羽詰まったような顔をして言われたのだ
「なるほどな・・・ホワイトデーのお返しか・・・また律儀だな・・・お前らは・・・」
家へと向かう道中で三人からの話を聞いた凶夜は面倒な事をしているなと思っていた
「心を込めてくれたのだからちゃんと心を込めてお返しするのは当然だよ!
それに凶夜くんだってもらったんじゃないのかい?」
大地は心を込めてくれたプレゼントなんだから当然だと告げ凶夜にもらったのかどうかを確認する
「もらったにはもらったが・・・生憎と俺を知っている人間はお前ら以外にいないからな」
しかし凶夜から返ってきた言葉を聞いて三人はすぐに黙り込んでしまう
彼は魔人の世界に身を置いていた為、この世界では行方不明として扱われており
時が経ってしまった今では完全に死亡扱いとなってしまっている
今の家やその他に関しては偽名などを使って誤魔化している為、何でもないように思えるが
目の前にいる人間は世間では死人となっている事を三人は忘れていた
「まぁ・・・お陰様でお前らが悩んでいるようなお返しに関しては問題なかったがな」
まるで皮肉のようなその言葉を聞いて三人は気まずいと思っていた
「てか・・・むしろ俺からして見ればリリムはともかくあの二人が渡してくれた理由が分からんな」
凶夜の告げる二人とはおそらく愛心と奏歌のことだろうと三人は思った
「そりゃあ俺達も含めて君にはとてもお世話になったからね・・・そのお礼じゃないかな?」
やはり朴念仁の空は凶夜と同じくお礼のチョコだと思っており
それを聞いていた大地と森はチョコをあげた女の子達が不憫だと思うのだった
「それじゃあこの部屋を好きに使ってくれていいが・・・あんまり散らかすなよ?」
凶夜は三人の為に部屋を貸してくれたので空達はそこで作業を始める事にした
「まずは店員さんがくれた説明書通りに作ってみるか・・・」
実は先ほどの店員が作り方を書いた説明書を持ってきてくれたので
三人はまずその説明書通りに一つ作ってみる事にしたのだが
「「「・・・これは・・・酷い・・・」」」
あまりの出来の悪さに三人は思わずため息を吐いて呆れてしまうのだった
「どうしよう・・・これじゃあ当日までに
ちゃんとした物が出来たとしてもそんなに数が作れないよ・・・」
大地はこの出来だと当日に渡せる物にも限りが出てしまうと思っていた
「だが・・・正直他に教えてくれるような奴がいるか?」
本来ならば誰かに教えてもらいながら作るのがセオリーだがそんな専門家はいないし
女子に聞いてしまうのは本末転倒だと言えるだろう
「しかし・・・この出来はさすがにまずいな・・・
せめて説明書の内容をちゃんと理解できればいいんだが・・・」
ちゃんと渡された説明書通りに作れればおそらくまともな物になるのだろうが
残念ながらこう言った物をまともに作った事のない彼らには理解する事が出来なかった
完全に手詰まりになりそうな雰囲気に再びため息を漏らしている時だった
「・・・お前ら・・・人の家で部屋まで借りて何が不満なんだよ・・・」
様子を見に来た凶夜が扉の前に立っており空達の様子を見て呆れていた
「実は・・・説明書をもらったのはいいがどうすれば綺麗になるのか分からないんだ・・・」
空は素直にうまく出来ないと説明して凶夜に説明書を見せる
すると凶夜は急に材料の一つを手に取り説明書の通りに作り始めた
そしてしばらくすると説明書に載っている写真と瓜二つのアクセサリーが出来た
「すごいな?!どうやったらそんな風に出来るんだ?!」
空はそのあまりの出来にどうすればそんな風に出来るのか詰め寄る
「そんなもんは自分達で考えろ」
しかし凶夜は何も教えてはくれずそのまま部屋を去って行ってしまった
「くっ!もはや望みは絶たれたか・・・!」
最後の頼みの綱である凶夜に見放されて空はもうダメかと思っていると
「いや・・・あいつが残してくれた実物を頼りにすれば多少なりとも良い作品ができるはずだ・・・!」
森は画像では分からなかった部分がこれで理解できるようになると思い
これを元に自分達が先ほど作ったアクセサリーを直していく
「おお!出来たぞ!!」
しばらくして三人のアクセサリーはお世辞にも上手いとは言えないが
先ほどと比べてだいぶマシな形をするようになっていた
「これくらいの出来ならば誰も文句は言わないだろう・・・この調子で続けていくぞ!」
その後、ようやく作り方を理解した三人は急いでアクセサリーを作って行き
三日という時間を掛けてようやくお返し用のプレゼントを用意できたのだった
「ハァ・・・出来た〜・・・もう手が上がらん・・・」
疲れ切った三人はそのまま床に寝転がりしばらく起き上がりそうになかった
「とりあえずこれでみんなに喜んでもらえそうだね」
大地はこれならばみんなが喜んでくれると思っており
二人も同意するかのように頷いていた
「よし!それじゃあこれをみんなのところに持って行こう!」
そして三人はやっと出来たそのアクセサリーを持って秘密基地へと向かうのだった
ちなみに作者はバレンタインなんて知りません(もらった事がないから)
次回は女子がメインのお話だよ!




