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09



 翌日。

 隆二はサキと。

 隆二の運転する自動車で。

 「あれで終わりでしょうか」

 「そうだね。

 そうだといいんだが」

 「全部で十五匹も。

 それも一斉に」

 「しかも皆同じように

最後は急にもがきだして-----。

 あれで終わりでなければ」隆二。

 実際、昨日から今日にかけて

都内あちこちで。

 それがまだ続くようだと。

 自衛隊は出て来るは。

 機関銃は撃ちまくるは。

 バズーカ砲はとどろくは。

 さすがに戦車は出て来なかったが、

まるで怪獣映画さながら。

 東京の町はあちこちでパニック状態。

 家屋の被害も相当なもの。

 「そう願うだけだね」

 「死因はなんだと思われます」

 「ンー」考え込んだ。

 「奴らが本当に。

 大木先生の言うように

第五周期生物だとすると

餓死という事も充分に考えられるが-----

餓死ではないように思うんだ」

 「そうですね。

 餓死ではあのように急には」

 “やはり毒としか考えられない”

 「考えたんだ。

 夕べ、一晩。

 それで-----窒息死じゃないかと」

 「窒息。

 マサカ。ノドに何か詰まらせたとでも」

 サソリは気門で呼吸している。

 口からではない。

 その事はサキももちろん知っている。

 「いや、そうじゃない。

 考えてごらん。

 あのデーターを。

 酸素がなかっただろう」

 サキもハッと。

 「そういえば。

 酸素呼吸じゃなければ-----。

 でも-----じゃあ-----どういう」

 「わからない。

 いったいなにをどうやって。

 生物は酸素のないところでは。

 もし万が一にでも

第五周期の別のモノを使って

代謝を行っているとしても。

 しかしそんな事は-----考えられない。

 それに空気中にそのようなモノはないしね。

 もしそうであれば

それこそもっと以前に

窒息してしまっている」

 確かに大気中にあるのは

窒素、酸素がほとんど。

 あの生物が呼吸できそうなものはない。

 だからこの大気中で

生存できるわけはないはず。

 たとえ短時間でも。

 第五周期が本当ならば。

 しかしそれならば細胞の検査結果を

どう説明する。 

 サキも黙り込んでしまった。

 「でもよく見つかりましたね」

 ある人物に会いに行くところだ。

 「ああ。ラッキーだったよ。

 先生の同級だったしね。

 大学の窓口で住所を調べたらそれでね。

 普通、二十年も経てば

引っ越しやら何やらで

そこに居ない事も多いんだけど」

 「それでどういう感じでした。

 電話では」

 「ンー。どうだろうね。

 科学雑誌の者だと言ったら

喜んでたよ」

 「第五周期は」

 「それが-----少し-----。

 それを言った途端、

何かに憑かれたように」

 「○〇サイエンティストか」サキが冗談ぽく。

 「コラ!

 相手の前ではそんな事

絶対言っちゃダメだぞ。

 それのマスコミと聞いて

興奮していただけかも知れないしね」

 自動車が止まった。

 「ここだ。ここだ」

 “堆沢ついさわと古びた表札が。

 大木教授によれば

資産家の一人息子だとか。

 古風なレンガ造りの広大な屋敷。

 大きな鉄製の門。

 隆二はインターフォンを。

 「どちらかね」

 二三度押すと低い声で。

 隆二は名乗った。

 しばらくすると真新しいスーツの上に

白衣羽織った中年の男が。

 鍵のかかった門を開けてくれた。

 隆二たちは名刺を。

 男は堆沢光一といった。

 応接間へ通された。

 「掛けたまえ」

 そう言うと部屋を後に。

 お盆にお茶を持って帰って来た。

 「いや、すまんねえ。

 ここは私の他は誰もいなくてね。

 去年まではばあやがいたんだが-----

亡くなってしまって。

 今は通いの家政婦さんに頼んでいる」

 彼は腰を下ろした。

 「それで早速ですが」隆二。

 締切もある。

 「例の元素の置き換えかね。

 生物の構成元素の」

 「はい。

 大木教授に先生の御説をお聞きしまして-----

是非」サキ。

 「大木-----大木。

 あの量対りょうつい大学の」

 「はい。先生と同期の。

 私どもは二人とも

大木先生の教え子です」

 「そうか。あいつか

 それで-----。

 教授か」

 堆沢は-----。

 一瞬うらやましげな

何やら表情を。

 「君たち」

 堆沢は急に何か思いついたように。

 「それで君たちも生物を」

 「はい」

 堆沢はニヤリ。

 この連中なら言えばわかるとでも

思ったのか。

 「君たちはどう思うね。

 現代の科学を」

 「と言いますと」隆二。

 「現代の科学は間違っている」

 何かに憑かれた様に。

 “これはやっぱり。

 〇〇サイエンティスト。

 無駄足だったか。

 そういう手合いも多い。

 早めに引き上げた方がいいかも”隆二。

 「どういう風に」

 “まあ、マスコミ相手に

自説を強調して売り込もうという

輩も多いし-----。

 とにかく第五周期について”

 「例えば君たち。

 マガサシタママの理論はどう思うね」

 「マガサシタママですか」

 「あの電磁論。

 有名な」サキ。

 「そう。

 電波は電界と磁界が

 交互に伝わっていくとかいう。

 わけのわからん-----」

 「はあ」

 何と答えていいのやら。

 「シュレードの波動論は。

 プルークの量体論は」

 皆、あの有名な〇〇賞学者である。

 「それを先生は間違いだと」隆二。

 「ですが。

 それは科学的に証明されて

どこにも問題点などはないと思いますが」

 さすがにサキがかみついた。

 学生時代。

 物理にも興味があったらしい。

 「いったいどこがですか」

 「物理もわかるのかね」

 「一応。単位は」サキ。

 “さすが今年の卒業生”

 現役は強い。

 隆二はハラハラ。

 このような説。

 言いたいだけ言ってもらって-----。

 気が済むまで。

 こちらは聞き流していればいいモノを。

 とにかく目的は。

 第五周期。

 サキを小突いた。

 目で何も言うなと合図を送る。

 「例えば君たち。

 マガサシタママは電界が変化すれば

磁界も変化するなどと言っておるが

そのような事、本当にあるのかね」

 「はい、もちろん」隆二。

 「マガサシタママはその理論の元として。

 磁界が変化すれば導線に電流が流れる。

 良く小学校でやるだろう。

 コイルに電流計をつけて

そのコイルの中に磁石を

出し入れすると電流計の針が振れる。

 あれだ。

 いわゆる“ファラーの法則”。

 それと電流が流れると導線の周りに

磁界が発生する。

 つまり電磁石だ。

 いわゆる“アペルの法則”。

 それと“ガーグの法則”。

 これらを使っているが」

 レコーダーのスイッチが入っている。

 スマフォも堆沢を。

 堆沢はそれを確認するように。

 「あれは電子や陽子が動けば

電界が変化し、

磁界が発生するが-----。

 電界が変化しただけで

磁界が変化するという事は

あり得ないんだよ。

 導線に電流が流れたり

磁界が作用してそうなるのであってね。

 導線も電子も陽子も何もないところで

磁界がいくら変化しても

何も起こらんよ。

 電界も磁界も

電荷に対して作用するのであって

相互には作用しないんだよ。

 あくまでも導線あっての話なんだよ。

 そうだろう。

 もとになった“ファラーの法則”も

“アペルの法則”も導線がなければ

成立しないだろう。

 その証拠に最初。

 電界が変化すれば磁界が変化すると

理論建てしておきながら。

 途中でそれを否定している。

 電荷のない空間では

電界も磁界も生じないとね。

 そうしないと。

 そこから次々と新たな電界と磁界が

発生するようになる。

 光に例えると-----光も電磁波か-----

電球から光が出るね。

 電球が光を発して光っているわけだ。

 しかしマガサシタママの理論が正しいとすると

電球以外からも光り出すことになる。

 電球から出た電界と磁界からも

次々に光が出るという事だしね」

 隆二もサキも訳が分からない。

 後は

 「シュレードの波動論は

ただ単に両端を固定した

弦の振動を現しているだけだ。

 シュレードはギターやバイオリンの

弦の振動を計算していただけだ。

 何が定状波だ。

 同一軌道内でそうなっていても

何の関係がある。

 バルグ系列と。

 あれは電子が励起され

外側の軌道にジャンプする。

 その電子が元の軌道に戻る時に出す光だろう。

 例えばL軌道からK軌道へ。

 それをK軌道が定状波になって何になる。

 軌道自体の波の山の数が増えて

何の意味があるのかね。

 プルークの量体論などは、

原子から出て来る光が

飛び飛びの値しか取れないからと言って-----

光が量体などとは

どこをどう考えればそうなるのかね。

 原子核の周りを回る電子がエネルギーを失って

原子核に落ちる。

 そんな事があるのかね。

 例えば月は地球の周りを回っている。

 その月が地球の周りを回る事で

エネルギーを失って地球に落ちて来るのかね。

 月は地球の引力に引っ張られなければ

そのまま真っ直ぐに進む。

 それが地球の引力の所為で

地球の周りを回っているんだろう。

 それで月がどうしてエネルギーを失うのかね。

 そう考えると重力というのは不思議だね。

 月を地球の周りを回らせておくのに

どのくらいのエネルギーを使っているのか。

 電子の電荷と同じで

地球の重力も月の重力も

エネルギーを失ってなくならないしね。

 地球や月の重さがなくならない-----かな。

 まあいいか。

 もともと電子も陽子も

ある距離までは引き合うが

それ以上くっつけないような電位障壁があるんだ。

 水素の電位障壁は学校で習っただろう。

 だから天体のように原子核の周りを

高速で回る必要もないんだが。

 まあ地球を回る月と同じで

電子はどうなんだろうね。

 本当に原子核の引力に引っ張られているのなら

エネルギーを失うのかね。

 直線運動していた電子が

原子核の引力でその周りを-----という事だそうだし。

 アインツの対称論に至っては全くお話にならん。

 光をエークト内を伝わる波として考えている。

 光が粒子の場合の考察がなされていない。

 だから学生が迷うんだ。

 まあ、光は粒子ではなく“波”なんだが。

 もともとマイクとモートスの実験は

光をエークト内を伝わる波として考えている。

 彼らは光を“波”と考えていたのかね。

 だから光源がS系であろうが

 ´S系であろうが-----

つまり光源を星から取ろうが

地球上の電気スタンドから取ろうが-----

そこから出て来る光は

速度が“C”だし

鏡で90度反射された後の

光の合成速度も“C”だ。

 媒質を伝わる波の速度は一定だしね。

 しかし本当に-----

そのような事をしてもいいモノなのかね。

 つまり、あれは。

 当時考えられていた

宇宙はエークトで満たされている。

 エークトというのは光を伝える媒質の事だ。

 音は空気が、波は水などがなければ伝わらない。

 つまり波が伝わるには媒質-----

空気や水などが必要だろう-----。

 それでそのようなモノを考えたわけだ。

 当時の人は。

 宇宙は光を伝える何かで満たされていると。

 それがエークトだ。

 つまりエークトの海があって

それが静止しているものとする。

 そのエークトの海を地球という船が

動いている。

 その動いている地球の速度を

測ろうというモノだし。

 光は波だからエークト内を

伝わる速度は常に一定だ。

 あの時点で光の粒子説が出て来なかったのは

不思議な話だよ。

 それにマイクとモートスの実験が

失敗したのなら

レーザージャイロなどできるはずもない。

 原理は同じようなモノだろう。

 昔ね。実験が失敗したのは

エークトが地球の重力に

引きずられているからだという説で

説明しようとした者もいたそうだが。

 だったらマイクとモートスの実験装置を

小型化して

光源にはレーザーを使うなりしてね。

 飛んでる飛行機に積んで調べればいいんだよ。

 どうなるかをね」

 さすがのサキも言葉がない。

 憑かれた様に話をする男をよそに

隆二の耳元で

“早く引き上げましょう”とつぶやいた。

 (著者注-----この部分並びに以後の同様の箇所は

堆沢光一の異常性を示すため必要不可欠なもので

文中に事は全てフィクションであり

仮にもし似たような理論が

現実に存在していたとしても

本件とは全く関わりのないモノであり

著者への問い合わせはご容赦願います)

 一通り力説を終えた後-----三十分は続いただろうか

-----堆沢はおもむろに。

 「まあいいか」

 隆二たちを値踏みするように。

 「元素の置き換えだったね」

 隆二はホッとした。

 何せ現代物理を代表する理論を。

 とにかく本題に入ってホッと。

 したのもつかの間。

 「大木のところでは

例のアデニンとかチミンとか

何とかいうのをまだやっとるのかね」

 「エッ?」

 これには隆二もあ然。

 「ATGCですか」

 「そうだ。

 いいかげんあれは卒業したほうがいいよ」

 “生物をやる者で

アデニンチミングアニンシトシン

を知らないなんて。

 話にならん。

 本当にこのおっさん。

 博士号を持っているのか”

 席を立って帰ろうかと思った。

 「まあ待ちたまえ。

 話は最後まで聞くものだ」

 そういって堆沢は微笑んだ。

 “まあいいか。

 最後まで付き合うか。

 無駄足だったが。

 大木教授への報告もある”

 そう思い直して。

 「生物のDNAを調べるには

直接顕微鏡で見る方法と

君たちがやっているように

酵素で切ったりはったりしながら

AとかTとかやる方法とが

あるようだ」

 「そのくらいは」

 “なんだ。知っているのか。

 まあ知らないわけはないか”

 「しかし、X線回折にしても

電子顕微鏡にしても現段階では」サキ。

 「ええ、ですから私たちは-----

別の方法で塩基配列を決定しようと」

 「はい。あの〇〇賞を受賞した学者の

考えた方法で」サキ。

 「私が大学を辞めたのは

その為なんだ。

 そんな方法じゃ無理だと力説したんだが。

 聞き入れられなかった」無念そうに。

 “聞いたところによると

その当時の教授と

-----何が原因かはわからなかったが-----

衝突して辞めざるを得なかったとか。

 それが原因か。

 「大木には謝るように

説得されたんだが。

 私も若かったよ」しんみりと。

 「それでここに引きこもって

研究を始めたんだよ。

 もう一つの方法で」

 「もう一つ」サキ。

 「顕微鏡の方でね。

 ATGCなどでは何もわからんよ。

 あんなモノ。

 あれは電気泳動を利用した

一種のクロマトグラフィーだよ。

 ためしにランダムにATGCと並んだテープ

-----いまならDNA解析とやらも進んでいるようだし

わかっている塩基配列とやらを使って-----

それを紙のテープに書き写す。

 そのテープをサダー法と同じ要領で

酵素で切る時と同じく

特定の配列で切る

 紙のテープをね。

 一種の確認実験だよ。

 次にAでもTでも何ででも切って

出来たテープの切れ端を

長さの順に並べて。

 つまり分子量の小さい順に並べてみる。

 電気泳動とはそんなものだろう。

 はたして元のテープに戻るかだよ。

 今ならコンピューターを使えばすぐわかる。

 だからあんな方法では。

 ATGCの各分子の分子量を考えてみたまえ。

 それを電気泳動にかけてどうして

あのようになるのか。

 それに私はDNAの本体が

AとかTとかとは思ってはいない。

 だから顕微鏡で」

 「すごいじゃないですか」サキ。

 “本当なら”懐疑的。

 「しかし今のところそれはまだ。

 そのような顕微鏡。

 どこにおいてもつくられてはいないはず」

 「造ったんだよ。

 私が」

 アッッとうなった。

 隆二もサキも。

 それが本当ならば-----。

 あの面倒な塩基配列の決定も一発で。

 しかしこの男にできるとは。

 「これを見てみたまえ」

 堆沢は一枚の紙を。

 小脇に置かれた分厚いファイルから

抜き出した。

 そこにはびっしりと並んだ化学構造式。

 「最近ではコンピューターと組み合わせてね。

 セットさえしておけば自動的にね」

 「これが塩基配列ですか。

 アデニンやチミンはどこに」隆二。

 「全然違う」サキ。

 「微量元素と呼ばれるものが並んでいる」

 「信じられないようだね。

 DNAは酵素の集合体だよ。

 アミノ酸を組み合わせて

タンパク質をつくるのも

それをつなぎ合わせて

細胞膜を造っていくのも

全て酵素がやっている。

 その酵素をコントロールするのもね。

 細胞一つ。

 いや。

 細胞を構成する部品一つ

造るにも一体いくつの酵素が必要だと思うね。

 百や二百じゃないよ。

 全く。

 それを整然とコントロールしていかなければならんし。

 これを見てみたまえ。」

 さらに数枚の紙片を。

 「これが私の作った顕微鏡だ。

 これだと原子の種類までわかる。

 もちろん原子と原子のつながり方もね」

 写真もある。

 「これはまた違うモノだ。

 市販のモノを改良したんだが。

 全く新しい方法で」

 隆二たちはまだ-----。

 この手の話に乗るほど。

 こういう話を持ち込んでくる輩は

いくらでもいる。

 それでえらい目にあった同業者も多い。

 それに先ほどの印象が強すぎた。

 「それで元素の置き換えだったね。

 エーと」

 ファイルをめくって。

 「これじゃあない。

 もう一冊の。あっちの方だったか。

 ちょっと待っててくれ」

 そういうと部屋を出て行った。

 「どう思われます」サキ。

 「どうって。

 本当だろうか。

 原子配列を電子顕微鏡で決定できるとなると」

 「ええ、そうですね。

 私たちのやっている事が

 全くの時代遅れだと言われても」

 「しかし-----。

 季崎君。カメラ。

 カメラ持っていただろう。

 カメラ貸して」

 「えっ?」

 奪うようにとると。

 堆沢の残していったファイルを開き

カメラのシャッターを。

 「星村さん。それは」

 「内緒だよ」

 一枚づつ。

 しばらくして足音が。

 慌ててカメラを仕舞い込むのと

堆沢が入ってくるのは同時だった。

 隆二はファイルを見るふりを。

 堆沢は少しいやな表情。

 席に腰を。

 「失礼しました。

 興味があったモノですから」

 ファイルを返した。

 「まあいい」ムッとしたように。

 「それよりこれだ。

 これが私の合成した

第三周期元素によるアミノ酸」

 「これが」

 その時。一枚の紙がはらりと落ちた。

 先ほど隆二が内緒で見ていたファイルから。

 「何ですか。これ」サキ。

 拾い上げる。

 そこには。

 「恐竜ですか」隆二。

 「そういえば大木先生が。

 先生は恐竜を復活させるのが夢だとかで」サキ。

 「そちらの方の研究も」隆二。

 “こっちの方が面白いか”

 「最近はそういう話題が多いですし」

 堆沢はしてやったり。

 しかし-----何か迷っている。

 「でも変ね。これ。

 こんな恐竜」

 「チョット見せて」隆二。

 「口からレーザー。

 ホタルなどのルシフェラーゼ。

 発光細胞と反射細胞をもとに

これに改良を加えた生物レーザーを

体表近くに。

 なんですか、コレ」

 「あーーーいや。

 子供の落書きのようなものだよ。

 ホタルのルシフェリンを置き換えても

たいして威力はないよ。

 それは単に参考にしただけだよ。

 いや-----そんな事言っても。

 返してくれたまえ」堆沢。

 「しかし-----恐竜ね。

 恐竜のDNAから-----。

 いや恐竜の復活は誰でも考える事だよ。

 恐竜の復活と言っても

そこまではまだとても。

 それにもしDNAを手に入れられたとしても

どうやって発生させるかも-----」

 何か言いたそう。

 しかし迷っている。

 隆二たちを品定めするような眼で。

 「そうですか」

 別段気にする事もない。

 隆二も近い将来、恐竜が。

 そういう話をいくらも聞いている。

 「でもホタルなんでしょ」サキが絵を見ながら。

 「発光部分はどこに。

 この絵では-----。

 あ、そうか。

 身体の表皮で厚く覆われているわけか。

 それで外からはよく見えないわけか」

 一人で納得している。

 堆沢も何か言いたそうだが。

 「元素の置き換えだったね」

 「はい」

 本題に戻った。

 締切もある。

 「可能だよ。

 私はそのために分子合成装置を造った。

 原子を釣り上げて個々に合わせて

特定波長のガンマー線で接着していく」

 「本当ですか」隆二。そういう話は。

 「-----」サキ。

 「それで第五周期については」

 「第五周期?」

 隆二はバックから写真を。

 「これをご覧ください」

 「何だ。サソリか」

 「はい」

 そしてもう一つ。

 「これも」

 スマフォのニュース配信サイトを。

 堆沢はスマフォを手に取り。

 「そういえばここしばらく

研究が忙しくてこういうモノは

全く見とらん。

 これが-----どうかしたのかね」

 スクロールしていく。

 「第五周期」

 読み進むにつれて。

 堆沢の変化は劇的だった。

 表情は真っ青。

 手はブルブル震え。

 「帰ってくれ。

 帰ってくれ」怒鳴り出した。

 「エッ!」

 「しかし-----」

 「大木先生が-----」

 「その巨大サソリの構成原子が

第五周期のモノだと。

 それでお話を伺いに」

 しかし有無を言わせず。

 「だいたい元素の置き換えに関わっているのは

私だけじゃないはずだ。

 あれは二十年も前に発表してある。

 そっちの方を当たってくれ」

 そういうと追い出されてしまった。

 


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