表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/33

十一話「心労?誰の所為だと思う?君だよ☆」



 路鉈町ショッピングモール。

 何だか最近頻繁に通っている気がする。夏蓮さんの出来事を境に、何度も奇妙な出来事と遭遇している。某漫画の少年名探偵なみの遭遇率としか言い様がない。

 俺にも資質があるんだな……類い稀なる問題児の資質が!何なら学年一の頭角を示しているだろう。

 ははは、いやぁ俺が先生だったら嫌だな、鍛埜雄志と関わるなんて。自己嫌悪は乙。


 中野の課題は交渉の末に恩赦を受け、明日の放課後までに期間が延長された事で四名による放課後の買い物が始まった。趣旨としては、俺が愛しい幼馴染の誕生日プレゼントを購入する為だ。

 しかし、先程から興奮状態にある中野は、それが念頭にあるかすら疑わしい。理性の欠片があるか試してみよう。


「お前の名前は?」


「中野浩介ッ」


「はい、異常ですね」


「何でだよッ!?」


 意外と冷静だった。自分の名前を覚えている上にツッコミまできっちりやるとは。期待はずれだよ、中野。本当にこいつにはあるのか――アホの資質。



 夏蓮さんは何気に楽しんでいらっしゃる。

 先程から俺の手をぐいぐいと引っ張り、店内に発見した可愛らしい物品を差し出してくる。おお、こりゃ可愛いねぇ……あなたが。

 美少女、普通に距離が近い。俺の内懐に躊躇いなく踏み込んで触れて来るところ、夜道が心配になりますよ。俺もいつ中野になるか判らないな。

 落ち着け、俺には梓ちゃんが居る……梓ちゃんが……!


「どうしたの、雄志くん?」


「愛してる」


「ええ!?」


「嘘です大好き」


「え、ちょ、え、え……!」


 面白い狼狽え方するな。

 恐らく神聖なる美少女である余り、男子勢は軽口であろうと告白紛いの言動を起こす並みの勇気と実行力を要するのだろう。それほどの器が学年でもいないから、俺の言葉にも免疫が無い。

 これは、いよいよ心配になって来たな。女性をただの甘味な食物と思う輩の詐欺被害を受けてしまう可能性が高い。誰か保護し、傍らで支える良き友人がいないのか!?

 俺?俺か……大丈夫、俺には隣で支えてくれる友達が居るんだ!

 少し間が抜けてるけど、凄く優しい、鍛埜雄志くんって人!……俺、一人か。友達いないもんな。


 一人で勝手に絶望に打ち(ひし)がれていると、肩を力強く摑む手に振り返る。もしかして夏蓮さん、俺の心中を察して励まそうとしているのか?

 全く、心遣いまで出来るとか神様かよ。本当に敵わねぇよ……夏蓮さ――。


「俺が居るだろ」


「次に同じ真似したら殴るからな?」


 また中野だった。残念賞なり。

 ヤツに心を読まれたのが、甚だ癪であった。友達とは認めてない、苦しくて友人と紹介した事が幾らかあったけど、認めねぇぞ!!

 澄まし顔で、得心顔で頷いて身を引く彼が、いつになくとても、とても……うざかった。


 俺が前に振り向くと、そこに春が至近距離で見上げていた。目、虹彩に光が宿っていない。何でそこがほの暗いのかな??人がして良い目じゃないぞ?

 確かラブコメで、このパターンは……。他の女子に現を抜かした主人公を殺さんとするヤンデレヒロインの兆候!そうか、春はそんなに俺が好きだったのか!

 止せやい、俺だって大好きだよ!……だから、ね?殺さないで、命だけは、ね??

 というか、俺は中野と話していたんだけど。まさか男子も駄目なのか。


「……雄志?」


「愛してる」


「知ってる」


「嘘やん」


 下心丸見えだったみたい(意味不明)。

 しかし、この身長差は何だろうか。頭一つ小さくて、撫で易くて無償に庇護欲を誘われる。いや、普段の冷徹な印象から窺うと、撫でようとした腕を組織(春の取り巻き)に切断されかねん。

 処刑か、俺でも下手に手を出せば潰されかねん。春の知らない所で始末される、刎頚(ふんけい)の刑に処される。

 俺は命が惜しいからな、春には手を出さん。

 でも……たとえ社会が敵になろうと、俺は梓ちゃんと愛を誓うッッ!!


「雄志……?」


「春、死にたくないよ」


「雄志次第だよ」


「任せろ、俺はこれまで数々の修羅場を潜り抜けて来たような気がする!」


「不安?」


「死にたくないよ」


「大丈夫、助けるよ」


 お前が原因だよッ!!!?

 俺の命を最も脅かしてるのはお前だからな!?現状で一番の危険分子は春にゃんだぜ!ああ、やめて恐ろしいから、その目をやめて。


 俺が困惑していると、後ろから袖を引かれる。

 ちっ、また中野かよ。いい加減、俺も慣れて来たんだ。どれ、振り向き(ざま)に渾身の拳打でも叩き込んでやろうか。

 拳を握り込み、やや腰を下ろして勢いよく体を捻って翻身する。


 そこに、頬を膨らませた不機嫌な夏蓮様がいた。

 俺は即座に拳の軌道を強制的に逸らした。中野の横っ面に入れる筈だった一撃が、自分の顎に直撃(クリーンヒット)する。


「雄志くん、琴凪さんと何を……何をしているの!?」


「すまない、そこに神が在ったから」


「大丈夫……?ひどい、血が沢山出てる」


「違うよ、これは嬉し涙さ」


「言い訳のできない鮮やかな紅だよ!?」


 紅に染まった、この俺を~……!あの名曲が歌いたくなる。

 さて、そろそろ真面目に選ばないとな。

 近場には服屋がある。一着二着ならば余裕がある。今回は贈りたい相手の像がはっきりとしているし、本人を伴っての買い物となれば欲しい物を直截訊けるのが以前よりもやりやすい。

 春は年頃の女子だし、やはりファッション面にも注意するだろう。因みに俺は何を着てもお巡りさんにモテる(実質危険な服装)!

 はい、正直に自白するとセンス皆無でして。確かにプレゼント選ぶときも破滅的、壊滅的、滅亡的でしたから。

 謎の同居人さんが買ってくれた私服で、休日は過ごしてる。あの人が居なければ、今頃出張に出ている両親に息子が拘置所にいるなんて悲報を伝える羽目になってた。


 俺は春の肩を軽く叩いて振り向かせる。……些細な動作も一々きらびやかに見える、鬱陶しいな美少女という生き物は。……そこがしゅき。


「欲しいモン、服でも良いぜ?」


「ん……じゃあ、試着するから、見ていて」


「え、着替えシーンを……!?ならば、この鍛埜雄志。僭越ながら(しか)と刮目して脳に焼き付けましょうぞ!!」


「過程じゃなく結果だけで良いから」


「残念」


 そう言って、春が何着かを早速手にした時、背後からひょこっと顔を出す夏蓮さん。


「私も、良いかな?」


「え、俺は夏蓮さんの分まで買えないよ」


「違うよ、雄志くんに私の服が似合うかどうか……その、見て欲しいんだ」


「写真一枚、いくらですか?」


「五〇〇〇円!なんちゃって」


「安い安い、そんなモン。さーて……中野、金貸して」


「俺もねぇ!!くそッ……一枚も買えねぇ!!」


「ふ、二人とも……嘘だよ??」


 夏蓮さんの着替え、見たいな。

 押しきれば着替え中も見せてくれ……何か、また春に透視され(バレ)てそうだから止めよう。煩悩滅殺ッ!……さーて、下着とか見えないかな?


 すると、春さんが少し挑戦的に目を眇めた。


「雄志、私のを見てて」


「おうよ!!」


「雄志くん、見ててね」


「ぐへへ、遠慮なくぅ……」


 春に睨まれた。

 うん、ご褒美に思えてきた。何か、新しい世界見えてきたかも。さあ、()こう!世界の彼方へ!!

 睨み合う美少女二人……また修羅場か。他所でやってくれ、頼むから。――さて、ここで中野さんに一言聞きましょう。


「中野さん」


「整いました!」


「え、そういう系統?」


「見つめ合う美少女とかけまして、俺と説きます」


「……その、心は?」


 その……心は――。


「どちらも、雄志に迷惑をかけています」


「自覚あるならやめろよ!!」



 ファッションショーが――ここに開幕!!





アクセスして頂き、誠にありがとうございます。


えっ、に、7位(日間ランキング)ですか!?

応援ありがとうございます、これからも皆様のご期待に応えられるよう、精進して行きます!


雄志「中野……何か、遂にここまで来たな」


中野「そうだな、感慨深いよ。俺、全くモテなかったのに」


雄志「だからお前の独力じゃないから。どうにかならんの、そのポジティブ思考」


中野「見倣えよ」


雄志「超絶反面教師」


中野「畏敬、って奴だな」


雄志「都合の良い言語翻訳機能だな、お前の脳みそ。一度解剖したらどうだ?」


中野「高級食材だぞ、売るなよ?」


雄志「蟹味噌(かにみそ)かよ、デリシャス」


中野「絶滅危惧種だ、大切にしろ」


雄志「中野浩介という害悪を今、ここで世界から根絶させてやるッ!!」


中野「不死鳥なり」


雄志「舞い戻るあなたに狙~い撃ち」



次回も宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ